クラブ公式の紹介によれば「高さと強さを兼ね備えた決定力のあるストライカー」。浦和レッズが獲得した新FW、イサーク・キーセ・テリンのことだ。これまでスウェーデン、フランス、ベルギー、ドイツ、トルコ、UAEのクラブを渡り歩き、2023年にはスウェーデンリーグ得点王、同国代表として2018年ロシアW杯を含む33試合5得点(2014〜24年)を記録してきた33歳の「旅」を、長年スウェーデンと北欧のサッカーを追い続ける佐藤真理子さんが振り返る。
ルーツはコンゴ。マルメで飛躍し、22歳で代表デビュー
8月24日、浦和レッズは元スウェーデン代表イサーク・キーセ・テリンの完全移籍加入を発表した。決断した理由については本人の口からまだ語られていないものの、浦和の関心はすでに2023年冬の時点で噂されていたため、今回の移籍はその流れの延長線上にあるのかもしれない。
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— IsaacKieseThelin (@IKieseThelin) August 24, 2025
テリンのキャリアは地元クラブのユースから始まった。幼い頃の憧れはスウェーデンのレジェンド、ヘンリク・ラーション。まだ9歳の時にラーションのトレードマークだったドレッドヘアにし、ゴールを決めれば舌を出すパフォーマンスを真似ていたというのだから、その心酔ぶりは相当なものだった。ただ、彼がラーションに傾倒した理由はそれだけではなかった。ラーションの父親はアフリカのカーボベルデ出身で、テリンの父はコンゴ出身。そのルーツも無意識のうちに自分の心を強く引き寄せていたと、彼は語っている。
その後テリンは19歳で国内1部リーグのノルシェーピンに移籍。そこでの活躍が評価され、2014年夏には前年度王者の強豪マルメに引き抜かれた。加入初戦でゴールを挙げる鮮烈なデビューを飾り、さらにスウェーデン勢として14年ぶりに本大会へと駒を進めていたチャンピオンズリーグでは、予選からグループステージまでの全12試合にスタメン出場を果たしている(2得点2アシスト)。
水を得た魚のようにマルメで躍動するテリンを、代表チームが見過ごすはずはなかった。それまでの代表歴は、U-17での数試合とマルメ加入直前に初めて招集されたU-21での数試合だったが、移籍から4カ月後の11月にEURO(欧州選手権)2016予選でA代表デビュー。以降の親善試合では、スタメンで3トップの中央を任されることとなる。
クラブでも代表でも自身の実力を証明したことで、国外リーグへの扉が開いた。2015年1月に移籍したフランス1部(当時)のボルドーでは即スタメンに抜擢され、リーグ後半戦で15試合1得点3アシスト。テリンが出場した試合で負けは1つしかなく(8勝6分)、チームの6位フィニッシュに尽力してその存在感を十分に示した。
また代表でも、6月に開催されたU-21欧州選手権で決勝までの全5試合にフル出場し(1得点1アシスト)、母国の初優勝に貢献している。
W杯出場と浮き沈み。テリンにとって理想的な戦術とは?
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Profile
佐藤 真理子
横須賀市在住。日韓W杯でスウェーデン代表にはまる。現地観戦を時おりこなしつつ、配信等のWEBを利用した“遠距離観戦”で一喜一憂する日々に忙しい。お隣のデンマークやノルウェー代表にも興味津々という北欧好き。
