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ララーナは、小さくても戦える。敵が嫌がるポジショニングを知る男

2018.05.11

「完璧」なポジショニングで即時奪回、難局打開

Adam LALLANA
アダム・ララーナ

1988.5.10(30歳) 172cm/73kg ENGLAND


 ボールを持てば、軽やかなステップや華麗なクライフターンで相手をいなしてみせる。ボールプレーのレベルの高さは折り紙つきだ。しかし、アダム・ララーナという選手の真髄は、オフ・ザ・ボールのシチュエーションで見せる“動きの質”にある。

 技術の高さと同じかそれ以上に代名詞となっているのが、プレッシングだ。彼はチームの誰よりも長い距離を走り、相手DFを追い回すプレスの鬼だ。「タックルやインターセプトが、ゴールを演出するのと同じくらい楽しい」と豪語する彼は、まさにゲーゲンプレッシングの申し子と言っていい。

 しかし、ララーナはただガムシャラに走っているわけではない。「アダムのポジショニングはパーフェクト」。これはクロップ監督が過去に発した言葉だが、ララーナはピッチ上で、常に自分の居場所を考えているのだ。ボールロストの直後なら、「どこにフタをしておけば敵のカウンターを抑止できるか」を考えてゲーゲンプレスの“角度”を決める。相手のビルドアップが始まれば、「CBへのパスコースを切る」「ボールをタッチライン際に追い込む」「次のパスが出たらボランチを囲い込む」のどれが最適解なのかを考えて、明確な目的を持ってそのための最短距離を走る。彼がいち早くプレッシングの口火を切れるのは、実は緻密な思考力と判断力があってこそである。

 どのポジションにいれば、相手が嫌がるのか。クレバーなポジショニングは、攻撃でも生かされる。守備ブロックを敷く相手のMFとDFの間、またはCBとSBの間にエアポケットを見つけてそこに入り込む動きは秀逸だ。クロップいわく、「コンパクトにプレーできている時こそアダムは際立つ」。狭いエリアでも“正しいポジション”を考えて顔を出せる選手なのだ。

 また、ララーナをユース時代から知り、プロデビューの機会を与えた元サウサンプトン監督のジョージ・バーリーは元教え子をこう評する。

 「ベイルのようなアスリート的才能も、ウォルコットのようなスピードもない。だが、18歳の頃から彼が一流選手になるのはわかっていた。彼は常にラインとラインの間や、ストライカーの背後でプレーする非常に賢いプレーヤーだったからね」

 小さくたって、知性があれば戦える。屈強な大男たちがひしめくプレミアリーグで、ララーナはそれを体現している稀有な存在なのだ。

 だから、今季はケガの影響に苦しんだが、それでも監督の信頼は揺らがない。まだ完全フィットの状態ではなくとも、知的なプレーで攻撃の流れを変えられるジョーカーとしてララーナを使っているクロップしかり。また、イングランド代表のサウスゲイト監督もしかりだ。サウスゲイトは「アダムのインテリジェンスは我われの戦術において不可欠なもの」と話し、とりわけW杯に向けて編み出した[3-4-3]システムは、「ララーナやデレ・アリのように知的な選手たちにとってパーフェクト」な戦い方だと公言してはばからない。


Photo: Getty Images

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アダム・ララーナリバプール

Profile

寺沢 薫

1984年生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、2006年からスポーツコメンテイター西岡明彦が代表を務めるスポーツメディア専門集団『フットメディア』に所属。編集、翻訳をメインに『スポーツナビ』や『footballista』『Number』など各媒体に寄稿するかたわら、『J SPORTS』のプレミアリーグ中継製作にも携わった。