鈴木唯人の独デビューは苦味とともに。根っからの「コツコツ型」は、ここから這い上がるのみ
遣欧のフライベリューフリッヒ#17
「欧州へ行ってきます」。Jリーグの番記者としてキャリアをスタートさせ、日本代表を追いかけて世界を転戦してきた林遼平記者(※林陵平さんとは別人)はカタールW杯を経て一念発起。「百聞は一見にしかず」とドイツへの移住を志した。この連載ではそんな林記者の現地からの情報満載でお届けする。
今回フォーカスするのは新たにブンデスリーガへの挑戦を始めている23歳のMF鈴木唯人。清水エスパルスから海外へと羽ばたいた逸材だが、加入した各チームで軒並みスタートダッシュで苦労してきた選手でもある。「コツコツ」を大事にする男の新たなステージへの挑戦に、林記者が迫った。
ほろ苦い開幕デビュー
誰だって物事のスタートは上手く切りたいものだ。
初めてのおつかい、初めての学校、初めての職場。もちろん、初日が上手くいったからといって、最終的に全てが最高の形で締めくくれるかはわからない。そこからの歩みは本人次第だからだ。
ただ、最初の一歩を乗り切れたかどうかで、精神面での余裕は大きく変わってくる。誰もが経験したことがあるはずだ。初日に友達ができればホッとするし、スタートからミスを犯せばプレッシャーは高まる。最初に成功体験を得られれば、明るい明日が待っているものである。
8月23日のブンデスリーガの開幕戦。今季からフライブルクに加入し、新天地での開幕を迎えた鈴木唯人は、リーグデビューをスタメン出場で飾ることになった。
1週間前に行われたカップ戦(DFBポカール)ではベンチスタートだったが、ボランチに負傷者が出たこともあり、大事な開幕戦で先発に抜擢された形となった。
だが、意気揚々と挑んだ初戦はホロ苦いものとなる。
チーム全体のパフォーマンスが悪かったことも大きいが、トップ下のポジションでなかなか効果的なパフォーマンスを発揮できず。前半に迎えたビッグチャンスは、ゴール前にDFしか残っていなかったものの、至近距離から放たれたシュートは無常にもゴール上に外れた。3失点目にも少しばかり絡んでしまって肩を落とす背中には、チームメイトからの視線が刺さった。
後半にPKを奪取して面目は保ったが、厳しい評価が下されても仕方のない内容だった。最初から完璧にできるほど簡単なことではないが、昨季まで攻守に圧倒的な存在感を示していた堂安律のような活躍を期待していたサポーターにとって、物足りなさが目についたことだろう。
鈴木唯人の言葉に感じる重み
こんな時、鈴木唯人という人間はどういうふうに物事を捉えるのか。これまで何度か取材現場に立ち会ったことはあるが、少人数で対面して話を聞くのは初めてだった。
だからこそ、彼がどんな言葉を紡ぐ選手なのかが気になった。ポジティブに捉えるタイプなのか、わかりやすく落ち込むタイプなのか、それとも全く気にしないタイプなのか。
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Profile
林 遼平
1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。
