堂安律や板倉滉はどこへ行く? 異常なカレンダーが生む混沌の移籍市場を探る
遣欧のフライベリューフリッヒ#15
「欧州へ行ってきます」。Jリーグの番記者としてキャリアをスタートさせ、日本代表を追いかけて世界を転戦してきた林遼平記者(※林陵平さんとは別人)はカタールW杯を経て一念発起。「百聞は一見にしかず」とドイツへの移住を志した。この連載ではそんな林記者の現地からの情報満載でお届けする。
今回のテーマは「日本人選手の移籍事情」。ブンデスリーガに新たに町田浩樹や鈴木唯人、藤田譲瑠チマらがやって来た一方で、堂安律や板倉滉のように去就が定まらない選手も多い。その背景には、“クラブW杯”がある。W杯イヤーを前に、ある選手は悩ましい決断を迫られ、ある選手は待つことを強いられている。
試合が途切れない異常なカレンダー
5月31日にUEFAチャンピオンズリーグ決勝でパリ・サンジェルマンが優勝してシーズンの幕は閉じられた……はずなのだが、2025年の欧州サッカー界のスケジュールは混沌を極めている。
CL決勝の翌週から各国代表選手たちはインターナショナルマッチウィークで代表活動を実施。ここまでは例年通りだが、そこから約1週間後に今度はクラブW杯が開幕。ビッグクラブでプレーする多くの選手たちがほぼ休みなしで活動を続けている。シーズンが終わらないのだ。
加えて、来年にはナショナルチームのW杯が開催されるため、どの国でも例年よりシーズンのスタートは早い。近年、過密日程に対して各方面から批判の声が上がっているが、それも無理はない。
そして、このスケジュールにより例年とは異なる状況が生まれているのが移籍市場だ。7月に入りやっと本格的に動き始めた移籍市場ではあるが、今年はクラブW杯に参加しているビッグクラブが多い影響もあり、全体的に動きが緩やかな傾向にある。
というのも、クラブW杯での賞金などで補強予算自体が変わってくる可能性もあり、出場しているクラブほど現状を精査しながら交渉を進めているところが多いのだ。クラブW杯が閉幕に近づいてきたことで少しずつ動きが出てきたが、ここからようやく移籍市場の本番という感覚になっている。
鈴木、町田、そして藤田がドイツへ
ブンデスリーガの移籍市場に目を向けると、例年以上に日本人選手たちの動きが活発化している。
最初に決まったのは鈴木唯人だった。デンマークのブレンビーで2シーズンを過ごしたパリ五輪世代のアタッカーは、昨季5位でシーズンを終え、ヨーロッパリーグ出場が決まっているフライブルクへと加入してきた。
2022年から堂安律が在籍していることで日本のファンにも馴染みのあるチームだが、鈴木を移籍市場のかなり早い段階で獲得しにいっていることからも評価の高さがうかがえる。即戦力として見ているのだろう。
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Profile
林 遼平
1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。
