「人を惹きつけるキャラクターを持っている」スピードスターの記憶。柏レイソル・大谷秀和コーチが思い出す伊東純也の進化と成長
【特集】チームメイトが語るW杯メンバーの肖像#5
選手の本当の姿は、最も近くでプレーした仲間が知っている。スタジアムの歓声も、試合映像も映し出さない日常の振る舞い。苦しい時期に見せた表情。飛躍を予感させた瞬間――。チームメイトたちの記憶をたどりながら、W杯メンバーの肖像を浮かび上がらせる。
第5回は、柏レイソルで絶対的なキャプテンとしてチームを束ねていた大谷秀和が語る伊東純也。クレバーなボランチとして名を馳せ、現在は指導者に転身した大谷が、“ジェイ”と日立台で過ごした3年間を振り返る。
甲府時代に対峙した印象。「やっぱり速いなと思いました」
2015年11月15日、日立柏サッカー場(現:三協フロンテア柏スタジアム)で行われた第95回天皇杯4回戦。柏レイソルとヴァンフォーレ甲府が対戦した。試合は両者譲らず、1−1のままアディショナルタイムへ突入していた。
柏の後方からのビルドアップに対して、甲府の2シャドーの一角を務めていた選手が猛然とプレッシャーをかける。ボールを奪われた鈴木大輔は、入れ替わった甲府の選手を引き倒してしまい、この試合2枚目となるイエローカードが提示された。数的不利を強いられた柏だったが、延長戦の末に辛くも2−1で勝利した。
ただ、この試合において、終始柏を苦しめ、鈴木を退場に追い込んだ選手こそ、伊東純也だった。
現在は柏のトップチームでコーチを務める大谷秀和は、当時は柏のキャプテンとしてピッチに立ち、甲府時代の伊東と対峙した。
「やっぱり速いなと思いました。事前のスカウティングでもスピードがある選手なので警戒していました。当時、僕たちはボールを持つサッカーをやっていた中で、どういう状況で危ない場面を作られたら失点するかといったら、パスを引っ掛けられてのカウンター。特に甲府のように堅い守備からカウンターを狙うチームが相手だと、なおさらジェイ(伊東)のことは警戒していましたね」
漂う大物感。良くも悪くも細かいことは気にしない
だが、それから約2カ月後、その脅威だった選手は柏のユニフォームを着ることになる。チームメイトになった大谷の伊東に対する印象は「おとなしい」だった。確かに当時、増嶋竜也から「お前、全然話さないな(笑)」と言われていることがあった。
それでも、プレー面における伊東の「速い」という印象は変わらなかった。
「やっぱり速いと思いました。左でもそうですけど、右をやったときに縦にそのまま利き足の方に行って抜くという選手は、相当スピードがないとプロでは簡単じゃないですから」
同時に大谷は、大物感を漂わせる伊東の性格について興味深い表現もしている。
「太々しいというよりは、良くも悪くも細かいことを気にしない。周りがどうとかということをそんなに気にしないタイプでしたね」
柏に移籍した2016年シーズン当初、チームを率いていたミルトン・メンデス監督は、伊東を右サイドバックで起用していた。しかし第3節でメンデス監督が退任し、後任監督としてヘッドコーチを務めていた下平隆宏が引き継いだのを機に、伊東は本来の右サイドアタッカーへプレーの場を移した。ここから、伊東はその能力を一気に爆発させる。
そつなくプレーをこなせるサッカー観も持ち合わせる
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Profile
鈴木 潤
2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。
