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【豊田陽平インタビュー】「ピッチに立ってチームに貢献したい、サッカーを純粋に楽しみたい」――栃木SC完全移籍の真相

2021.10.26

今夏、Jリーグの移籍市場で豊田陽平の栃木SC完全移籍は大きな話題を呼んだ。12シーズン在籍したサガン鳥栖から離れる決意の背景には何があったのか。変化するチーム内の立場、新天地での役割……移籍から約4カ月過ぎ、現在の率直な想いを本人に聞いた。

若い頃に思い描いたものと違ってきた

――サガン鳥栖の顔だった豊田選手の電撃移籍は今夏、非常に話題になりました。実際にオファーが届いた時は、どんな思いだったのでしょうか?

 「サッカー界にとっては電撃だったのかもしれないですけど、自分の感覚ではそうではなくて。サッカー選手ならピッチ上で自分を表現したいという想いが少なからずあると思うんですけど、僕自身は今年、サガン鳥栖で思うような出番を得られていなかった。でも、自分の感覚では、まだまだできると。もちろん11年も在籍したクラブを離れるというのは苦渋の決断でした。クラブへの想いは当然あったし、背負ってきたという自負もあった。サガン鳥栖に残ることがキャリアの美しい終え方だと思う方もいるでしょうし、ショックを受けた方もいたと思います。でも、移籍しても、僕がサガン鳥栖というクラブに残してきたものは変わらない。この先のサッカー人生は、また自分自身で切り開いていかなければならないという想いが強かったんです」

――今のお話だけでも相当悩まれたことが伝わってきました。これまで、サガン鳥栖に骨を埋めようと思っていた時期もあったんですか?

 「もちろん、そう考えていた時期はありました。それは隠しようのない事実です。そもそも僕は20代半ばの頃、まだやれるっていうくらいで引退しよう、と考えていて。カテゴリーを下げて、しがみつくようにして現役を続けることが、自分の中で美しいとは思えなかったんです。そういう意味では、逆のことをしているんですけど、その頃には考えられなかったJ1で100ゴールという新たな目標が生まれたことが大きくて。手の届かない目標ではない、成し遂げられるなら成し遂げたい、という思いが芽生えてきた。それで、キャリアの終わらせ方が若い頃に思い描いたものと違ってきたのかな、と思います」

――現在98ゴールですから、十分実現できる目標だと思います。ただ、J1で100ゴールという新たな目標に対して、J2の栃木SCへの移籍は矛盾しているようにも感じます。

 「それはですね……留まれば手が届かないと肌感覚でわかったので。100ゴールという目標は頭の片隅に置いて、まずはもう一度、プロサッカー選手としてサッカーを純粋に楽しみたい、ピッチでベストを尽くして戦う緊張感やプレッシャーを味わいたいと思ったんです。それができなければ、目標に近づくことはできないですから。サガン鳥栖はクラブとして若返りを図っていて、いつまでも豊田陽平というわけにはいかないというか、言葉として言われたわけでないんですけど、感じてしまう部分があったんです。僕があのクラブでそれだけ大きなものを背負ってきた証でもあるので、ポジティブでもあり、ネガティブでもあり。クラブも僕に対する扱いが難しかったと思うんですね。残したいけれども、頼ってばかりはいられないという。ただ、僕自身はまだ体が動くので、プレーしたいという意思は伝えていました。でも、いよいよだな、という状況になってきた。先輩方にも相談したかったんですけど、僕とサガン鳥栖というクラブの関係性は特殊だったので、参考になるケースがなかった。今後こういうことがあれば、僕のところに話を聞きに来てもらいたいくらいですね」

――昨年から今年にかけて、林大地選手(現シント=トロイデンVV)や山下敬大選手といった若いストライカーが台頭してきました。彼らにアドバイスを送ったり、背中を見せたりする一方で、負けないぞ、俺もまだやれるぞ、という思いも?……

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栃木SC豊田陽平

Profile

飯尾 篤史

大学卒業後、編集プロダクションを経て、『週刊サッカーダイジェスト』の編集記者に。2012年からフリーランスに転身し、W杯やオリンピックをはじめ、国内外のサッカーシーンを中心に精力的な取材活動を続けている。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』などがある。