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代表戦を線で振り返る難しさ。マッチレビューの差は「過去と未来を行き来できるか」

2023.02.16

『森保JAPAN戦術レポート』発売記念企画#1

2月9日発売の『森保JAPAN戦術レポート 大国撃破へのシナリオとベスト8の壁に挑んだ記録』は、大ヒット作『アナリシス・アイ』の著者・らいかーると氏がアジア最終予選からカタールW杯本大会までの日本代表全試合を徹底分析しながら、森保ジャパン進化の軌跡と日本サッカーの現在地をたどっていく一冊だ。その刊行を記念して同じくマッチレビュアーのせこ氏に書評をお願いしてみた。

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 らいかーるとさん、2冊目の書籍出版おめでとうございます。マッチレビュー界にいる一員として、試合分析の祖とも言える存在のらいかーるとさんがガンガン書籍を出しているのはとてもうれしく思います。

 先日、1冊目の著書である『アナリシス・アイ』の重版記念として、らいかーるとさんが読者からもらった質問に答える記事を書いていらっしゃいました。その中で「サッカーの観る目を養うためにはどうするのがよいでしょうか」という質問に対して、比較対象として「せこさんのように同じ試合をアウトプットしている人は標的にしやすい」と答える形で名前を出していただきました。

 正直な感想を言うと、「標的」って物騒過ぎませんか。「討ってやろう!」みたいなマインドを誘発し過ぎじゃないですか。もっと「基準」とか優しい言葉あったと思います。そんな複雑な気持ちもありましたが、もちろん名前を出してもらったことはうれしかったです。

 発信を続けていくと、このようにたまに身が引き締まるような思いをする出来事に遭遇します。投稿するということ自体には回数を重ねたり、頻度を高めることである程度恐怖心が麻痺する部分があります。これは良い部分も悪い部分もあると思っているので、こうしてたまに緊張が走るような出来事が起きるのは幸運だと思うようにしています。また、すぐに麻痺してしまいますけども。

「潜水型」と「ハイライト型」でたどり着いた仮説

 編集部から「書評の書き方は自由でいい」と言われたので本題に入る前に少し自分のマッチレビューの向き合い方を紹介させてください。自分のことをもし「標的」と考えてくれる方がいるのならば、多少のご参考になるかもしれません。

 自分の試合分析記事には大きく分けて2つの種類があります。1つは「潜水型」です。これは アーセナルや川崎フロンターレのような自分の好きなチームだったり、W杯やCLの決勝など極端に注目度が高い試合において採用しているやり方です。

 この潜水型の記事の書き方の大きな流れは以下の通りです。

・メモを取りながら(時には配信で喋りながら)リアルタイムで試合を見る。
・レビュー記事のアウトラインを書く(20~30分)。
・試合を見返しながらアウトラインの肉づけ、または構成の変更を行う。
・一気に記事を書く(90~120分で6000字くらいになることが多いです)。

 なので2回視聴する試合の時間、最低180分に加えて110~150分くらいかかるイメージでしょうか。

 もう1つは「ハイライト型」です。これは、贔屓以外のプレミアリーグやJリーグ、その他のリーグの試合をチェックする時に採用している形です。こちらのやり方は非常にシンプルです。試合を見てメモをとり、それをもとに書きながら構成を組んでいく形です。分量は大体1000~2000字になることが多く、試合を見返さない一発勝負となります。

 ハイライト型で最近大事にしていることはスピード感です。試合が終わったらすぐに上げるようにしています(あまりにも深夜の場合は公開を翌日にすることもありますが)。ハーフタイムに前半の分量を書いてしまえば、試合後の15分くらいでアップすることが可能です。

 スピード感を大事にしている理由は大きく分けて2つあります。1つは単純に試合直後が最も見ている側の関心が高いからです。「鉄は熱いうちに打て」はマッチレビュー界の鉄則とも言えるでしょう。試合直後、なるべく早く記事をあげたほうがたくさん読まれます。ちなみにこの試合直後に書き上げるというスタンスが確立されたのは毎日のように試合がガンガン開催されたカタールW杯です。

……

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森保JAPAN戦術レポート

Profile

せこ

野球部だった高校時代の2006年、ドイツW杯をきっかけにサッカーにハマる。たまたま目についたアンリがきっかけでそのままアーセナルファンに。その後、川崎フロンターレサポーターの友人の誘いがきっかけで、2012年前後からJリーグも見るように。2018年より趣味でアーセナル、川崎フロンターレを中心にJリーグと欧州サッカーのマッチレビューを書く。サッカーと同じくらい乃木坂46を愛している。

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