「複雑そうに見えて、実はシンプル」がスタイルの本質。柏レイソル・大久保智明がリカルド・ロドリゲス監督との再会に期待する自分の可能性
【特集】愛弟子が語る監督論#2
複数のクラブで同じ監督の下でプレーする選手がいる。俗に「愛弟子」と呼ばれる存在だ。なぜ彼らは、指導者が変わってもその背中を追い続けるのか。そして、なぜ監督は彼らを再び必要とするのか。本特集では、愛弟子だからこそ見えた別角度から、指導者という仕事の本質に迫る。
第2回は、柏レイソルの大久保智明が登場。浦和レッズへ加入したルーキーイヤーからの2シーズンで師事したリカルド・ロドリゲス監督のオファーを受け、新天地へとやってきたレフティドリブラーが、4年ぶりに再会した情熱のスペイン人指揮官の変化したこと、貫いていることを、自身の言葉で語ってくれた。
言語化されることで上がったサッカーへの解像度
2026年シーズン、大久保智明は浦和レッズから柏レイソルへ新天地を求めた。この移籍は、単に「環境を変えた」という意味だけにはとどまらない。2021年、2022年の2シーズン、浦和時代に指導を受けたリカルド・ロドリゲス監督のもとで再びプレーすることになったからだ。プロキャリアの原点ともいえる指揮官との再会。その恩師の存在を、大久保自身はどのように捉えているのだろうか。
大久保にとってリカルド監督との出会いは、プロの入り口そのものだった。2021年は、中央大学から浦和に加入したルーキーイヤー。当然、外国人監督のもとでプレーするのは初めての経験である。前年の2020年に、徳島ヴォルティスをJ2優勝に導いた“戦術家”という評判は耳にしていた。そんなリカルド監督のもとで、大久保は論理的にサッカーを理解し、頭の中を整理していく。
もともと感覚的に理解していたプレーもあった。しかし、それを言語化し、構造として理解する経験は新鮮だった。
「自然とやっていたこともあったんですけど、ただ自分で感じてはいたものの、言語化することがあまりなかったので、『こういうことなんだ』というのを学んでいた感じがしましたね」
日々のトレーニングで腑に落ちる瞬間が積み重なり、サッカーの見え方そのものが変わっていく感覚を味わっていた。
一貫した起用のタイミング。指揮官の確かな観察眼
プロ初年度、大久保はリーグ戦18試合に出場したが、「前半戦はなかなかチャンスを得られなかった」という。試合に出場していない時期は、監督と直接的なコミュニケーションを取る機会はほとんどなかった。
「ただ、試合に出ていないからコミュニケーションを取る機会が少なかったというだけで、選手の練習態度、普段の姿勢、振る舞いをよく見ている監督だと思います。例えばリカルドが浦和で最後になって、監督とお別れの挨拶をしたときに、僕の良いところとして、ひたむきに練習をしているところや、試合に出ていても出ていなくても腐らない、そういうことを言っていただいたことがあります。その時も練習をちゃんと見ているんだなと思いました」
だからこそ起用のタイミングにも一貫性があった。つまり、自分の調子が上がっていると感じたときに出場のチャンスが巡ってくる。現にリカルド監督が「勝ちにいく」と天皇杯でフルメンバーを組んだ際に、リーグ戦に常時出場している主力の中で、大久保はスタメン起用の抜擢を受けたことがある。
……
Profile
鈴木 潤
2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。
