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韓国サッカー界の「シンクタンク」。『JUEGO』が目論む指導者革命とは?

2020.08.30

footballista×JUEGO

欧州サッカーの最先端の知見を韓国、ひいてはアジアに広めるべく立ち上げられたプラットフォーム型シンクタンク『JUEGO』。その設立の経緯から韓国サッカーの指導者事情まで、ディレクターを務めるパク・スヨン氏に幅広く語ってもらった。

きっかけはラジオ!?シンクタンク誕生秘話

──まずは『JUEGO』について、簡単に紹介をお願いします。

 「『JUEGO』は韓国サッカー界のシンクタンクとして設立されました。まずはメディア活動を通じてサッカー関係者との繋がりを深め、現在は次の段階―― 指導者養成プロジェクトや仲介業に移っています」

──「シンクタンク」というのは戦略を立案・提言する機関のことですよね。サッカー界ではあまり耳にしない言葉ですが、立ち上げられたきっかけは何だったのでしょうか?

 「もともとは私も指導者になりたくて、当時韓国人選手が数多くプレーしていたドイツに留学しようとしていました。彼らが引退後に仕事をくれると考えていたからです(笑)。そんなことを企んでいた大学時代にインターネットラジオを始めたら、人気が出てしまって。そこでゲストを呼びながら人脈を広げていくうちに、韓国には優秀な人たちが埋もれていることを知ったんです。むしろ彼らを繋ぐ存在になりたいと思うようになり、仲間とともに『JUEGO』を立ち上げました。その想いは『JUEGO』のロゴにも込められていて、頭文字のJ を○、△、□の3 つの図形で構成していますが、○は人材、△は関係性、□は現場という意味。こうして異なる現場で働く多種多様な人材を結びつけるという理念を示しています」

『JUEGO』のロゴ

──そうした経緯があって『JUEGO』が誕生したんですね。パクさんはディレクターという立場ですが、どのように現在のサッカー界を見られているのでしょうか?

 「私たちは『ボス』(BOSS)という観点でサッカーを見ています。この見方は、ベティスの関係者から聞いた組織改革をきっかけに生まれました。当時、ベティスはクラブの業務領域をビジネス(Business)、オペレーション(Operation)、そしてスポーツ(SportS)の3つに大きく分けていたそうです。それぞれの領域から文字を取って、私はボスと名付けました。この3つの領域で彼らがまず改革に着手したのは、オペレーションです。そこで人事を見直し、キケ・セティエンを監督としてスポーツ領域の責任者に任命すると、彼の考え方を浸透させる部署まで立ち上げました。こうしてクラブ全体で彼の哲学とゲームモデルを共有した結果、自然とクラブそのものの価値が上昇し、ビジネス領域でも成果を上げることができたそうです。つまり、オペレーション領域やスポーツ領域の改善がなければ、ビジネス領域で成功することはできない。そこで中心、つまりボスになれるキケ・セティエンのような人材が必要です」

──経営と現場が一体となりつつあるサッカークラブの需要に応えられる人材を輩出しようとしていると。でも、最初はメディア活動をされていましたよね? 雑誌も発行されていて、フットボリスタでも掲載記事を転載させていただきました。それはなぜでしょうか?

 「当初は『NAVER』などのニュースポータルサイトを通じてどんどん記事を発信していましたが、今はやっていません。現場の関係者たちに私たちの人脈を知ってもらうという目的を達成したからです。年に2回の雑誌発行は今も続けていますが不定期ですね」

『JUEGO 』は「サッカー業界専門誌」という位置づけで雑誌を発行している

──そういう戦略があったんですね。現在は指導者養成プロジェクトを進められているとのことでしたが、そこにはどんな背景があるのでしょうか?

 「韓国のプロリーグは2部構成となっており、それ以外のセミプロやアマチュアのリーグは日本ほど整備されていません。だから、指導者が育たない。日本だったら林舞輝さんが奈良クラブを率いているように、JFLや地域リーグで若手指導者を育てることができますが、韓国では優秀な人材がいても育つ環境がないのです。この状況を解決するために、まずは欧州からの協力を得ながら指導者を育てようとしています」

──トップレベルにそうした人材が入っていく余地はないんですか?

 「日韓W杯で活躍して海外でプレーした選手たちが今、指導者として韓国に戻ってきているので海外の知見を得ようとする動きはありますが、肩書きのない指導者が入っていくことはできていませんね」

──トップレベルであまり若手指導者にチャンスが与えられないという点では日本も同じですね。

 「ただ、日本は下部リーグが整備されている分、競技人口も多いですよね。その分、指導者たちが働けるチャンスが多いのではないでしょうか。いい選手をすぐに見つけることができる環境でもあるので、指導者もいいチームを作って実力を証明しやすいと思います」

韓国サッカーに欧州から理論を持ち込む理由

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JUEGOパク・スヨン

Profile

足立 真俊

1996年生まれ。米ウィスコンシン大学でコミュニケーション学を専攻。卒業後は外資系OTAで働く傍ら、『フットボリスタ』を中心としたサッカーメディアで執筆・翻訳・編集経験を積む。2019年5月より同誌編集部の一員に。プロフィール写真は本人。Twitter:@fantaglandista