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【Miles Jacobson氏インタビュー】サポーターがリサーチャー!?現役選手やコーチも開発協力。『Football Manager』のJリーグ公式ライセンス取得がもたらすもの

2023.10.02

世界で最もリアルなサッカークラブマネジメントゲームとして有名な『Football Manager』が、シリーズ20周年となる今年、ついに日本語対応及びJリーグの実装を発表した。2023年11月7日にNintendo Switch、PlayStation5、PC(Steam/Epic)等、各種プラットフォームで発売される。

欧米では現役のプロサッカー選手や監督も試合のシミュレーションとしてプレーするほどサッカー界で定着しているゲームであり、本格的なプロモーションが開始される日本で、どのように受け入れられるのが注目されている。

日本語対応の経緯、開発の裏側、日本市場の分析、今後の展開……『Football Manager』の開発メーカーであるSports Interactive社でスタジオディレクターを務めるMiles Jacobson(マイルズ・ジェイコブソン)氏に話を聞いた。

『Football Manager』を通じてJリーグを世界にPRできる

――昨日、今秋発売される『Football Manager 2024』でJリーグの実装が発表されました。マイルズさんは幕張メッセ(東京ゲームショウ2023会場)でその瞬間を迎えられたとお聞きしましたが、来場者はどのような反応でしたか?(※取材日:9月22日)

 「ありがたいことに、非常に大きな反響をいただきました。会場では、ファンやメディアからたくさんの質問や意見をいただいて、期待されていることを実感することができました。特に印象に残っているのは、J2やJ3も(ライセンスの)対象となっていることを評価していただいたことです。ライセンス取得にむけて頑張ってきた甲斐がありました。また、SNSでもイメージVTRを公開したのですが、既に(公開後1日で)220万回以上が再生されています」

――「Football Manager 2024」はシリーズ20周年作で、「日本語対応」や「Jリーグの実装」はファンが長年期待していたものです。

 「我々としてもJリーグの公式ライセンス取得は悲願でした。日本語対応に関しても、Jリーグの実装とセットで発表することが、日本に対するリスペクトだと考えていました。19年間お待たせしました!」

――「Football Manager」は情報(データ)量が多いゲームです。日本語対応だけでも、開発に必要なリソースは相当なものになりそうですね。

 「おっしゃる通りで、日本語への翻訳が必要な言葉は約400万字あります。莫大なコストも、時間もかかるので、Jリーグの公式ライセンス取得交渉と並行して、数年間かけて開発しました」

――そこまで投資してでも、日本語対応及びJリーグ実装を進めた理由は何だったのでしょうか?

 「『Football Manager』のプレーヤーは熱心なサッカーファンが多いので、“五大陸チャレンジ”という遊び方をよくします。つまり、大陸ごとに1リーグを選択して、優勝したら別の大陸に移動して……というローテーションで、アジアにおいてJリーグを遊びたいという要望がずっとあったのは理由の1つです」

――事実、Jリーグの実装を発表した後は、SNSで喜びの声が溢れました。

 「そうなんです!SNSでのリアクションは常に気にしていますが、通知が止まらないので寝不足になるくらいです(笑)。普段は改善を希望する声が多いのですが、今回に関しては『ありがとう』という反応が多く、私個人のアカウントにまでリアクションがあるほどです。ファンタステックな時間を過ごしています」

――マイルズさんは、Jリーグにどんな印象を持っていますか?

 「欧州で活躍する日本人選手が増えているので、彼らがプレーしていたJリーグへの関心は高まっています。欧米のサッカーファンは選手一人ひとりの“ストーリー”を調べるのが好きです。例えば、三笘薫選手は大学を卒業してからプロになったことに注目が集まっています。欧米ではそのキャリアはかなり異質なので、『Football Manager』を通じて、そうした日本特有のサッカー文化も知ってもらえるのではないでしょうか」

――おっしゃる通り、ゲームを媒体としたJリーグの世界に対するPRという面でも、今回のライセンス追加は意義があると思います。

 「Jリーグさんとも、欧米や世界での知名度を上げるために、お互いに協力してwin-winの関係になっていきましょうとコミュニケーションしています」

シリーズ20周年を迎える人気サッカークラブマネジメントゲーム『Football Manager』

リサーチャーは世界中に1500人!生の情報をゲームに反映している

――日本のサッカーゲームは「FIFAシリーズ」や「eFootball™シリーズ」のようなプレーヤーが実際に選手を操作するタイプが主流です。『Football Manager』のような、クラブマネジメントゲームの市場ポテンシャルをどのように分析されていますか?

 「もちろん、発売にむけて日本の市場調査は行ってきました。(パブリッシュを担当する)セガ社の『サカつくRTW』チームとは定期的に情報交換を行っています。確かに日本のサッカーゲームはアクション寄りのものが多いですが、逆に言えばマネジメントゲームの市場は空いている。日本のゲームファンは、シミュレーション系ゲームに熱中する人が多いデータもありますし、『Football Manager』の魅力はじっくりと浸透するのではないかと考えています」

――欧米では現役のプロサッカー選手や監督、チーム関係者が楽しむゲームとしても有名です。

 「リアルを追求しているのが、その要因です。実際、ゲーム開発に協力いただいているサッカー関係者は3000人を超えていて、その中には現役の選手、コーチ、スタッフも含まれています。チーム関係者は試合前に『Football Manager』でプレビューを行うのは当たり前のこととして認知されるくらい、このゲームは欧米のサッカー文化に根付いています」

――シミュレーターとして『Football Manager』が使われている訳ですね。

 「イエス!例えば、イギリスではアナリストの職に就きたい場合、冗談ではなく『Football Manager』のプレー経験や成績が問われるケースがあります。我々も普段の開発でコミュニケーションを取る相手は、ゲーム業界というよりも、サッカー関係者の方が多い。『footballista』はサッカー業界関係者に人気があるメディアだと聞いています。非常に専門性の高いコンテンツを提供することで、読者もサッカーを学ぶことができる。『Football Manager』も同じです。間違った情報は搭載できないので、日々研究、分析を行っています」

戦術を細かく設定できるので、実際の試合のシミュレーターとしても利用されている

――サッカー関係者からのフィードバックで重視しているポイントは何ですか?

 「開発初期、当時リバプールに所属していたレイ・ホートン選手にゲームの試合映像を見てもらったことがありました。彼は『スローインの時、この選手はこんな動きはしないよ』と言ったので、我々はそれをゲームに反映しました。これが開発の原点です。とにかく細かいフィードバックを集めて、反映させるのが開発のやり方です」

リバプールやアストン・ヴィラなどで活躍し、アイルランド代表としてもプレーしたレイ・ホートン

――サッカーのデータを取得している会社と連携して、システマチックに選手の動きを再現しているのかと思っていました。

 「ノー!チームの練習場を見学することもあれば、コーチ陣の会議に参加することもあります。リアルな現場の空気感や会話が重要です。『Football Managerを良くするためなら』と、サッカー業界の皆さんは情報を提供してくれます。そうした生の情報をゲームに反映しているのです』

――各国に情報を収集するスタッフを配置しているのですか?

 「現時点で約1500人のリサーチャーが世界中に散らばって、各国の選手情報を収集しています。今後は日本でもJリーグ各クラブに1人ずつリサーチャーを任命して、主力選手だけではなく、U-18の選手も含めて情報を集めたい。ビッグクラブにおいては複数人にお願いする可能性もありますし、クラブのことをよく知っているサポーターにリサーチャーをお願いすることも考えています。『footballista』の読者の皆さんは、ストイックにサッカーを学んでいる方が多いと思いますので、関心がある方はSports Interactive社にご連絡いただけると嬉しいです」

――確かに『Football Manager』と『footballista』の親和性は高いと思います。我々も様々な切り口でサッカーを考察しているメディアですが、リサーチャーは選手のどのような部分に着目しているのですか?

 「ゲームでは選手の能力を約250程度の項目で数値化しています。パス、ドリブル、フィジカルの強さはもちろん、メンタルに関する項目もあります。選手の能力値は常に正確であるべきだと考えているので、常に情報をアップデートして、日々更新することを行っています」

ゲーム内では選手の能力項目は細分化されて表示される

リアルなクラブ強化の体験ができる

――『Football Manager』の魅力は多岐に渡ると思いますが、日本で一番支持されるのはどういった要素だと予想しますか?

 「おそらく、移籍市場の部分になると思います。公式ライセンスの取得によって、Jリーグクラブに所属する将来有望な若手選手を育てて、欧州クラブに移籍させることが今作から可能になりました。プレーヤーには1シーズンだけ強いチームをつくるのではなく、長期的な目線でクラブを強化することが求められるので、リアルなクラブ強化の体験ができると思います」

――『Football Manager』の普及によって、日本国内のサッカーリテラシーが上がるかもしれませんね。

 「その通り!我々とプレーヤーが協力しあって、知識や知見を集めてゲームの魅力を高めることは、日本のサッカー界の発展に貢献できることにも繋がると考えています」

――今日は貴重なお時間ありがとうございました。マイルズさんのサッカーに対する情熱に圧倒されました。『Football Manager 2024』の発売を楽しみにしています。

 「サッカーについて考えている時が一番自分らしくいられます。好きというよりも、信仰レベルでしょう(笑)。サッカーで泣き、笑い、怒り……生活のすべてがサッカーと繋がっています。選手としては才能が開花することはありませんでしたが、違う形でサッカーに携わり続けたいと考え、今に至ります。そういう意味では『Football Manager』は自分のために開発しているとも言えますし、それを世界中の人が楽しんでくれているのは、この上ない幸せなことです。今日は楽しいインタビューをありがとうございました。Thank you so much!」

Photos:Getty Images

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Profile

玉利 剛一

1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。その後、筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。2019年よりフットボリスタ編集部所属。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆を行っている。サポーター目線をコンセプトとしたブログ「ロスタイムは7分です。」も運営。ツイッターID:@7additinaltime

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