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ドイツ・プレス戦術史の黒幕語る“美しいサッカー”=ダイナミズム

2017.11.27

“私はただ『私たちのサッカーがどこまで発展できるか』知りたいだけ”

Interview with
HELMUT GROß
ヘルムート・グロース

(RBライプツィヒ ストラテジーアドバイザー)

ラルフ・ラングニックの盟友であり、トーマス・トゥヘル、マルクス・ギズドルら現世代の監督たちが発想の源泉を得ている、ヘルムート・グロースという男をご存知だろうか。彼が実践したボールオリエンテッドなゾーンディフェンスというアイディアは革命的だった。どれほどサッカーの専門知識を蓄え、豊富な経験を備えていてもめったにインタビューに応じることのないグロースが、およそサッカーの公式戦ほど長く続いた対話の中で、これまでのサッカーの発展やRBライプツィヒの哲学への深い洞察を明かしてくれた。

データが証明する「5秒ルール」

ボール奪取へのエネルギー投資がゴールに直接結びついている

──以前、ボルフスブルク戦のハーフタイム直前に、あなたとラングニックが観客席でかなり激しく議論していました。31年もともに仕事をしてきて、いまだに意見が合わないこともあるんですか?

 「(笑)。あれは0-1でリードされていたからだよ。我われは、それまでリードされてハーフタイムを迎えることすらあまりなかったからね。私たちがそれぞれ異なった考えに至ることは、本当に滅多にない。ましてや、私たちがまったく接点を見つけられないほど全然違う考えを持ってしまうことなんて、今まで一度も起こったことがないんだ」

──出会いは1986年だと聞いていますが、どんなきっかけだったのですか?

 「彼はシュツットガルトのアマチュアチームで、私はオーバーリーガ(当時3部)のキルヒハイム・テックで監督をしていてね。バーデン=ビュルテンベルクサッカー連盟のコーチングコースで知り合って、互いにコンタクトを取り合うようになった。私たちがともにボールオリエンテッドのゾーンディフェンスを発展させようとしていた時に素晴らしく、将来に向けて建設的な話し合いができたことで今の関係に至ったんだ」

──しかし、当時のサッカー界はあなたの考え方に反対でしたね。

 「当時は、本当に反対ばかりされてね。まあ、ドイツでは何でもそうだけれど。自分の考えも及ばなかった新しい発明を最初に見た時の人々の反応は、たいていネガティブなものだ。『こんなことはあり得ない!』とね。ラルフ(ラングニック)は公の場で、それを極端な形で経験したのさ」

──最近は、そういった革新的なアイディアにもオープンになってきましたか?

 「基本的にはそうだね。これに関しては、当時に比べてテクノロジーが発展したことも大きい。例えば、GPSやビデオ分析、そしてトラッキングといった技術を使うことで、考えついた理論を分析や統計を使って実践的に証明できる可能性が高まっているからね。そうして、実際に行った結果が成功に繋がり、より証明が簡単にできるようになった」

──例えば?

 「ボールを奪い返してからシュートまでの10秒ルールは、今では誰もが口にするだろう。加えて、ボールを奪い返すための5秒ルールもよく知られるようになった。もし、偶然による得点を除いた通常のゴールを100回も見返せば、プラスマイナス1.5秒のズレはあるにしろ、その原則通りの数字が出る。それは数字の基準に過ぎないがね。素早いボールの奪い返しに関するバルセロナ大学の実験で面白い結果が出ている。5秒以内にボールを奪い返せれば、ボール奪取までに8秒や10秒かかる時よりも試合終了時にははるかに体力をセーブすることができる、というものだ。質の高い選手がそろっていれば、ボールを動かしながら回復する時間を取れるからね。バイエルンのペップ・グアルディオラはそれを徹底して実行してみせた」

──どのように?

 「あまり知られていないが、ペップの最初のシーズン(2013-14)のバイエルンは、ブンデスリーガ全体でボールを奪い返す際に最も多くスプリントしたチームだった。彼らがこのボール奪取のための5秒ルールを実践し、チーム全体でボールを奪い返そうとしていたからだよ。これが最初の最も大きな変化だった。ペップはバイエルンにポゼッションを浸透させはしたけれど、リベリとロッベンがいたおかげで、必要に応じて常にスピード、創造性、そしてダイナミズムを試合にもたらすことができていた」

バイエルン時代のグアルディオラ監督

──ポゼッション重視はいまだに有効なのでしょうか?

 「グアルディオラのバルセロナ時代の終盤は、チームがそれを完璧にマスターし、試合を完全に支配できるまでになっていた。しかし、それは同時に試合のダイナミズムを奪い去ってしまい、観客は試合を見る気にならなくなってしまっていた。現代サッカーの中で、ポゼッションはそれ自体としての意味と価値がある。しかし、それが直接成功に繋がるわけではないんだ。それに、ポゼッションが有効なのは、対戦相手がそれほどアグレッシブに向かって来ない場合と、自分たちの選手がそれを実践できるだけのクオリティを持っている時だけ。所属するリーグの水準よりも技術的に低いチームにとっては、ポゼッションは大きなストレスになるだろう」

──素早いトランジションが成功ファクターだという証拠として、どういったことが挙げられますか?

 「ホッフェンハイム時代の2011年に、私たちのスタイルであるボールオリエンテッドなゾーンディフェンスがボールを奪い返すのにどれだけ役に立つのか、証明するためにダニエル・メンメルト教授に実験してもらったんだ。結果は非常に明快で、より頻繁にスプリントしたチームの方が、より速くボールを奪い返すことができた。もちろん、実践的な知識として私たちはそれを理解していたけど、こうして数値として証明することもできた。それに、この話には続きがあるんだ」

──どんな話でしょうか?

 「教授はそこからさらに、スプリントによって素早くボールを奪い返せたチームは、得点の可能性がより高くなる、という結論に至ったんだよ。一方で、ダイナミズムを抑えて、良く言えばコンパクトに守りながら相手のパスミスを待つようなチームは、ボールを持ってからスピードを上げなければならない。だから、私たちはトランジションや攻守の切り替えという言い方はしないで、基本的には『常に攻めるサッカー』をしていると思っている。ボールを奪い取るためにアタックし、奪ったらそのままボールを持って一気にゴールを決めるために攻め込んで行く。私たちのデータは、ボール奪取へのエネルギーの投資は、ゴールという成功に直接結びついているということを明らかにしてくれているんだ。この法則の例外として扱っていいのはロッベン、リベリ、メッシやネイマールのような本当に限られた選手だけだ」

──あなたはサッカー人生を懸けて完璧なゲームスタイルを探し求めているようです。

 「(にやりと笑いながら)そんなものはあり得ないと知りながらね」

──昨季のRBライプツィヒのサッカーは、完璧な解決策に限りなく近づいていましたか?

 「部分的に、時どきね。私たちは、何を完璧に行いたいのか、ということを明記して可視化している。それを基に、私たちはクラブの監督や選手たちに、これらを極端なまでに実践してくれ、と伝えている。なぜなら、やり過ぎと言えるほど極端なまでに実行したものだけが、真の改善に繋がるからだ。その逆もしばしば起こるがね。そしてそれは、アカデミーの監督たちも同様だ。彼らには彼らの言い分があるからね。それはそれで良い。私たちが望んでいるのは、とりわけトレーニングやトレーニングマッチで実践される『極端さ』なんだ。例えば、練習試合を行う際、45分ごとにメンバーを全員入れ替えてプレーさせることを好んでいる。なぜなら、45分だけのプレーなら、選手は100%以上の力を出してプレーすることができるだろう。そうして初めて、認知の領域は本当に鍛えられるようになるんだ」

昇格初年度ながら快進撃を続けたRBライプツィヒ。王者バイエルンには及ばなかったものの2位フィニッシュを果たした

──フィジカル面では、サッカーはほぼ研究され尽くされているようです。認知の領域では、いまだに発展の余地が残されていますか?

 「その通り。その領域では、私たちがいまだに思いもつかなかったことが起こり得るかもしれない。この分野では、まだまだトレーニングプログラムが足りていない。私たち自身も、この部分のメソッドを構築していくことに挑戦しているところなんだ」

──あなたの理想のサッカーに個人の領域は残っていますか? というのも、あなたのサッカーは集団の「群れ」を作ることに意味があります。

 「群れを作ることで、独りでできないことが可能になる。とはいえ、より個々の選手の能力が高ければ高いほど、通常ならその集団の質も高まるものだ。私たちは確かに、チームは好んで一つのアイディアを共有しなければならない、と言ってはいる。しかし実際には、その群れの中の一人ひとりがそれぞれ、様々な役割を請け負っているんだ。だから、言ってしまえば、個人でも仕事ができる選手にも、このサッカーは浸透するはずなんだ。まったく同じように考えるよう選手をコントロールすることには価値がない。そうではなくて、適切なタイミングでシンクロさせながら、それぞれの判断を同時に行わなければならない、ということなんだ」

固定観念へのアンチテーゼ

私たちは比較的高いボール支配率を誇っている。誰も信じてはいないがね

──RBライプツィヒは、例外なく若い選手を獲得しています。彼らはコンセプトに沿って成長させることができるからですか?

 「1つ目には、精神面。このレベルのサッカーを経験したことのない若い選手たちは、説得しやすいし、それが実際にうまく行った時の感激も大きい。2つ目はフィジカル面。若い選手の方が、一般的に回復が早い。彼らにはまだ大きな負荷をかけられるし、スピードが上がる可能性もある。ベテラン選手の場合、遅くならないだけでもラッキーだと喜ばないといけない」

──若い選手たちはベテラン選手よりもパニックになりやすい、という批判もありますね。

 「それには3つ目のポイントが当てはまる。認知の領域だよ。私たちのサッカーでは、速く認識し、認知し、状況を分析し、予測し、判断しなければならない。これらはすべて認知の領域のプロセスだ。空のハードディスクのコンピューターの方が扱いやすいのと同じように、若い選手の方が仕事をしやすいと考える理由だね。選手たちは私たちのサッカーを披露しなければならないし、彼らはそれを素早く理解できる。ベテランの選手は状況によっては、少し詩的に言えば、スローダウンへの憧憬を抱いてしまうこともあり得る。そういったタイプの選手は、ボールの上に足を置き、これから自分もついていけるように、ゆっくりプレーしてくれと言い出しかねない。それまでまったく違った思考スピードに慣れていて、パニックになってしまっているからだ。とはいえ、それは選手に限らず見ている人たちにも当てはまるんだが」

──どういうことですか?

 「私たちは、よく批判されたものだよ。『あいつらがピッチ上で行っているのは、ただのカオスじゃないか』とね。そういうことを言う人たちにとってはそう見えるんだろうね。というのも、観客席で見ている彼らには、何が起こっているのか、まったく予測できず理解できないんだから。そうなると、当然、居心地悪く感じて『こんなのはサッカーじゃない、私が馴染んでいるサッカーじゃない』と言うしかなくなるのさ」

──他には『RBライプツィヒのサッカーは美しくはない』という批判もありますね。

 「それは、私がちょうど今言ったことと関係しているね。多くの美的感覚は、基本的に習慣に依っている。何が美しいか、という社会の慣習による一般的な基準から大きく外れていなければ『美しい』と見なされるだけなんだ。カオスじゃないか、という批判にもう一度戻って言えば、私たちは比較的高いボール支配率を誇っている。誰も信じてはいないがね。これはつまり、私たちがボールを失う前に、大抵の場合は対戦相手よりもパスを多く繋いでいる、ということを意味している。しかし、そのフェーズがとても速く進行するために、多くの人たちの目には私たちが対戦相手よりも速くボールを失っているように見えているようだ」

──あなた自身にとって“美しいサッカー”とはどのようなものですか?

 「素晴らしいダイナミズムが試合の中で見られる時だね。それは物理的な速さだけにとどまらず、創造的なアイディアや正確性、テクニック、それに加えて賢明で素早い判断の組み合わせによって実現されるんだ。そういうサッカーができれば理想的だ」

──現状のRBライプツィヒのやり方を見たり聞いたりしていると、十分な資金と明晰なプランがあれば、計画通りに成功できると思えてきますね。

 「ラルフは、いつも繰り返し正しいことを言っている。『成功は計算できないが、選手のパフォーマンスは計算できる』とね。実際に成功するかどうかは、運も左右するからね。仮に幸運がやって来ないとしても、不運がやって来たらどうにもならない。大きなポイントは、どのクラブで仕事をするにしても、私たちにはホッフェンハイムでの経験から大きな蓄積を積んできた強みがあることなんだよ」

──例えば、ホッフェンハイム時代に学んだことで、現在RBライプツィヒで活用されているのはどんなことですか?

 「キャリアの早い時期に、条件を満たした若い選手だけを獲得する、という原則だね。私たちのクラブに来るまでは無名ながら、スピードやテクニック、ダイナミズムや創造的なプレーといった何かしらの強みを発揮してくれる選手を獲得するのさ。そうしてチームを構成するんだ。その他にも、私たちのキャリアの中でポジティブに作用したものを活用している。もちろん、いくつかの点でうまくいかなかったこともある。そうじゃなかったら、おそらく私たちは今でもホッフェンハイムに留まっていただろう」

──あなたがその失敗から学んだ教訓は何ですか?

 「それに関してはあまり言いたくない。というのも、こういったことは個人的なことだからね。まあ、例えば、ホッフェンハイムの成績が良くない時に『若い選手ばかりで、ベテランがいないからだ』という批判が起こったんだ。私たちもそうかもしれない、と実際にベテランを獲得してみた。ヨシップ・シムニッチだった。彼は当時すでに31歳で、ブンデスリーガの選手が選ぶ最優秀DFに選ばれたばかりだった。それを見て、私たちも『一度試してみよう』と獲得を決めたんだが、まったくの間違いだった。というのも、彼は常にプレーのスピードを落として、自分の思考スピードにチームを合わせようとしていたからだ」

──あなたは、RBライプツィヒがどのように発展していくのか明確に把握しているのですか? それとも、今の成功に自分でも驚いていますか?

 「正直に言えば、今起こっていることの多くは望んだ通りに進んでいる。とはいえ、その時どきで私たちを助けてくれたり、驚かせてくれる偶然が起こったりするものだよ」

──例えば?

 「ロジャー・シュミットがザルツブルクを率いて2シーズン目の時、彼が今の私たちのプレー哲学の実現に大きく貢献してくれた。彼はケビン・カンプル、マネ、そしてソリアーノといったメンバーがいたチームで、創造性とテクニック、そして予想できないハプニングを組み合わせて素晴らしいダイナミズムを生み出したんだ。ゲーゲンプレッシングを攻撃的な戦術ツールとして完璧な領域にまで仕上げたのさ。それはまさに、かつてユルゲン・クロップが『我われのゲームメイカーはゲーゲンプレッシングだ』と言ったようにね。彼らは本当にスピードあるコンビネーションを実現してみせた。あまりに速過ぎて、一時的にボールを失ってしまうほどにね。しかし、彼らは一瞬のうちにゲーゲンプレッシングを仕掛けるから、そのボールロストさえもメリットに変えてしまっていた。対戦相手は、そこにいないにも等しいものだったね。それまでは、まさかここまでのものになるとは思ってもいなかったし、求めてもいなかったからね」

盟友と同志たちの未来

ラルフは強烈な野心を持っている。自分が納得するまでやり続けるだろう

──ロジャー・シュミットのレバークーゼンでの仕事がうまくいかなくなった理由は説明できますか?

 「最初はまったく問題なかったはずだ。彼は当時いた選手たちをすぐさま納得させてCLまで導いた。そうして、何人かの選手が100%信頼して彼のサッカーについて行こうとしない時期に差しかかったんだ。サッカーはうまく回る時は回るし、うまく行かない時はうまく行かないものさ。昨季のレバークーゼンは8試合もたった1点差で敗れていたんだから」

──ライプツィヒでも2-3の1点差でしたね。

 「私たちと対戦した試合でも、そうだった。レバークーゼンは走行距離、スプリント数、1対1の勝率といった、計測し得る重要なスタッツのすべてで私たちよりも若干良かったんだ。しかし、彼らは敗れてしまった。なぜなら、私たちはすべてを出し切り、自分たちよりも優れたチームを破るためには心の強さとチームの結束で戦うしかない、と完全に自分たちを信じていたからね。あの時のレバークーゼンは私たちとはまったく違っていた。選手たちは自分たちのシステムに疑問を持つようになっていたんだ。私はロジャーがいつか他のチームで、また違ったやり方で自分の道を突き進んで成功を収めると確信しているよ」

──あなたは多くの監督たちに発想のひらめきを与えていますね。ラングニックやロジャー・シュミットだけにとどまらず、マルクス・ギズドルやトーマス・トゥヘルも例に挙げられます。

 「トゥヘルは、どちらかと言うと間接的な関係だね。ラルフが彼を選手としてウルムに、そして育成年代の指導者としてシュツットガルトに招いたんだ。彼はとても分析的に働いて、素晴らしい仕事をしているね」

──彼がドルトムントで浸透させていたスタイルはRBライプツィヒに最も近いですか?

 「いくつか特定の分野ではかなり似ている。とはいえ、それもコピーではないね。RBグループの監督も、みなが同じやり方で仕事をしているわけではないからね。性格なども関わってくる。前線からボールを奪いにかかるアタッキングフットボールを、リスクが大きいとして避ける心配症なタイプの監督がいる。その一方で、例えばロジャーのように、自分たちからアグレッシブに動き出すことを好むタイプもいる。ラルフ・ハーゼンヒュットルも同様で、迷った時には一見するとリスクが大きい方を選ぶタイプだ」

グロースから薫陶を受けた監督たち。右からロジャー・シュミット(現北京国安監督)、トーマス・トゥヘル(無所属)、ラルフ・ハーゼンヒュットル、マルクス・ギスドル(現ハンブルク監督)  

──なぜ「一見」なのですか?

 「私たちの考え方からすれば、一般的に多くの人たちが安全だと見なしていることの方がリスクが大きいように感じられることも多い。例えば、自陣深くまでリトリートして、そこでバックパスを使う方がリスクが大きいと私たちは見ている。そういう状況では、完全に相手の出方に左右されるからだ。ゆえに、私たちはよりアグレッシブで攻撃的で、楽観的な監督を選ぶようにしている。とはいえ、それがいつもうまくいくとは限らない。時には大きく驚かされることもあったからね」

──ブンデスリーガは現在、戦術的にリードする存在になりましたか? 以前は長い間、他国に比べてかなり遅れていましたが。

 「その話をするなら、南米のサッカーもテーマにしなければ不当というものだ。ブラジルは、長いこと戦術的には後退してしまっている。しかし、アルゼンチンやチリ、そしてメキシコでは驚くべき発想にたびたび遭遇する。スペインやオランダの代表は、ポゼッションを中心としたスタイルでは勝てなくなっている。レアル・マドリーはこれまで同様に、圧倒的な個人の能力がある選手を生かして成功を収めている。バルセロナはグアルディオラが去ってから、スピードのある選手を買い集めた。本当に興味深いのは、アトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネの仕事だね。彼も最初はあまり良くは見られていなかった。あまり見るには好ましくないものももたらしたからね。しかし、今では彼が成功を収めている姿を見て、人々はそれが必要で良いものだと見なすようになった」

──クロップはどのようなインパクトをイングランドに与えましたか?

 「彼がうまくイングランドにフィットしてうれしいよ。彼の仕事は明らかに広く認知されているようだ。彼のチームに少し足りないのは、安定してコンスタントなプレーをすることだね」

──代表の成長をどう見ていますか?

 「昨年、『キッカー』誌にラルフとハンジ・フリックの対談が掲載されただろう。その中には、EURO2016でドイツ代表に何が足りなかったのか、実に的を射た革新的なことばかりが書いてあったね。私たちドイツ人は、来年のワールドカップで再び優勝するチャンスに恵まれている。このチャンスをEUROではみすみす手放してしまった。リスクを恐れるあまり、自分たちでブレーキをかけてしまっていた。ポゼッションを重視するあまり、無駄にワイドに幅を取り過ぎてしまっていたんだ。とはいえ、最近の試合を見ていると、ドイツサッカー連盟もこの経験から修正を行おうとしているのは見て取れるよ」

──なぜ、あなた自身はプロの監督にならずラングニックのメンター(助言者)としての役割で満足しているのですか?

 「確実な自信を持てなかったからね。いつだったか、プロの監督にはならず橋の建築士として働き続けることを決めた。すでに私には養う家族がいたし、その方がより堅実だと思えたからね。ただ年月が過ぎていくにつれて、ラルフがプロの舞台で完璧に実践してみせているのを見ながら、私と彼が持つアイディアと、それを発展させ続けてきたことの大きさを理解したんだ。その意味では、私がラルフのキャリアをサポートしてきたなんて言うのは、ちょっと言い過ぎだ。それでは、私はエゴイストになってしまう。私はただ『私たちのサッカーはどこまで発展できるだろう?』ということを知りたいだけだったんだからね。ラルフは強烈な野心を持っている。計画が成功し、自分が納得するまでやり続けるだろう、ということが私にはわかっていたんだ」

──それはどこまで発展していくのでしょうか?

 「ラルフに関して言えば、スポーツディレクター“だけ”に専念して、監督としては活動しない方が良いだろう。それがみなにとって最善の道だと思うよ。私はこれまでのように、この“趣味”を続けていくつもりさ。仮に、私がRBライプツィヒの社員じゃなくなったら、おそらく家族が住んでいる家に戻って、そこで同じようなことをするはずだ。お金をもらうことなくね」

■プロフィール
Helmut GROß
ヘルムート・グロース

1946.10.14(71歳) GERMANY
バーデン=ビュルテンベルク州ガイスリンゲン・アン・デア・シュタイゲ出身。全国的には無名ながら、バーデン=ビュルテンベルク州では「戦術のパプスト(法王)」と崇められる指導者。地元のアマチュアクラブやシュツットガルトのユース部門を長らく指導していたが、プロクラブの指揮経験はない。ホッフェンハイムではスカウト、ザルツブルクとRBライプツィヒではストラテジー・アドバイザーとして、盟友ラングニックと文字通り二人三脚で理想のサッカーを目指し続けている。

Interviewer: Oliver Hartmann
Translation: Tatsuro Suzuki
Photos: Bongarts/Getty Images

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Profile

キッカー

1920年創刊。週2回、月曜日と木曜日に発行される。総合スポーツ誌ではあるが誌面の大半をサッカーに割き、1部だけでなく下部リーグまで充実した情報を届ける。