「W杯は夢なんで」4戦2G2Aで代表復帰、中村敬斗は決意を新たに「結果」にこだわる
Allez!ランスのライオン軍団 #19
2025-26シーズンは中村敬斗、関根大輝が牽引する若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする、大好評のスタッド・ランス取材レポート。
第19回は、10月の日本代表メンバー発表直後に行われたリーグ2(フランス2部)第9節、中村は復帰、関根は落選と明暗が分かれた2人が試合後に語ったこととは?
「けっこうエグかった」ゴラッソと「去年から変わってない」ランス
第7節クレルモン、第8節ナンシーと、2戦連続の勝利で調子を上げてきたスタッド・ランスは、3連勝を目指して10月4日、本拠地オーギュスト・ドゥローヌでのグルノーブル戦に臨んだ。
しかし、開始わずか6分であっけなく失点したのを皮切りに、30分も経たないうちに2点を追う展開に。先発出場した中村敬斗が35分に1点を返すも、後半さらに2点を奪われて、2-4でホーム初黒星を喫した。
開幕から9試合ですでに3敗(4勝2分)は、リーグ1昇格を目指すチームとしてはなかなかに手痛い成績だ。
だが、そんな中で中村が決めたゴールは実に見事だった。
対峙していたDFをキックフェイントでズッコケさせると、2人がかりのマークもかわして、文字通り矢のような左足シュートをネットに突き刺した。
あれだけがっちり前を塞がれてよく決め切ったな、というゴラッソ級の一撃に本人も、
「けっこうエグかったっすね」
と笑顔を見せた。
「キックフェイントで(かわして)、カットインで打とうかな、と思ったら相手がついてきたから縦に行って。最初は77番(FWノーマン・バセット)にクロスを出そうかと思ったんですけど、マークにつかれていたから、自分でいくか、と。その時には、自分でいける、って決めてました」
このインパクト大のシュートは、2点のリードを奪って波に乗っていた相手の勢いをも断ち切った。
「うれしかったっすね。ここから流れを持ってこられるな、と思って」
そう中村も反撃の手ごたえを得ていたのだが、ところが後半も「あれ? 今何が起きた?」というようなあっけない展開から72分、80分と2失点。終了間際に1点を返すも、ホームで完敗に終わったのだった。
「昇格を狙っている僕らからしたら痛い敗戦。なんか、こういう感じは去年から変わってないな、という気がしますね。流れが来ていた中で、ポロッてよくわからない失点するとか……」
勝ち点で競り合っていたクレルモンやナンシーには勝って、16位(全18チーム)にいたグルノーブルには負ける。確かに、昨シーズンのパターンにそっくりである。
この試合では、今シーズン初めて、ゴール裏にウルトラス軍団『Ultrem 1995』が陣取った。
昨シーズン末のメスとの入れ替えプレーオフに敗れた後、スタンドのシートをはがしてピッチに投げ込むといった暴力行為があったことで、警察や司法当局も交えての処罰問題に発展。それによりクラブ側と対立する形となって、『Ultrem 1995』側が「無期限の活動停止」を宣言していた。しかしクラブ側と建設的な話し合いが行われた結果、このグルノーブル戦から定位置に復活することになった。
そんなゴール裏の応援を背に臨んだ初戦を勝利で飾れなかったのは残念だったが、試合が終わった後、敗れた獅子軍団に次戦での挽回を期して発破をかけていた彼らの姿は印象的だった。
「選ばれる確信は全然なかったし…」「2部でやるっていうことは…」
……
Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。
