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フランスのeスポーツを追う(2)王者に聞く「プロに必要な才能」

2019.05.06

フランスの「eSports」事情についてお伝えするミニ連載の2回目は、EAスポーツが発売しているゲーム『FIFA』シリーズの腕前を競うフランス国内リーグ『eLigue1』の初代王者のインタビューをお届けする。
eスポーツのプレーヤーに必要な才能とは? コーチからはどんな指導を受けているのか? さまざまな疑問に迫る。

→第1回はこちら

マリオカート好きの少年がプロの王者に

 『eLigue1』の初代チャンピオン、『Maniika』ことヨハン・シモンさん。彼は2017年大会優勝後、発足して間もないPSGのeSports部門に引き抜かれた。優勝した大会では出身地の地元クラブ、FCメスの代表として戦ったが、以降はエッフェル塔のエンブレムを胸にPSGを背負って戦っている。

 Maniikaは現在26歳。このプレーヤー名には特に意味はなく、なんとなく語呂が気に入って使っているうちに名前が知られるようになり、そのまま使い続けているんだそうだ。

 ゲームは子供の頃から好きで、『マリオカート』でよく遊んでいた。リアルなサッカーも、16歳まではストライカーとしてプレーしていて、サッカーをやめた頃から真剣に『FIFA』をやるようになった。すると、みるみる結果が出て「自分は向いているかも」と思ったという。

PSGでゲームが強いのは誰?


──2017年からプロになったわけだけれど、「プロ」になってよかったことは?

「やっぱりゲームに完全に集中できること。これが仕事だから、『勉強しなくちゃ』とか『就職どうしよう?』といったことに悩んだりすることなく、存分にゲームに打ち込める。『自分はゲームに向いているかも』と思い始めた10代の頃はまだプロプレーヤーなんて仕事はなかったから、こんな職に就けるなんて夢にも思っていなかった。だから本当に今は幸せなんだ。引退後も、コーチやコメンテーターといった形でゲーム業界に携わっていきたいと思っているよ」


──実際のサッカー選手は「現役時代は楽しむ余裕なんてなかった」と言う人が多いけれど、eスポーツではどう?

「ああ〜、その気持ち、すごくよくわかる! まったく同じかもしれない。プロになった時点で、『楽しんでプレーする』という感覚はなくなる。クラブのために勝たないといけない。そのプレッシャーは常に持っているから。プロとしてプレーすることのデメリットはその点だろうね」


──PSGに所属している利点はどんなところ?

「世界的に知られたビッグクラブのシャツを着て参戦できるというのは、とても誇らしいし、自分が何者かということについても信頼性が高まる。それに知名度も上がるし、情報網だったり準備面でも優遇されていることは多いよ」


──PSGのサッカー選手たちとの交流はあったりする?

「オフシーズンのツアーには僕たちも一緒に行くから、そのときに一緒にゲームをしたりしているよ。ディ・マリアやドラクスラーは結構ゲーム好きで、よく対戦するよ」


──上手いのは誰?

「結構みんな上手いんだけど、移籍してしまったパストーレ(18年にローマへ移籍)はかなり強かったな。それからやっぱりキリアン(・ムバッペ)も強いね」


──リアルなサッカーで好きな選手と、ゲーム上で好きな選手は違っていたりする?

「それはあるね。たとえば僕はベラッティが大好きなんだけど、能力値をデータ化するときの関係で、彼のようにサイズがあまりなかったりすると数値が低くなることがあるんだ。だから、必ずしも実際に好きな選手ではなく、数値化したときの効果で選ぶことが多いかな」


──好きな戦術は?

「僕はポゼッションサッカーが好きだから、プレースタイルもいつもボールキープが基本だね」

実はメンタルコントロールが重要


──実際のサッカーでも最近は分析やデータが大きな役割を果たしているけれど、やはり分析は綿密に?

「相手の分析は多少はするけれど、それよりも自分のゲームに集中することのほうが僕は多い」


──Maniikaの場合はチャンピオンということで、むしろ相手に分析される側……。

「そうなんだ。だから、僕は相手が自分を分析してくることを想定した上で、その彼らのデータの上を超えるパフォーマンスをすることに力を注いでいる」


──実際、eスポーツに必要な才能は?

「他のどの職種とも同じように、やっぱり持って生まれた才能やセンスは関係していると思う。それからものすごく重要なのは、実はメンタル面なんだ」


──ゲーム上での技よりも?

「もちろんテクニックも必要だけれど、いかに試合中に集中を保てるか、プレッシャーに対応できるか、自信を持ってプレーできるか、ストレスと付き合えるか、といったメンタル面が本当に大きい。それから経験も」


──ManiikaにはPSGの専属コーチがついているけれど、彼からはどのようなトレーニングを?

「これも実際のプレーのことよりも、いかにメンタルコントロールをするか、ということを指導してもらうことが多い。試合のときも同じで、集中するように、といった指示をもらっている」


──1日のプレー時間は?

「大会前は集中して準備するから、1日5、6時間。それ以外のときは、週に10時間くらいのときもあるよ」


──最後に。Maniikaはサッカー経験者だけれど、もしリアルなサッカーとeSportsの両方でPSGの選手になれるチャンスがあったとしたらどちらを選ぶ?

「それはやっぱり、リアルなサッカーのほうかな(笑)」

 今年の『eLigue1』の春の大会では、準々決勝でリールの代表に敗れて、惜しくもグランドファイナル進出はならなかった。だが、フランスのプロeスポーツプレーヤーのパイオニアの1人、Maniikaの今後の活躍をお祈りしたい。

 次回は、フランスのサッカークラブでいち早くeSports部門を設立したPSGのダイレクターを直撃する。

Photo: Yukiko Ogawa

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パリ・サンジェルマン

Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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