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W杯明け初戦で感じた育成型クラブAZと菅原由勢の「なにくそ魂」

2023.01.11

オランダの強豪AZでレギュラーとして活躍しながら、カタールW杯の最終メンバーに選出されなかった菅原由勢。「スペイン、ドイツに勝ったのを見て刺激になりました」。そう語る22歳はW杯明け初戦のフィテッセ戦にどう臨んだのか、中田徹氏がレポートする。

「育成」の要になるリザーブチームの役割

 1月7日、AZ対フィテッセ戦のキックオフ直前、AZのMFラインダースがAZトップチームでの公式戦100試合出場の表彰を受けた。彼はAZリザーブチームの一員として92試合もプレーした経験がある(加えてPECズウォレ、RKCで合わせて9試合プレーしている)。彼がブレイクしたのは昨季のことだったが、それまでの過程としてたくさんの出場機会をオランダ2部リーグで得ていた。今、ラインダースはオランダ代表入りを狙っている。

 その前日。オランダ2部リーグ、AZリザーブチーム対ヘラクレスの終盤だった。1点を追うAZリザーブチームがセットプレーからCBフースがヘッドで劇的な同点弾を決めると、隣に座っていたカップルの一人が私に向かって叫んだ。

 「私の息子が決めたんだ!」

 1部リーグ復帰を目指し首位をひた走るヘラクレスに対し、21歳以下の選手で固めたAZリザーブチームは押し込まれながらもパスコースをしっかり作ってボールを繋いで対抗し、0-0のままゲームを進めていった。後半アディショナルタイムにパワープレーからヘラクレスに1点を許し万事休すと思われたが、AZリザーブチームは戦う姿勢を最後まで崩さず勝ち点1をもぎ取った。今、AZリザーブチームは20チーム中8位と健闘している。

 かつて、オランダ2部リーグから名選手が生まれることは少なかったが、リザーブチームが参戦するようになってから、このリーグは一流への登竜門になった。カタールW杯に出場したオランダ代表選手たちの多くがオランダ2部リーグの経験者だ。カテゴリーが上の相手と真剣勝負を戦って技を磨くことは、リザーブチームの選手たちにとって得にしかならない。

 「AZはファミリークラブである」という側面をリザーブチームから伺い知ることができる。ヘラクレス戦の後半途中から、メックス・メールディンクというストライカーがピッチに入ってきた。その名前、その顔に見覚えあり! 2000年代前半のAZの黄金期に右ウイングやMFとして活躍したマルタイン・メールディンクの息子だった。メックスも父同様、武闘派のようで、ファウルに怒って仕返ししレッドカードをもらってしまった。父とは違って左利きで、しかもサッカーセンスは父より上と見た。試合後、マルタインとハウバーツTDが嬉しそうに談笑する姿が印象的だった。……

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AZエールディビジ菅原由勢

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中田 徹

メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。