REGULAR

22歳で90試合か、プロ1年目か。「経験資本」から再設計する日本人選手のキャリア戦略

2026.02.22

TACTICAL FRONTIER~進化型サッカー評論~#25

『ポジショナルプレーのすべて』の著者で、SNSでの独自ネットワークや英語文献を読み解くスキルでアカデミック化した欧州フットボールの進化を伝えてきた結城康平氏の雑誌連載が、WEBの月刊連載としてリニューアル。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つ“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代フットボールの新しい楽しみ方を提案する。

第25回は、22歳で90試合か、プロ1年目か――スポーツ国際研究センター『CIES』が提唱する「経験資本」という指標を手がかりに、U-23の出場機会と日本人選手のキャリア設計を再考する。

スチュアート・ウェバーの問題提起

 大学サッカーの価値はこれまでも議論の的になってきた。

 22歳までの期間を大学のサッカー部で過ごすことは「プロ選手」になるまでに違った価値観に触れることで成長するという意味ではポジティブであり、10代ではそのポテンシャルを開花させられなかった選手が大学で成長した場合、再びプロとしてのチャンスを与えることも可能になる。実際、多くの日本人選手が大卒からプロになり、日本代表としても活躍してきた。ブライトンの三笘薫はその中でもトップクラスになった一例であり、彼の卒業論文が「ドリブル」をテーマにしていたことはヨーロッパでも話題になった。彼のように高等教育を受けることで、その知識や経験をピッチ上のパフォーマンス向上に活用する選手も少なくないはずだ。

 しかしその一方で、弊害も存在する。22歳までプロになれないということは、トップレベルでのパフォーマンスに慣れる時間が足りないということだ。RB大宮アルディージャのスチュアート・ウェバーは、footballista掲載記事『日本サッカーが再考すべき「若手」の定義とは?スチュアート・ウェバー(RB大宮ヘッドオブスポーツ)インタビュー前編』で、次のようにコメントしている。

 「欧州サッカーでも23歳は若いほうではあります。ただ、レアル・マドリーのジュード・ベリンガムの年齢を思い出してみてください。彼はまだ22歳で、私の記憶が正しければクラブレベルで300試合近く、代表レベルで50試合近くの公式戦に出場しているはずですが、もしも彼が日本に生まれていたらどうなっていたでしょうか?大学サッカーに進んでいたら、もしかするとまだプロデビューすらできていなかったかもしれません。そう考えるともったいないですよね。そもそも23歳までにプロチームで主力になれていないと世界のトップレベルでプレーするのは難しい。実際に欧州でも統計上で、CL出場を目指すのであれば一定の年齢までに一定の出場時間を満たしていなければならないという相関関係が出ています。ベリンガムもチャンピオンシップ(英2部)がリーグ戦初出場だったように、カテゴリーは一番上ではなくてもいいですが、若手が成長するにはとにかく実戦経験が必要なんです」

 今回は「経験資産」という指標をテーマにしながら、日本の育成がどのようにレベルアップしていくべきなのかを考察したい。

将来的な成功確率を測る指標「経験資本」とは?

 スチュワート・ウェバーが言及した「統計データ」のベースになっている1つがフランスのスポーツ国際研究センター『CIES』による調査だろう。

 『CIES』は、若手選手の将来的な成功確率を測る指標として「experience capital method(経験資本メソッド)」を定義した(「human capital/人的資本」というワードがビジネスの世界で注目されるようになったことを考慮し、今回のコラムでは「資本」というワードを使うことにする)。これは単純な試合数ではない。どのリーグで、どの強度で、どれだけ出場したかを加重評価する仕組みである。

……

残り:2,600文字/全文:4,191文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

RANKING