日独Wルーツの21歳、川崎F育ちの長田澪が放つGKとしての輝きと、確かに刻む成長の足跡
遣欧のフライベリューフリッヒ#19
「欧州へ行ってきます」。Jリーグの番記者としてキャリアをスタートさせ、日本代表を追いかけて世界を転戦してきた林遼平記者(※林陵平さんとは別人)はカタールW杯を経て一念発起。「百聞は一見にしかず」とドイツへの移住を志した。この連載ではそんな林記者の現地からの情報満載でお届けする。
今回フォーカスするのは、ブレーメンのGK長田澪。今季から守護神の座を射止めた21歳は、日進月歩のプレーを見せている。このため、日本とドイツの国籍を持つ長田が「どちらの代表を選ぶのか」という話も飛び出すようになっているが、林記者はそうした議論を突きつけること自体に疑問符を打つ。
欧州サッカーと日本人GK
数多くの日本人選手が欧州で活躍するようになったが、歴史を振り返っても欧州5大リーグでGKが躍動する姿はあまり見られてこなかった。
かつてベルギーやスコットランドでの活躍を経て、川島永嗣がフランスで見事なパフォーマンスを披露しているが、その活躍に追随する選手は現れず、日本人GKにとっては高き壁となってきた。
理由はいくつか考えられる。もちろん能力的なものはあったかもしれないが、GKというポジションに外国人枠を使うことをどう捉えるかという壁もあっただろう。また、コミュニケーションを多く取ることが求められるGKというポジションの特性もあり、言語の部分がディスアドバンテージになるのも、欧州クラブが日本人GKの獲得に踏み切れない要素となっていたことは想像に難くない。
そもそも欧州でプレーする日本人GKの数自体が少なかったこともあり、欧州の舞台で活躍するには高いハードルを感じさせてきた。
ただ、時代は確実に移り変わりつつある。
昨季、シント=トロイデンに所属していた鈴木彩艶がセリエAのパルマに加入すると、シーズンを通して安定したパフォーマンスを披露。周囲にあった懐疑的な意見を覆し、一気に欧州のビッグクラブから注目されるような選手へと進化を遂げている。日本人GKが5大リーグで通用する姿を見せたことは、他の選手たちにとっても大きな意味を持つことになるだろう。
そして、鈴木の活躍に続くかのように、今季もう一人の日本人GKが5大リーグでデビューを果たした。ブレーメンに所属する長田澪である。
川崎F育ち、長田澪
まだまだ知らない人も多い気がするので、まずは少しばかり長田の経歴をさかのぼっておこう。
ドイツ人の父と日本人の母に育てられたミオ・バックハウスこと長田澪は、2018年まで川崎フロンターレの育成組織に在籍していたGKだ。
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Profile
林 遼平
1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。
