Jリーグに伝えたい“ハイインテンシティ”とは何か?ロジャー・シュミット(グローバルフットボールアドバイザー)インタビュー前編
【特集】世界から見たJリーグ#8
日本人選手の欧州移籍はすっかり日常となり、Jリーグ側もロンドンに拠点を置いたJ.LEAGUE Europeを設立するなど、Jリーグと欧州サッカーの距離は年々近くなっている。互いの理解が進む中で、世界→Jリーグはどう見えているのだろうか? 戦術、経営、データなど多様な側面から分析してもらおう。
第8&9回は、昨年10月にJリーグのグローバルフットボールアドバイザーへ就任したロジャー・シュミット氏のロングインタビューを、前後編に分けてお届け。前編では、監督業を中断した経緯から自身が標榜する“ハイインテンシティ”の定義に、欧州サッカーで日本人選手の需要が高まっている理由まで幅広く語ってもらった。
時代が変われど変わらぬ“ハイインテンシティ”の哲学
――まずは監督キャリアを中断して、昨年10月にJリーグのグローバルフットボールアドバイザーに就任された経緯を教えてください。
「20年間にわたって監督業を続けてきましたが、実はもともと私の頭の中に監督になる予定はなく、選手としてはドイツ3部止まりだったのでエンジニアとして働きながらアマチュアサッカーを楽しんでいました。そこで偶然か必然か、当時5部のデルブリュックで選手兼任監督を任されたところ、4部昇格へとチームを導くことができたため、仕事を辞めて監督業に専念することにしたんです。
そこからトップレベルへと駆け上がって国内外問わず様々なクラブを率いることができ、CL、EL、ACLのような国際大会で計10年間指揮を執ってきましたが、とりわけ近年は日程の過密化が進み、中3日で試合をするのが当たり前のようになっていました。そうすればシーズン中は試合と回復を繰り返すことになるので、監督は慎重に選手のコンディションを管理しながらトレーニングを行わなければならない。さらにそこで修正している余裕はほぼないため、プレシーズンはフィジカル面、戦術面とあらゆる面で土台をつくり、シーズンを戦い抜けるチームを構築できるよう、より入念に準備をしなければならない期間となっています。だから監督業は年間通してとにかく気の抜けない仕事となっていて、もちろんそれだけ得られるものも多いのですが、失うものも多い。そんな責任のある立場に身を置いて60歳に近づいてきた今、より傍で家族を大切にしたいと思うようになり、当面はクラブチームの監督としては働かない決意を固めました。
その後に来たのが(J.LEAGUE Europeの秋山)祐輔さんの連絡です。Jクラブの監督になるお誘いはお断りすることになってしまいましたが、日本サッカーとJリーグにはどんな考えがあるのか、何を発展させていかなければならないのか、私がどのように役立てるかなどの議論を進めていく中で、その熱意に動かされていきました。そうしてJリーグのプロジェクトに興味を持ち、自宅にノノさん(野々村芳和チェアマン)もお招きして話を続けていくうちに、私にとっても自分の積み重ねてきた知識や経験を日本のサッカー関係者と共有できる素晴らしい機会になると確信できたため、グローバルフットボールアドバイザーのオファーを引き受けさせていただいたという経緯です」

――その中でレッドブル・ザルツブルク、レバークーゼン、PSV、そしてベンフィカを指導されてきて、あなた自身のサッカー哲学に変化はあったのでしょうか?
「私のサッカー哲学は“ハイインテンシティ”ですね。それこそが相手の出方や戦略にかかわらず、試合をコントロールする上で最良の手段だと考えているからです。相手にボールを保持する時間を与え、たくさん走らされることになってしまうようなサッカーは望んでいません。とにかくいち早く、より高い場所でボールを勝ち取りたい。そのためにはボールホルダーが前へ前へと相手に空間的・時間的なプレッシャーを与え続け、その1対1で抜かれたとしてすぐさま次の味方が追撃できるよう、獣の群れのごとくチームで動き続けなければなりません。そのハイプレスで敵陣からボールを狩れればすぐさま攻撃に転じられるので、守備陣形を整えている余裕がない相手から得点を奪いやすい。そうやって私の率いてきたチームでは数多くのゴールを生み出してきました。そこでシュートまでたどり着けなかったとしても、ポゼッションへ移って次の機会をうかがえばいいだけです。
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Profile
足立 真俊
岐阜県出身。米ウィスコンシン大学でコミュニケーション学を専攻。卒業後は外資系OTAで働く傍ら、『フットボリスタ』を中心としたサッカーメディアで執筆・翻訳・編集の経験を積む。2019年5月より同誌編集部の一員に。プロフィール写真は本人。X:@fantaglandista
