【綺々羅々ヴィヴィのW杯トリヴィア】日本とチュニジアに類似点?モロッコは“サッカー王国”?“ランス3兄弟”の聖地フランスから解くアフリカ出場7回目組の謎
綺々羅々ヴィヴィのW杯トリヴィア#2
いよいよ開幕が迫る北中米W杯は、世界中が待ち焦がれた各国一体で盛り上がる4年に1度の祭典。リアルもバーチャルも分け隔てなく、みんなで一緒にサッカーの魅力を味わい尽くしたい――そんなfootballista(フットボリスタ)の想いに共感してくれたのが、過去にインタビューを掲載したこともあるホロライブプロダクション所属タレントの綺々羅々ヴィヴィさん。「サッカーを見てこなかったライトな層の方や初心者の方と同じ目線で見て、ルールとかもわかってないけど『見てみたら楽しかったからまた見てみよう!』って思う方が、1人でも増やせるような活動ができたらいいな」と夢見る彼女と、気になる日本代表の対戦国を予習できる!W杯観戦のおともになること間違いないトリヴィアを、有識者との対話形式でわかりやすく紹介していく、サッカーメディア史上初(?)のVTuber連載。
第2回ではグループステージ第2節で相まみえるものの、いまだに謎も多いチュニジアのベールを、フランス在住のスポーツジャーナリストである小川由紀子さんと剥いでいく。1月に就任したばかりのサブリ・ラムシ新監督との因縁にコーチングスタッフの共通点、そして32強で立ちはだかるかもしれないモロッコの“サッカー王国”化とは?5月15日に運命のメンバー発表を迎える日本代表の、“ランス3兄弟”を中心とする人間関係とともに解き明かしてみた。
「内心は凄いドキドキしてて…」初の単独サッカー同時視聴秘話
――綺々羅々さんは第1回の取材後の4月20日に、プレミアリーグ第33節マンチェスター・シティ対アーセナル(2-1)のウォッチパーティーを開催されていました。ご自身のYouTubeチャンネルでは初のサッカー同時視聴配信となりましたが、その感想から教えてください。
綺々羅々「いや、前半から両チーム1点ずつ入って盛り上がったんですけど……もう内心は凄いドキドキしてて……。ヴィヴィも試合を見るのは好きやけど、プレミアリーグファンの方、アーセナルファンの方、シティファンの方、本当にサッカー詳しい方と比べたら、全然何も知らなくて……。『この監督はこの戦術でこの選手を使って~』『このシーンはこうプレーしたほうが~』みたいな解説もできないので、『みんなにどうやってサッカーの面白さを伝えたらいいんだろう……?』って凄く考えたりして、本当に緊張してました。
でも、リスナーさんやファンのみなさんが『サッカーのルールとか知らないけど、ヴィヴィが見るなら一緒に見るよ!』って言ってくれて、そこでやっぱり『まずはそういう初心者の方でも、誰でもみんなで一緒に楽しめる同時視聴にしよう!』って、凄いパワーをもらうことができて。コメント(チャット)欄もあたたかくて、『この選手、注目してください!』『(エベレチ・)エゼ選手と(マーク・)グエイ選手は鎌田(大地)選手の元同僚』『(マルティン・)スビメンディ選手は久保(建英)選手の元同僚だよ!』って優しく教えてくれるリスナーさんも見守っていてくれたりして、本当に心強かったです。おかげで終わった時には『あの……もう1回試合してくれません……?』って感じるくらい、もう緊張感がどこか行ってて(笑)、めちゃくちゃみんなで一緒に楽しめました!」
――その言葉通り、綺々羅々さんが応援されていたアーセナル寄りの実況になるのかと思いきや、どちらにゴールが生まれても喜ばれていたように、いちサッカーファンとして試合そのものを楽しみ尽くされていました。
綺々羅々「アーセナルはとにかくブーイングが凄かったですよね、アウェイやったから。『ヴィヴィやったら耐えられへん……』『でも、負けずに頑張れ……!』って思いながらも、やっぱり激しいほうがサッカーファンとして見ててワクワクする気持ちもあって。ガブリエル(・マガリャンイス)と(アーリング・)ハーランド選手ももうずっとバチバチで、もう(ハーランド選手の)ユニフォームが破れるくらい引っ張り合ってたじゃないですか。
ああいう凄い選手たちがやり合ってるのを、手に汗を握りながら見てたんですけど、ペップ(・グアルディオラ)監督のリアクションも面白くて(笑)。赤ちゃんみたいにぴょんぴょんしてたりとか、頭抱えてると思ったらニコニコして太もも叩いてたりとか、それを見てちょっと和みました(笑)。(ラヤン・)シェルキ選手や(ニコ・)オライリー選手みたいに『囲まれてたのに2人抜いた!』『足4つくらいついてんの!?』って上手い選手も何人もいて、めちゃくちゃ熱かったです!」
――そのシェルキ選手の出身国フランスにお住まいで、地中海を挟んで対岸にあるチュニジアやモロッコなどの北アフリカサッカーについても寄稿されている、スポーツライターの小川由紀子さんを今回はお呼びしました。
小川「ヴィヴィさん、初めまして。小川由紀子と申します。実は私も、ヴィヴィさんのウォッチパーティーのアーカイブを見ていて……」
綺々羅々「え、フランスからってことですか……?」
小川「はい!先に読ませていただいたインタビュー(過去記事『綺々羅々ヴィヴィは“グーナー”だった!アーセナル退団の“推し”冨安健洋に伝えたい感謝』)でも、選手と同じ目線や感情で見られているというお話をされていたんですけれど、『そういう見方もあるのか!』と凄く面白くて」
――ウォッチパーティーでも、プレーが切れた合間に「めっちゃ喋ってる!何喋ってんねやろ……?」と気にされていたり、膝に手をついた選手がいたら「疲れてくるよな、こんなずっと走ってたら……」と見逃さなかったりと、その視点が垣間見えましたよね。
小川「そうそう、それが凄く新鮮で。最近サッカー界では『試合を90分間見られない人が増えた』という話を耳にすることも多くなってきましたが、サッカー観戦の楽しみ方は、必ずしもルールや戦術を深く理解していることが前提ではないと思っていて。ヴィヴィさんのように、選手の心情を想像したり、何気ない行動に注目したりするのも、凄く楽しいサッカー観戦だなと。そういうお声や姿を発信してくださることで『サッカーっていろんな見方があるんだ!』『楽しみ方って1つじゃないんだ!』『自分なりに楽しめばいいんだ!』とみんなが思うことができるので、この連載もそうですけれど、これまで見たことがなかった方や、ライトな方にサッカーに興味を持っていただく案内役という意味でも、凄くありがたいと感じていました」
綺々羅々「え~!?ありがとうございます!ヴィヴィも最初は『ルールわからんと楽しめへんのかな……?』って思ってたんですけど、試合を見てみたらああいうところを見たり、考えたりするのが楽しくて(笑)。そうしてるうちに自然とルールも覚えていくみたいな感じやったから……。戦術面はまだまだわからないんですけど(苦笑)、これからもヴィヴィに何かできることがあったら、また挑戦できたらいいなって思ってます!」
小川「あと私、ヴィヴィさんの歌も聞いたんですけれど、声に力があって凄く上手くて……。YouTubeも登録させてもらいました」
綺々羅々「チャンネル登録も……!?うれしい!ありがとうございます!」
小川「実は私も音楽が、海外に出たきっかけだったんですよね。ブリティッシュロックが好きで、現地でコンサートを見まくりたい一心で、イギリスに渡ってロンドンに住み始めたら、現地のフットボール熱に圧倒されて。もともとスポーツ好きの一家で育ったこともあって、プレミアリーグの魅力にどっぷりハマってしまいました。それでサッカーの仕事を始めて、プレミアリーグが最初の取材現場だったので、ヴィヴィさんのウォッチパーティーを見て、当時のワクワク感や熱量も思い出していましたね。今はパリに住んでいるのでフランス代表や、パリSGなどのフランスのクラブやリーグを中心に取材しています」
綺々羅々「日本の選手もフランスにいますよね、モナコの南野(拓実)選手とか……」
小川「そうですね。大きなケガをされたので、元気になって復帰してくれる日を心待ちにしています。CLで日本人最多得点記録を更新した試合も印象的でしたが、南野選手は多少のコンディションのアップダウンはあっても、どの試合でもほとばしるような闘魂にあふれていて、毎回『素晴らしいものを見せてもらったな』という気持ちになりますね。
他の日本人選手の試合にも足を運んでいて、今季はリーグ1(1部)にル・アーブルの瀬古歩夢選手、リーグ2(2部)のスタッド・ランスに中村敬斗選手と関根大輝選手がいます。イングランドからフランスに引っ越す前に、いちサッカーファンとして現地観戦した、1998年のフランスW杯の日本代表はみんな国内組だったんですけれど、今はほとんどが欧州組で、凄い時代になったなと実感しています」
先輩のカマヴィンガ以上に万能?フランスの注目選手はあの最高傑作
綺々羅々「そのW杯って確か……フランスが初めて優勝した大会ですよね。その時の盛り上がりとかも、やっぱり凄かったんですか?」
小川「実は、最初は全然盛り上がってなくて(苦笑)。『え?本当にこの街でW杯やってるの……?』という感じでした……」
綺々羅々「え~!?めちゃめちゃ意外……」
小川「でも、フランスが勝っていくにつれて、例えばパン屋さんがサッカーボール柄のパンケーキを出したりと、どんどん街中にサッカー商品が出てきて。フランスの夏は凄く日が長いので、夜10時くらいまで明るいんですけれど、(パリの)市庁舎前広場でやっていたパブリックビューイングも盛り上がって、みんなで楽しんでいました。それで優勝したら、中心地のカフェやバーにも国旗などがいっぱい飾られていて、気づいたら街全体がお祭り騒ぎという感じでしたね」
綺々羅々「そういうパターンもあるんだ……!いやでも、それもW杯ならではなのか、普通の1試合だけとかやったりしたら、熱が冷めちゃうから……。なるほど……」
小川「ヴィヴィさんは、カタール大会からW杯を見始めたそうですね」
綺々羅々「そうです、そうです!『もう4年前!?』みたいな感じやけど……あの時のフランスも強くて、アルゼンチンとの決勝(●3-3/PK4-2)も面白かったです、めちゃめちゃ見応えがあって!サッカー知らない人も(リオネル・)メッシ選手の名前は知ってるから、みんなアルゼンチンに優勝させてあげたいみたいな空気があって、ヴィヴィも正直それに飲まれちゃったんですけど(苦笑)、(キリアン・)エムバぺ選手が1人で3点取って2回追いついてPK戦になって……。解説の本田(圭佑)さんの『なぁなふん!?』ってリアクションも忘れられないです、今もアディショナルタイム突入するとつい真似しちゃうので(笑)。
あと後半の途中から入ってきて流れを変えた(エドゥアルド・)カマヴィンガ選手もいましたよね。左のSBでメッシ選手を止めて『凄い!』思ってたらテクニックもあって、本当はボランチの選手って知って、『だからか!』ってなったのを覚えてます」

――カマヴィンガ選手は、所属先のレアル・マドリーで左サイドハーフや右サイドハーフを任されることもあって、オフシーズンには真剣勝負ではないですが、GKとしてシュートを止めていたこともありましたね。ダンス、カメラマン、バスケットボールをこなしている姿も発信されていて、とにかくピッチ内外で器用だとよく話題になっています。
小川「彼はリーグ1のスタッド・レンヌという、シティのジェレミー・ドクも在籍した、育成に定評があるクラブの出身なんですよね」
綺々羅々「ドク選手も上手かったですよね!1人だけ早送りで動いてるみたいなドリブルやったから、『ヴィヴィがDFやったら気を抜けないな……』『めちゃめちゃハラハラするな……』って勝手に妄想しながら、ウォッチパーティーでプレーを見てました!」
小川「そのレンヌの最高傑作の1人には、デジレ・ドゥエという、パリSGに引き抜かれた20歳もいて。彼も下部組織時代はカマヴィンガに負けないくらい万能で、守備的MFから1トップまでこなしていたらしいです」
綺々羅々「え、じゃあもう何でもできちゃうんや……」
小川「今は前線や2列目を主戦場にしていますが、右足も左足もパスもドリブルもシュートも全部上手いですね。昨季のCL決勝では、2ゴール1アシストを記録して、大会史上初めてファイナルで3点以上に絡んだ選手にもなっていたくらい、大舞台での強さも兼ね備えているので、北中米W杯でも活躍してくれるのではないかと期待しています。フランス代表のアタッカーには、同じくレンヌ育ちの現パリSGで昨季のバロンドールに輝いたウスマン・デンベレや、バイエルンの右サイドで崩しの切り札になっているドリブラーのミカエル・オリーセなどもいるので、出場時間は限られるかもしれませんが……」
綺々羅々「デンベレ選手しか知らなかったので、めちゃめちゃ勉強になります!いや、でもフランスはシェルキ選手だったり、エムバぺ選手だったりもいますもんね……。そう考えると、めちゃくちゃ豪華……」

小川「そうなんですよ。遊び心があるというか、想像もつかないようなテクニックやアイディアを持っている、天才タイプがそろっていますね。その後ろには、マドリーでもカマヴィンガ、エムバぺとチームメイトのオーレリアン・チュアメニという、防波堤もいて」
綺々羅々「あ、チュアメニ選手もあのカタールW杯の決勝に出てましたよね?」
小川「そうです。あれから4年経ってさらに進化していて、もう彼がいると、フィールドプレーヤーが10人じゃなくて11人いるように見えると言われているくらい、さっきはあっちにいたのに、もうこっちにいるみたいな感じで、1人で2人分の働きをしてくれる。187cmと体も大きくて、マドリーではCBを任されることもあるくらい、全然当たり負けもしなくて、空中戦にも強いので、頼りになりますね。カタールW杯準々決勝イングランド戦(○1-2)で貴重な先制点を決めたように、ミドルシュートという武器も隠し持っていたりしますが、逆に彼が目立たないということはチームが上手く回っているということですから(笑)、そういう意味でも、北中米W杯で注目してほしいです」
綺々羅々「フランスはその後ろ、CBにアーセナルの(ウィリアム・)サリバもいますよね。あのシティとの試合でガブリエルがハーランド選手だったり、シェルキ選手だったりにガンガン行けてたのも、サリバに背中を預けられるからなのかなって考えてました」
小川「サリバはカタールW杯では控えでしたが、もうA代表通算30試合以上に出て、最終ラインの柱になっています。今は身長が193cmあるんですけど、12歳でもう180cmあったそうで」
綺々羅々「小学6年生か中学1年生の時にってことですよね……?いや、どっちにしてもめちゃめちゃ大きい……」
小川「そこでもうU-15の選手たちと飛び級で一緒にプレーしていたりした甲斐もあってか、10代の時から落ち着きがあると言われていました。15歳からサンテティエンヌに所属していたのですが、そのトップチームの絶対的なキャプテン兼DFリーダーがケガをしてしまった時に、地元の記者にも『今こそサリバを使う時だ!彼ならできる!』と凄く推されて、17歳でプロデビューしたのを思い出します。そこからティエリ・アンリのユニフォームを買ったこともあるくらい、幼少期に応援していたアーセナルに引き抜かれて。母国のクラブに貸し出される中、古巣のサンテティエンヌ、ニース、マルセイユと修行先をどんどんステップアップして、着実に力をつけた後、復帰した憧れのクラブで中心になっているという来歴ですね」
綺々羅々「そういう選手一人ひとりのキャリアも面白いですよね!ほぼほぼアーセナルにいる時のことしか知らなかったから、たくさんトリヴィアがあって助かります、サリバのことももっともっと知りたいので!」
小川「あと彼は、エムバぺの幼馴染でもあるんですよね。6歳から13歳までFCボンディという、地元のパリ郊外のチームに所属していたんですけど、そこで指導に当たっていたのが、エムバぺのお父さんで。彼はカメルーン出身でサリバのお母さんと同じルーツなので、家族ぐるみの付き合いになって、サリバもよく3歳くらい年上でFCボンディの先輩でもある、エムバぺの家に遊びに行っていたらしいです。FCボンディ時代はFWやMFだったこともあって、足下も上手いですね」

国際経験豊富もまずは“お手並み拝見”。ラムシ新監督を取り巻く空気感
――そのサリバ選手がW杯デビューを飾ったのがカタール大会グループステージ第3節で、ちょうどチュニジアが相手だったんですよね。北中米大会グループステージ第2節で日本とも対戦する彼らが、1-0でフランスに勝っていました。
綺々羅々「え、あのフランスに勝ってたんですか!?知らなかった……。フランスの話で盛り上がっちゃったんですけど(笑)、チュニジアのことは……本当にまったく知らなくて……。抽選会でも『え?どこにあるんだ……?』って感じだったので、このW杯で地理というか、場所をちゃんと認識したかもしれないです……。でも、観光の写真はどこかで見たことがあって、青と白の街が綺麗なイメージがあります!」
小川「シディ・ブ・サイドという観光名所ですね。その近くのカルタゴという、世界遺産や高級住宅街がある街も有名で、そこから車で2時間くらいの距離に、大きなリゾートビーチもあります。だからチュニジアは、地中海を挟んで対岸にあるフランスの方の旅行先やバカンス先としても人気ですね、第二言語もフランス語で、意思疎通にも困らないので。両国は歴史をたどると、友好的な関係ばかりではないのですが、古くから交流があってコミュニティを共有しているので、例えばフランスで生まれたけれど、親や祖父母がチュニジア人で、チュニジア代表に呼ばれる選手が以前からいて、3月シリーズの最新メンバーではエリス・スキリ、イスマエル・ガルビが当てはまります」
――選手はその実の親、または祖父母が生まれた国の代表チームにも入れるというFIFAのルールがありますからね。
小川「なので、今はドイツ、スイス、オランダなどの他の西欧諸国で生まれた選手も多くて、北欧出身者や中東出身者、北米出身者もいる。チュニジアはそういう国外出身選手が、半数くらいを占めてきた代表チームになります」
綺々羅々「いろんな生まれや育ちの選手が集まってるんや……。そういうチームをどんな監督がまとめてるのかなって気になってたんですけど、今年の1月に代わったばかりって読んで……」
小川「チュニジアがアフリカネーションズカップのラウンド16で敗退した直後に、サミ・トラベルシ監督からサブリ・ラムシ監督に指揮官が代わりました。ラムシ監督はフランスで生まれ育ったのですが、両親がチュニジア人なので代表選手としてはチュニジアを選べて、実際に誘われもしたそうですけれど、それを断ってフランスを選んでいたんですよね。それで就任会見では『なぜチュニジア代表を選ばなかったのですか?』みたいな質問が殺到していて(苦笑)。言葉もチュニジアの第一言語であるアラビア語は、おそらくラムシ監督も理解はできているかと思いますが、公式の場ではしっかりと意図を伝えたい思いもあってか、母国語のフランス語で話しているので、チュニジア国内メディアの中では、“お手並み拝見”という空気があるように感じます」

綺々羅々「でも、選手の気持ちになると凄く難しいですよね、本当に……。いろんなルーツがあっても、代表ってどれか1つに決めないといけないから……」
小川「私の周りのチュニジア人のお友達などを見ていても、フランスで暮らしてきたけれど、チュニジア文化を貫いている家庭で育った人もいれば、完全にフランス文化に同化している人もいます。現地では『いや、私たちは地中海人だ!』とイタリアやギリシャに混ざろうとしている感じもあったりして、様々ですね」
綺々羅々「そう考えると、本当に責任重大ですよね、代表の選手や監督はそういういろんな人たちの心を、ゴールや勝利で1つにする役割も期待されてると思うから……。あらためて、国を背負うことの重みを感じました」
小川「ただ、ラムシ監督は現役時代にオセール、モナコ、マルセイユといったフランスの名門、中田英寿選手がいた時代のパルマ、インテルというイタリアの強豪、そしてキャリア晩年はカタールリーグに身を置いてきたという、経歴の持ち主でもあります。監督としてもコートジボワール代表を率いて、ブラジルW杯グループステージ初戦で日本と対戦したり、レンヌ、ノッティンガム・フォレスト、カーディフも指揮して多国籍軍をまとめてきたりした実績もあるので、国際経験が豊富なのは間違いないです」
綺々羅々「日本とも対戦してたんや……!知らなかった……」
小川「もう12年前のことですからね。日本が本田選手のゴールで先制していたのですが、ディディエ・ドログバという、当時のコートジボワール代表の国際的なスター選手がベンチスタートで。彼をラムシ監督がここぞとばかりに投入して、ガラッと雰囲気が変わった62分が、苦い思い出としてサッカーファンの間で記憶されていたりします。そこから一気に応援も展開もコートジボワールに傾いて、5分と経たないうちに1-2で逆転されてしまったので……。
その采配にも表れているのですが、ラムシ監督はその試合や展開に応じて勝つために最適な方法を選択する現実主義者で、システムも戦術も特定の形には固執しないとご本人も発言しています。話もわかりやすくて、選手との対話も重んじる知的なタイプなので、短期間でもしっかりとチームを作り上げてくるはずです。あと、コーチングスタッフには最近選手を引退したばかりのレジェンドもいて……」
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Profile
足立 真俊
岐阜県出身。米ウィスコンシン大学でコミュニケーション学を専攻。卒業後は外資系OTAで働く傍ら、『フットボリスタ』を中心としたサッカーメディアで執筆・翻訳・編集の経験を積む。2019年5月より同誌編集部の一員に。プロフィール写真は本人。X:@fantaglandista
