2月4日にエンゴロ・カンテのフェネルバフチェ移籍が発表された約2週間後、ビクター・オシメーン、レロイ・サネ、マウロ・イカルディ、イルカイ・ギュンドアンらを擁するガラタサライがCLノックアウトフェーズのプレーオフ第1戦でユベントスを5-2で破り、25日には延長戦の末に2戦合計7-5で12年ぶりの16強入りを果たすなど、この1カ月で再び存在感を高めているトルコリーグ。中東欧の大国に有名選手が集まっている政治的理由を、Yuki Ohto Puro氏に解説してもらった。
なぜカンテ獲得のフェネルバフチェがエルドアン大統領に感謝?
長きにわたって欧州最高峰の舞台で凄まじい得点能力を発揮し続け、新天地のアル・イテハドでも主将としてチームを牽引したカリム・ベンゼマが2月2日にアル・ヒラルへ移籍したことは、クラブ関係者にとって大きな痛手だったに違いない。同僚のエンゴロ・カンテも間違いなくその1人で、クラブの失態に不信感を示し練習参加拒否を表明した。そしてそのわずか2日後の4日、電撃的に3シーズンぶりの欧州復帰が発表される。新天地はトルコの強豪フェネルバフチェ。このドミノ倒しのような連鎖移籍の裏側には興味深い政治的な動きが介在した。
アル・イテハドはベンゼマの後釜として、カタールW杯での2ゴールで名を馳せたフェネルバフチェ所属のモロッコ代表FWユセフ・エン・ネシリの獲得を画策。カンテを含めた両クラブ間の移籍交渉は迅速に進んでいるかのように思われたが、2月3日にトルコの移籍市場が閉まったタイミングで頓挫。フェネルバフチェ側はアル・イテハドの事務手続の不備によって移籍を完了することができず、FIFAへの申し立ても却下されたと声明を出した。
KAMUOYUNA BİLGİLENDİRME
Al Ittihad Kulübü ile N’Golo Kanté ve Youssef En-Nesyri’yi kapsayan transfer süreci, kulübümüz tarafından planlandığı şekilde ve tüm yönleriyle titizlikle yürütülmüştür.
Teknik heyetimizin talebi doğrultusunda ilerleyen bu süreçte oyuncularla anlaşma… pic.twitter.com/rRZ1ORgXCZ
— Fenerbahçe SK (@Fenerbahce) February 3, 2026
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は同日、サウジアラビアへの公式訪問を予定していた。フェネルバフチェの役員会はトルコ出発前、大統領代表団にカンテ選手の移籍が失敗に終わったことを伝えたといい、エルドアン大統領はリヤド到着後、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子と直接協議。すると、わずか数時間後にカンテとエン・ネシリの移籍が正式に成立したことが公となった。
フェネルバフチェはすぐに感謝の意を表し、クラブ会長は次のように述べている。
「クラブを代表してエルドアン大統領の揺るぎないサポートに感謝の意を表したい。大統領のサポートによりこのプロセスが成功裏に完了し、フェネルバフチェとトルコフットボール界全体の発展に貢献することができた」
一連の移籍は、昨年から続くトルコの有名選手獲得攻勢をさらに強く印象づけるものだったかもしれない。同年夏、ガラタサライは昨季レンタルしていたビクター・オシメーンを完全移籍させるためにトルコサッカー史上最高額となる7500万ユーロをナポリに支払い、年俸は2100万ユーロと伝えられた。バイエルンからフリーで獲得したレロイ・サネに対しても年俸1200万ユーロを提示している。また、フェネルバフチェも今季前半戦でアル・ナスルから借りていたジョン・デュラン(現ゼニト)の2100万ユーロを筆頭に昨季途中加入のタリスカ、今季加入のエデルソン、マルコ・アセンシオにも1000万ユーロ超と羽振りの良い額がずらりと並ぶ。
ガラタサライ、フェネルバフチェ、ベシクタシュの「ビッグ3」にトラブゾンスポルを加えたリーグ4強の負債総額は2025年1月時点で10億ユーロを超えると推定されており、給与収益対比もUEFAが推奨する持続可能閾値の70%を大きく超過し88%と危険水域に足を踏み入れている。
このような状況の中、一体なぜトルコが欧州トップリーグと同等あるいはそれ以上の条件を提示できるのか。まずはその絡繰りを紐解いてみよう。
Ailemize hoş geldin N’Golo Kanté 💛💙
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— Fenerbahçe SK (@Fenerbahce) February 4, 2026
スタジアム建設ラッシュとバシャクシェヒル台頭にみる政治性
1つは逆説的ではあるがトルコ経済の停滞という側面が挙げられる。エルドアン大統領の低金利・高成長政策により加速したインフレはようやく落ち着いてきたものの今もなお低水準を推移しており、トルコリラの通貨安も招いた。だがトルコ4強のような欧州カップ戦に出場しユーロ建で賞金を獲得するようなクラブにとっては、リラ安が実質的に国内通貨ベースの債務価値を押し下げる効果がある。彼らは一部のビッグネームに対してはユーロで給与を支払っているが、それ以外の選手にはリラでの支払いとなるため、人件費の実質負担も軽くなるというトリックだ。
もう1つの要因は大規模な不動産取引による一時的な収益である。
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Profile
Yuki Ohto Puro
サミ・ヒューピアさんを偏愛する秘湯ハンター。他人の財布で食べる寿司と焼肉が好物(いつでもお待ちしてます)。主にマージーサイドの赤い方を応援しているが、時折日立台にも出没する。
