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失敗と向き合い、這い上がってきた男。湘南ベルマーレ・舘幸希は残留争いの救世主たりえるか

2022.09.30

若き知将・山口智に率いられた湘南ベルマーレの2022年シーズンも、残されたのはリーグ戦の5試合になった。残留争いの渦中に身を置く彼らにとって、点を取られないことは勝点を得る上での絶対条件。では、その実現へのキーマンは誰になるのか。ベルマーレの今を紡ぎ続けてきている隈元大吾は、この男を推す。プロ3年目。4番を背負う舘幸希の言葉に、耳を傾けよう。

改めて見つめ直した自身のストロングポイント

 忸怩たる想いが舘幸希の口をつく。

 「チームとして体を張って守り抜いていたし、みんなの気迫も感じていた。だからこそ、水を差すようなプレーをしてしまったことは非常に申し訳ないですし、ああいうミスはなくさなければいけないと改めて感じています」

 台風の影響で延期されていた第25節、対する横浜F・マリノスが後半まもなく手にした先制点は、自身のミスに起因していた。トラップミスをアンデルソン・ロペスにさらわれ、すかさず裏へと抜け出した西村拓真に決められた。湘南ベルマーレはその後も失点を重ね、0-3で敗れたのだった。

J1第25節、横浜FM戦のハイライト動画

 2020年、日本大学から湘南に加入し、対人の強さを武器に1年目から出場を重ね、昨季は29試合に出場した。しかし、プロ3年目となる今季は順調に滑り出したわけではなかった。柏レイソルとの開幕戦こそフル出場したものの、以降スタメンの機会は限られ、サブやバックアップに回ることも少なくなかった。

 理由は誰より自身が分かっている。

 「ビルドアップで相手をどう剥がしていこうかとか、どうやって相手が寄せてくるかとか、守備よりも攻撃面を意識していました。自分は攻撃もできるというところを見せなければいけないと思い、頭でっかちになって、守備が疎かになっていた。それでうまくプレーできなかった時に、メンタル的に落ちてしまう部分がありました」

 0-2で敗れた第16節・セレッソ大阪戦の記憶が苦い。自陣で味方へ送ったパスが弱く、インターセプトされて相手に先制点を奪われた。

 「ボールを繋ごう、後ろで大事にしようと変に肩に力が入ってしまいました。立ち上がりに失点し、それでチームのバランスも崩れてしまった」

 自分のストロングはそこではない――。本来の特長を見直すと、翌節のFC東京戦ではアダイウトンや永井謙佑らスピードやパワーに長けるアタッカーの突破を食い止めるなど、舘は持ち前の1対1の強さを発揮し、2-0の無失点勝利に貢献した。リーグ戦に限れば、自身が先発して今季初めて勝利を掴んだ試合でもあった。

「いい守備をした時にスタジアムが沸いたこともすごくうれしかった」

 くだんの一戦を通して気付いたことがあったという。

 「プロとなって2年余りやってきた中で、いいパスを出したことや、いいシュートに持ち込んだことはあまり覚えていない。でも、スライディングしてボールを奪ったり、相手のドリブルに対して奪い切ったりしたプレーはよく覚えている。いい守備をした時に自分は最も喜びを感じるんだとあの時思ったし、攻撃力を備える選手が相手だったからこそ気付くことができた。いい守備をした時にスタジアムが沸いたこともすごくうれしかったです。サポーターの皆さんが求めているのは自分のよさなんだと思いました」

J1第17節、FC東京戦での舘(Photo: Takahiro Fujii)

 おもしろいもので、いい守備を意識して試合に入ると、ボールを持った際もスムーズにプレーできたという。舘はその後も高いパフォーマンスを維持し、スタメンを張り続けた。

 とりわけ第26節の鹿島アントラーズ戦が印象深い。湘南はその前の北海道コンサドーレ札幌戦で守備の強度を表せず、1-5の大敗を喫していた。その反省を踏まえ、鹿島戦では序盤から攻撃的なディフェンスをチームとして遂行し、あわせてゴールへの推進力を傾けた。1-1の結果に悔しさが募ったのは、たとえば前半をほぼ掌握したように、自分たちらしい戦いを果たしたがゆえだった。

 かようにあるべき姿勢をピッチに映した中で、舘もまた1対1を封じ、幾度もピンチの芽を摘むなど出色のパフォーマンスを見せた。だが、それでもほろ苦い記憶が先に立つのは、失点シーンに理由があった。ボールを保持するエヴェラウドに強く寄せて突破を阻むも、背後を取った樋口雄太にボールが渡り、折り返しをエヴェラウドに仕留められた。

 「自分のよさを出せたとはいえ、ああいうところをもっと突き詰めなければいけない」

 舘はまっすぐ振り返る。……

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湘南ベルマーレ舘幸希

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隈元 大吾