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Jクラブの地域貢献を可視化する「スポーツの価値算定モデル調査」とは?

2020.05.22

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2月末から中断が続いているJリーグ。再開の見通しが立たない中、Jクラブは地元を支援する活動を行っており、リーグ理念である「地域密着」にあらためて注目が集まりつつある。

こうした「社会的価値」を含む総合的なスポーツチームの価値を可視化する試みとして実施されたのが、「スポーツの価値算定モデル調査」だ。どのように地域への貢献度を数字で表しているのか。その調査協力を行ったあずさ監査法人の土屋光輝氏に、詳しく話を聞いた。

会計事務所がみたJクラブの「伸びしろ」

――まずは、自己紹介からお願いします。

 「私はあずさ監査法人という会計事務所に所属しています。監査とは企業の決算書が適正かどうかを調べ、意見を表明する業務です。もともと私はベンチャー企業の監査業務を中心に、経営・財務管理や株式上場のサポートなどまで担当していました」

――会計事務所がなぜ、スポーツに関わることになったのでしょうか?

 「個人的な話ですが、昔からW杯を現地観戦するくらいサッカーが好きで、ブラジルW杯を観に行った帰りの飛行機の中で、サッカークラブとベンチャー企業の多くの共通点に気づき、ベンチャー企業の育成・支援で培った経営・財務管理の知見をサッカークラブを含むスポーツチームに還元できないかと思ったんです。そして、2015年に立ち上がった『スポーツアドバイザリー室』(現スポーツビジネスCoE)で、会計事務所だからこそできる、経営課題の分析、中長期計画の策定、予算管理等に資するアドバイス活動をスポーツチーム・団体向けにはじめました」

――会計事務所という立場から見ると、サッカークラブにはどのような課題があるのでしょう?

 「まだまだ日本のスポーツ興行の市場規模は小さく、Jリーグとプレミアリーグの市場規模を比較しても1996年頃は同じくらいだったのですが、20年後には約5倍も差が開いています。

 ただ前向きに、それを伸びしろと捉えることもできます。国も『スポーツの成長産業化』を推進していて、スタジアムを新たに作ったりスポーツ経営人材を育てていくといった話が盛り上がってきている。地方自治体や地元企業のようなステークホルダーもスポーツチームと共存しながら、その価値がどこにあるのかを理解して『スポーツを通じた地域活性化』に生かしていこうと動いています。しかし、実際に関係者に話を聞いてみると、クラブとステークホルダーの間で、クラブの持つ価値が正しく理解されていなかったり、認識の食い違いがあったりしていたんです。クラブ側もステークホルダーとの対話や交渉の中で使える数字や指標がなかったりして、なかなか取組みが上手く進んでいないように感じました」

――お話に出てきた「スポーツの成長産業化」というのは、単に毎年右肩上がりに売り上げを伸ばしていくことではないですよね?

 「もちろん、興行として利益を出す必要はあります。私たちがよく目にしている決算書にも、チケット収入、グッズ収入、放映権料、スポンサー料としてスポーツの成長産業化は表れてきます。ただ、そうした財務価値の裏側には財務価値を高めるポテンシャル、無形資産として広告普及効果などの『潜在的財務価値』があり、地域にもたらされる経済波及効果や行政コスト削減効果などの『社会的価値』もある。

 そうした決算書には表れない価値を数値化していけば、地方自治体やスポンサー企業などのステークホルダーによりアピールできるんじゃないか。そう考え、株式会社日本政策投資銀行の『スポーツの価値算定モデル調査』にあずさ監査法人と株式会社Eraが協力企業として参画し、スポーツチームがもたらす価値の総合的な可視化とJ2クラブの平均値などの仮定を用いての試算をしてみました。すると、財務価値だけでは1億円程度でしたが、広告露出価値を加算すると27億円程度の価値があり、さらには地域に対して43億円の経済波及効果や4億円の都市プロモーション効果などの社会的価値もあるという試算結果となりました」

――それだけ大きな価値が埋もれてしまっている可能性があると。そこを数値化して掘り出すことで、交渉材料の一つとして使ってもらうのが目的だということですね。……

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Profile

足立 真俊

1996年、岐阜県出身。生まれもっての“人見知り”を克服するためにアメリカにあるウィスコンシン州立大学でコミュニケーション学を専攻。学業の傍らで趣味として始めた翻訳活動がきっかけとなり、サッカーに関する様々な情報発信を模索中。2019年5月、結局“人見知り”のままfootballista編集部の一員に。つぶやっきー:@fantaglandista