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守田英正は動かない。「止める蹴る」を最大化する「寄るタイミングの法則」とは?

2023.02.02

流経大卒業後に入団した川崎フロンターレの攻守を中盤の底から支え、在籍3年間で5つのタイトル獲得に貢献。2021年より活躍の場をポルトガルに移し、昨夏サンタクララから加入した強豪スポルティングでも評価を高めている守田英正。カタールW杯での奮闘も記憶に新しい日本代表MFの「寄るタイミング」を、技術論でお馴染みのfootballhack氏が解説する。

 カタールW杯では3試合に出場し、日本の中盤の要として活躍した守田英正選手。高い予測能力を生かしたボール奪取からパスをさばいてチームを落ち着ける一連のプレーには、類稀な知性を感じさせる。ビルドアップの局面でも中心を担い、吉田麻也選手らとともに日本に流れを引き寄せる時間帯を作り出した彼は、W杯という世界との真剣勝負の場で強豪国相手にボールを保持できるかという長年の課題に突破口を開いた一人として、代表チームにおける存在感をいっそう際立たせている。

 今回はそんな守田選手のビルドアップ時のボールを引き出す「タイミング」について解説していく。川崎フロンターレ時代に磨いた「止める蹴る」の技術を最大限生かすための隠れた要素だ。ボランチの役割としてビルドアップではCBからパスを受け取り、奪われずに展開することが重要である。相手のプレスを自分に引きつけてからボールを離すことで、スペースを得られる周りの選手はプレーしやすくなりスムーズな前進へと繋がっていく。そこでどのように守田選手はCBからパスを引き出しているのだろうか。

“動き過ぎ”ではプレッシングの鉄則から抜け出せない

 まず比較例として、ボランチが陥りがちな間違いを説明しよう。

 図1のようにCBがボールを持っていて攻撃側5人対守備側5人の数的同数でビルドアップしているとする。

 青チームが4バックでボールを保持している中、よく見られるのはボランチ(V)がボールに触れたいからパスを受けに行く、あるいはすぐにパスコースを作らなくてはならないという固定観念に縛られ、ボールに寄ってしまう動きだ(図2)。

 しかし、ボランチのマーカーはそのままついていけばいいだけで、むしろ新たな敵を引き連れてくるため、かえって出し手の邪魔になる。結果として相手を前がかりにさせるスイッチを入れてしまい、チーム全体がプレス網の餌食になってしまうことも少なくない(図3)。俗に言う“ボランチが動き過ぎる”問題の典型例だ。

 仮にパスを受けられずにボールをサイドに展開したとしても、この弊害は残る。左右へのサポートが間に合わず、局面的に味方を数的不利の状況に追い込んでしまうからだ(図4)。

 もう1つよく目にするのは、味方を使って「3人目」としてパスをもらう方法。……

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守田英正

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footballhack

社会人サッカーと独自の観戦術を掛け合わせて、グラスルーツレベルの選手や指導者に向けて技術論や戦術論を発信しているブログ「footballhack.jp」の管理人。自著に『サッカー ドリブル 懐理論』『4-4-2 ゾーンディフェンス セオリー編』『4-4-2 ゾーンディフェンス トレーニング編』『8人制サッカーの戦術』がある。すべてKindle版で配信中。

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