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「位置」と「属性」。カルチョの奥深さを表す2つのポジション名

2017.11.23

知っていると自慢できる!?ポジション名講座#2 イタリア編

ある事象を表現するには言葉が必要だ。ゆえに各国でポジションがどう呼称され、またイメージが共有されているのかにはそれぞれの国のサッカー観が表れる。ここではスペイン、イタリア、ドイツにおける「ポジションの呼び方」とそれにまつわるトピックを紹介する。

 イタリアのポジション呼称は、大きく2つのカテゴリーに分類できる。1つは「位置」、もう1つは「属性」を表す呼称である。

 位置ベースの呼称はシンプルで明快。アタッカンテ(FW)、チェントロカンピスタ(MF)、ディフェンソーレ(DF)の3分類に、チェントラーレ(中央の)、ラテラーレ(インサイドの)、エステルノ(アウトサイドの)という3つの形容詞を組み合わせれば、ピッチ上のどこでプレーしているかが簡単に識別できる。

 CFなら「アタッカンテ・チェントラーレ」、[4-4-2]のサイドMFなら「チェントロカンピスタ・エステルノ」、[4-3-3]のインサイドMFなら「チェントロカンピスタ・ラテラーレ」といった具合だ。スカウティングなどプロの現場でポジションを示す時には、純粋な「位置情報」に基づくこの機械的かつニュートラルな呼称が使われることが多い。

イタリアでの各ポジションの基本的な呼称(位置ベース)

 一方、メディアレベルや日常会話の中では、同じ位置ベースでもかつてイタリアが2度W杯を勝ち獲った1930年代にスタンダードだった[2-3-5]システムに基づく伝統的な呼称が、今なお広く使われている。このあたりはカルチョの歴史と文化の深さの表れである。SBを指す「テルツィーノ」(イタリア語で「3番目の人」)は、[2-3-5]の3列目のDFを指す呼称で、2列目3人の「メディアーノ」(「真ん中の人」)も守備的なMFを指す呼称として今も使われている。

 ではなぜ「テルツィーノ」がCBではなくSBを指すのかと言うと、[2-3-5]はその後、2列目中央のMFが最終ラインに下がって3バックとなり、いわゆるWMに進化していくことになる。それに伴って「テルツィーノ」は外に開き、その間に下がってきた「メディアーノ・チェントラーレ」がCBの起源になった。ただし、英語では今も「センターハーフ」がCBを指すが現代イタリアでは「ディフェンソーレ・チェントラーレ」である。

 同様に、1列目の5人についても「アーラ」は羽根(=ウイング)、「チェントラバンティ」は文字通りCFの直訳、そしてその間に位置する2人の「メッザーラ」(半ウイング=インサイドFW)は、WMでは2列目に下がったためインサイドMFを指す呼称となっている。

 かつては存在しなかった「1.5列目」を表すのが「トレクァルティスタ」(4分の3の人)。これはピッチを4分割した時に後ろから3番目のゾーンで主にプレーする攻撃的MFを指すものだ。

 第2のカテゴリーはプレーヤーの「属性」、つまりどんな機能を担うかによる呼称だ。

 DFなら「ストッパー」や「リベロ」がそのまま使われるし、MFは「レジスタ」(演出家=ゲームメイカー)、「インコントリスタ」(出会う人=守備的MF)、「インクルソーレ」(襲撃者=攻撃参加するMF)に大別される。サイドMFは攻撃的なタイプなら「アーラ」だが、守備できっちり戻るハードワーカーは「トルナンテ」(戻る人)と呼ばれる。

 攻撃的なポジションでは「ファンタジスタ」があまりにも有名だ。「プンタ」(先端=槍の穂先)と呼ばれるFWは、2トップの場合「プリマプンタ」(ファーストトップ)、「セコンダプンタ」(セカンドトップ)に区別されることが多い。

ポジション名講座シリーズ
①「スペイン編」
②「イタリア編」
③「ドイツ編」

Photo: Getty Images

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イタリアポジション

Profile

片野 道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。