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ボローニャ躍進の陰に名SD、サルトーリあり!ミラクル・キエーボ、ガスペリーニ・アタランタを急成長させた手腕は偶然ではない

2024.03.15

CALCIOおもてうら#7

イタリア在住30年、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えるジャーナリスト・片野道郎が、ホットなニュースを題材に複雑怪奇なカルチョの背景を読み解く。

今回は、セリエA4位と躍進を続けるボローニャの背景にある北米資本による長期的な経営戦略と、「ミラクル・キエーボ」や「ガスペリーニ・アタランタ」を築き上げたジョバンニ・サルトーリによるスカウト戦略を解説する。

 セリエAもそろそろ終盤戦。前回の当コラムで取り上げた通り、スクデットはすでに「セコンダ・ステッラ(2つ目の星)」とともにインテルの胸に縫いつけられ、2位争いもミランとユベントスの一騎打ちになっている。その中で目が離せないのは、ここにきてますます熾烈を極めているCL出場権争い。

 そこでグループの先頭を引っ張っているのが、今シーズン最大のサプライズと言うべきボローニャだ。残り10試合となった現時点で勝ち点51と、ローマ(同48)、アタランタ(同47)、さらにはナポリ(同44)、フィオレンティーナ(同43)といった「常連」を尻目に4位の座を固めつつある。

来季は5枠?ボローニャのCL出場が現実味

 来シーズンのCLはフォーマットが大きな変更を受けて参加枠が現在の32から36まで拡がるのだが、そのうち2枠は「ヨーロピアン・パフォーマンス・スポット(EPS)」として、前年のUEFAカントリーランキング上位2カ国に割り当てられることになっている。現時点でイタリアは(なんと)1位。CLは3チーム全てがラウンド16で敗退したものの、まだELとECLに計4チームが勝ち残っており、2位以内でシーズンを終える、つまりセリエA5位までが来シーズンのCL出場権を得る確率はかなり高い。

 ボローニャのような中堅クラブがCLに進出するとなれば、19-20から3年連続で出場したアタランタのそれに匹敵する、いやそれ以上の快挙と言っていい。クラブの財政規模を比較しても、昨シーズンの売上高はアタランタの1億1100万ユーロに対してボローニャはその7割強にとどまる8200万ユーロ、登録選手の市場評価総額(夏の移籍市場終了時点)も、アタランタの3億3400万ユーロ(リーグ6位)に対してその半分強の1億8500万ユーロ(リーグ9位)と、明らかな格差がある。本来なら10位前後が定位置で、一桁順位を確保できれば成功、たとえカンファレンスリーグでも欧州カップに出場できれば大成功、というレベルのクラブなのだ。

30節で首位を走るインテルにこそ敗れたものの、それまではリーグ6連勝中だったボローニャ。写真は27節でアタランタを下した試合後の様子

 その躍進の秘密の一端、とりわけチアゴ・モッタ監督率いるチームの戦いぶりについては、年明けに一度取り上げている。ここで少し掘り下げておきたいのは、この躍進が単なる幸運や偶然ではなく、クラブの経営戦略と強化戦略の着実な積み上げの成果であるというところだ。……

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Profile

片野 道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。

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