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「Jリーグプレビューショー」がリニューアル! 番組新MC佐藤寿人が語るメディア側からの伝え方

2021.08.08

毎節のJリーグ注目カードを中心に、監督・選手のインタビューや試合の見どころを紹介するDAZNの人気番組「Jリーグプレビューショー」。2021年8月6日放送回からMCに佐藤寿人氏と原大悟氏を迎え、スタジオ番組としてリニューアルされた。普段からメディアでサッカー情報を見るのが好きだという佐藤氏がこの番組で伝えたいこととは。MCとして初の番組収録を終えた直後、本人に話を聞いた。

多角的にJリーグを伝えたい

――番組収録、お疲れ様でした。MCとしては初出演となる「Jリーグプレビューショー」はいかがでしたか?

 「すごく楽しくやれました。MCと言っても、進行の部分は(原)大悟くんが担ってくれたので、僕はサッカーの話に集中できました。ただ、話を振ってもらうだけではなく、大悟くんやゲストの方ともっとディスカッションする時間を増やせばよかったと反省しています」

――確かにプレビューは話を広げやすいので、ディスカッションは番組と相性が良さそうですね。

 「レビューは起きた事象を解説することが中心です。一方でプレビューは多少語弊があるかもしれないですけど、“なんでもOK”で、どんなことでも言えると思っています。今後は視聴者からの意見も紹介しつつ、様々なゲストの方と『この選手を使った方がいい』とか『こういう展開になったらシステムを変更しよう』といった意見交換をしたいですね。正解がないテーマほど、議論が活発化して面白くなる気がします」

――先日ゲストとして出演されていた「Atsuto Uchida’s FOOTBALL TIME」では“多角的”にサッカーを伝えたいと話されていました。

 「現役時代はアナリストが分析したデータや、チームの戦術など試合に勝つための情報を重視してサッカーを見ていましたけど、ファン・サポーターは選手やチームに自分の想いを乗せて応援する形で見ますよね。サッカーの解釈は人それぞれ。誰しもフラットにサッカーを語ることは難しいので、いろいろな方の意見を聞くことが大切だと考えています」

――立場によってサッカーの捉え方、発信の仕方が変わる中で、寿人さんは引退後のメディア出演において自身の変化を感じる部分はありますか?

 「そこは解説者や番組MCだからといって難しく考え過ぎず、ストレートに選手の特徴やキャリアから試合の見どころを考えるようにしています。現役の頃からJリーガーの出身高校や大学を調べるのが好きだったんですよ。チームメイトからも『なんでそんなことまで知っているんですか』とよく言われました(笑)。選手がどういう過程で成長していくのかに興味があります。まずは自分が楽しまないと視聴者の方にも魅力を伝えられないので」

――寿人さんが “点”ではなく“線”でサッカーを解説されることが多い理由が少しわかった気がします。

 「やっぱり知ることによって見方が変わりますからね。今回の収録ではこの中断期間中に移籍した選手を紹介しましたが、みながそれぞれに違う想いをもって決断しています。僕も昨年まで現役だったので選手の気持ちはよく分かりますし、彼らの姿や言葉から“プロの生き様”を知って欲しい。選手にもチームにも、それぞれストーリーがあります。そうした選手の素顔や背景の部分も含めて、多角的にJリーグを伝えたいですね」

――現役時代には日本プロサッカー選手会の会長も経験され、先日はJリーグ選手OB会の会長にも就任されました。そうした経験もふまえつつ、オフ・ザ・ピッチのテーマを番組で扱いたい意向はありますか?

 「まだ先のことは決まっていませんが、村井(満)さん(Jリーグチェアマン)には話を聞いてみたいですね。(選手会会長時に)選手の立場として日本サッカー界にどのように貢献できるのかという話し合いを重ねてきましたし、あらためて番組の企画として話を伺うことで、普段はオフ・ザ・ピッチの情報を見ていない人にも届けることができるかもしれない。見えにくい部分、分かりにくい部分の情報も噛み砕いて伝えていくことで、日本にサッカー文化が根付いていくのではないかなと感じています」

――多くのJリーグファンが加入するDAZNの番組でそうした情報が発信されることは、とても意義のあることですね。

 「Jリーグは(1993年の)開幕からもうすぐ30年になりますが、選手や監督、リーグ・クラブ関係者だけではなく、メディアやスポンサー、ファン・サポーター……Jリーグに携わるすべての人たちの貢献があってこそ継続できていると思うので。Jリーグをより発展させていくためにも、自分の役割をしっかり果たしていきたいですね」

現役引退直後だからこそ発することのできる選手目線のコメントも魅力

Jリーグ後半戦の注目ポイント

――Jリーグもいよいよ後半戦に突入します。首位・川崎フロンターレを追いかける一番手として注目しているクラブはありますか?

 「横浜F・マリノスですね。宮市(亮)選手や杉本(健勇)選手ら前線に新戦力を補強しましたし、個人的には移籍の噂もあった中で残留を決断した仲川(輝人)選手に期待しています。スピードもシュートテクニックもある選手なので、ケヴィン・マスカット新監督体制になって、また歯車が嚙み合えば2019年にリーグMVPを獲った時のような活躍ができると思います」

――寿人さんも現役時代に移籍か残留かを迷われた経験はあると思いますが、決断後はモチベーションに変化が生まれるものですか?

 「全然違いますね。『自分の決断が正しかったのだろうか……』という懐疑的な気持ちを払拭するためにも、結果を出すことへの意欲は増します。チームメイトも残留した理由を理解してくれるので、得点を取らせようとパスをくれたり、ファン・サポーターもいつも以上に声援を送ってくれたり、周りからのサポートも力になりました」

――選手移籍という点では、首位のフロンターレは田中碧選手がフォルトゥナ・デュッセルドルフへの移籍が正式決定、三笘薫選手も欧州クラブへの移籍濃厚という報道があります。

 「フロンターレは誰が出場しても高いクオリティがキープできることをAFCチャンピオンズリーグやリーグ戦で証明済です。Jリーグではチーム力が1つ抜けている印象はありますね。今回のプレビューショーにご出演いただいた鬼木(達)監督が、インタビューで『(主力選手が移籍しても)次の選手が出てくる』と発言されていましたが、それは勝手に選手が成長するのではなく、指導による側面も大きいと思います。成長著しい橘田(健人)選手や中堅の長谷川(竜也)選手など、チーム内の競争も後半戦の楽しみですね」

――DAZNの番組スタッフさんにお聞きしたところによると、鬼木監督へのインタビュー時にはすごく緊張されていたとか。

 「現役時代の鬼木さんはとても怖い存在だったので(笑)。僕がルーキーイヤーの時に対戦して、何度も激しくボールを奪い取られた記憶が残っていて。けど、今回のインタビューでは笑顔で対応していただけてき救われました」

――セカンドキャリアで指導者を目指されている寿人さんにとって、Jリーグ各クラブの監督にインタビューする機会は刺激になりますか?

 「そうですね。今回番組にコメントを送っていただいたミシャさん(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)や(サンフレッチェ)広島時代にお世話になった小野剛さんは世界のスタンダードをそのまま選手に伝えるのではなく、受け取る側が解釈しやすいように言語化して伝えるのが非常に上手だったことを覚えています。そういうスキルは今後、番組を通じて様々な指導者の方から吸収したいですね」

――番組内では求められた短い尺で端的に分かりやすいコメントを発せられていましたし、サッカーを言語化されるスキルはもう十分にお持ちだと思います。

 「いえいえ、そんなことないです。楽しいと喋り過ぎてしまうので(笑)。現役時代はたくさん話せばメディアの方がうまく編集して発信してくれましたが、今はメディア側の人間として、自分が発する言葉がダイレクトに相手に届くので、頭を整理してから発言するように意識しています」

――今後の『Jリーグプレビューショー』でも寿人さんのコメントやインタビューを楽しみにしています。最後に番組視聴者や記事の読者にメッセージをいただけますか?

「この番組は視聴者のみなさんと一緒に作っていくものだと思っています。取り上げてほしいテーマなど希望があれば、気軽に番組宛てにメッセージを送ってもらえればうれしいです。そういう意見の積み重ねがJリーグに多くの人を巻き込む原動力となるので、よろしくお願いします」

Hisato SATO
佐藤寿人

1982年生まれ、埼玉県出身。中学1年生からジェフユナイテッド市原ジュニアユース(現ジェフユナイテッド市原・千葉ジュニアユース)でプレー。2000年にトップチームに昇格し、デビュー。セレッソ大阪、ベガルタ仙台、サンフレッチェ広島、名古屋グランパス、ジェフユナイテッド市原・千葉でプレー。2012年にサンフレッチェ広島をリーグ初優勝へ導く原動力となり、その年のJリーグMVPとJリーグ得点王を獲得。J1リーグ通算得点数161は歴代2位。 2020シーズン限りでの現役引退を発表した。3男の父。

Jリーグプレビューショー

毎節の注目カードを中心に監督・選手のインタビューや各試合の見どころをコンパクトに収めたプレビュー番組。週末の試合に向けた貴重な最新情報や、データを網羅。毎週金曜日、DAZNで配信中。MC:佐藤寿人、原大悟。8月6日配信の初回ゲストは、サッカージャーナリストの北條聡氏。

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Profile

玉利 剛一

1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。その後、筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。2019年よりフットボリスタ編集部所属。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆を行っている。サポーター目線をコンセプトとしたブログ「ロスタイムは7分です。」も運営。ツイッターID:@7additinaltime

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