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J1昇格初年度のファジアーノ岡山はなぜ、失速しない?中断明け3連勝の理由

2025.09.01

初のJ1の舞台、下馬評も決して高くなかったファジアーノ岡山だが、開幕から好スタートを切っただけでなく、夏の中断期間が明けた後も3連勝を経て第28節時点でも中位につけている。そこで難波拓未記者に「失速しない岡山の秘密」に迫ってもらった。

 雉(ファジアーノはイタリア語で「キジ」の意)が国内最高峰の舞台で高く舞っている。

 ファジアーノ岡山は中断明けのJ1リーグで3連勝を記録した。8月10日の第25節ではガンバ大阪を3-0で撃破すると、8月17日の第26節では上位の柏レイソルを下し、8月23日の第27節では湘南ベルマーレを退けた。第28節に首位の京都サンガ相手に0-5で屈したとはいえ、昇格初年度で失速することなく健闘している。

 7月のホーム2連戦では第23節でサンフレッチェ広島に0-1、第24節でヴィッセル神戸に1-2で敗れて中断期間に突入したチームは、なぜ3週間の準備期間を経て快進撃を見せることができたのか。

「ルカオ→一美」で昨季のJ1昇格プレーオフに原点回帰

 J1初挑戦中の集団は、劇的に何かを変えたわけではない。

 開幕からアグレッシブに攻守を展開するサッカーを貫き、選手それぞれが日本のトップリーグに食らいつき、一戦一戦に向き合い続けてきた。チームとして兼ね備えている純度の高いひたむきさが、成長を促し、結果につながっていることは無視できない事実である。それに加えて、この3連勝は昨シーズンのJ1昇格プレーオフを勝ち抜いた時の戦いに回帰した感覚が強い。

 原点回帰を強調させたのは、先発選手の変更だ。

 [3-4-2-1]のシステムはそのままに、CFがルカオから一美和成、シャドーの一角が木村太哉から岩渕弘人、ダブルボランチの1人が神谷優太から宮本英治、3バックの左が工藤孝太から鈴木喜丈に代わっている。

 まず最前線がルカオから一美に代わったことで、ハイプレスの機能性が向上した。ルカオも献身的に守備に参加するプレーヤーだが、一美はそれ以上だ。岡山のプレッシングの肝である相手ボランチやアンカーを背中で消す役割を完璧に行いながら、周囲の状況を察知した上でボールを持つ相手CBにアプローチしていく。これによって、1列下にいるシャドーを筆頭にチーム全体が前に出ていくのか・留まるのかのタイミングを共有しやすくなり、プレスの目線を揃えることができる。

 ハイプレスのスイッチを入れる瞬間をチーム全体で把握できるということは、それぞれの思考を「奪いにいく」に統一させ、迷いのないプレスのスタートが可能になる。

 相手ボールホルダーを中心にコンパクトにした陣形で圧縮し、相手陣内でボールを狩り取る。強めた前への矢印で相手を飲み込み、奪った勢いそのままにゴールに素早く向かっていく。それをキックオフからフルスロットルで行う姿は、昨シーズンのJ1昇格プレーオフを思い出させる。開始早々の4分にハイプレスを起点に岩渕が先制点を奪い、相手に1本もシュートを打たせなかった第26節の柏戦の前半45分が象徴的だった。

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Profile

難波 拓未

2000年4月14日生まれ。岡山県岡山市出身。8歳の時に当時JFLのファジアーノ岡山に憧れて応援するようになり、高校3年生からサッカーメディアの仕事を志すなか、大学在学中の2022年にファジアーノ岡山の取材と撮影を開始。2024年からは同クラブのマッチデープログラムを担当し、サッカーのこだわりを1mm単位で掘り下げるメディア「イチミリ」の運営と編集を務める。(株)ウニベルサーレ所属。

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