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プレミア初制覇の陰に異色の心理学者。リバプールに流れる「マスタリーカルチャー」

2020.08.19

 ここ10年間でフットボールにおいて注目を集めるようになった「スポーツ心理学」。今季リバプールをプレミアリーグ初優勝に導いたユルゲン・クロップもその重要性を認めており、『The Athletic』のインタビューで「選手の技術的な能力は練習をすれば完璧に近いレベルまで上達させることができるかもしれないが、それを発揮する準備ができていなければ選手は自分のポテンシャルを最大限活用することができない」と、メンタルが選手の才能を大きく左右することを示唆している。

選手と指導者のキャリアを持つ心理学者

 現に彼が率いるリバプールには、選手たちをメンタルからサポートするスペシャリストがいる。それが、スポーツパフォーマンスを専門とする心理学者リー・リチャードソンだ。彼はワトフォード、ブラックバーン、アバディーンでプレーした元プロ選手で、若手時代はリバプールからも目をつけられていた有望株だった。2004年の現役引退後は当時英3部のチェスターフィールドでアシスタントコーチを務め、2007年に同クラブの監督へ就任。降格も味わったが、英4部では月間最優秀監督に選出される手腕を発揮していた。

チェスターフィールドを率いていたリチャードソン

 2009年にはUEFAプロライセンスを取得したリチャードソンだが、「選手たちが持っている才能を最大限発揮できるよう手助けをしたい」という想いから、新たにスポーツ心理学者の道を歩み始める。まずはコンサルタントとしてサム・アラダイスのバックルームスタッフに加わると、ウェストハムで働く傍らでスタフォードシャー大学に通いスポーツ心理学の修士号を取得。その後、クリスタルパレス、ハル・シティを経て、2019年夏にリバプールへと加わった。彼はチームを車庫にたとえ、自身の仕事をこう説明している。

 「車庫の中には高級車がたくさんあり、その車には素晴らしいコンピューターが搭載されている。そのコンピューターにはメンテナンスを行う技術者が必要で、それが私の役割だ。メンテナンスが必要な時、私はそこにいてプログラムの不具合に対応する」

 「監督は意思決定をする立場に置かれている。チームにとって好意的な決断をすることを心掛けていても、それが常に選手全員から支持されるとは限らない。そして、すべてに対処する時間は次々と試合が迫ってくるシーズン中にほとんどないんだ。そんな中でチームに不具合が生じないよう、選手一人ひとりを観察している。必要な場合は個々に合ったアプローチで対応しているよ」

リバプール独自の文化「マスタリーカルチャー」

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リー・リチャードソンリバプール文化

Profile

塚本 修太

1997年6月21日生まれ。茨城県水戸市出身。前橋育英高校をケガで中退したのち、イングランドのソレント大学フットボール学部へ。留学中にヨーロッパ諸国を訪れ、様々なサッカーメソッドを学ぶ。2020年7月に卒業予定。