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水戸が下した決断、樹森体制の総括。森直樹監督に託された「結果」と「マンパワー」

2026.11.05

水戸ホーリーホック昇竜伝#16

J2の中でも少ないクラブ予算ながら一歩一歩積み上げてきた水戸ホーリーホックは、エンブレムにも刻まれている水戸藩の家紋「三つ葉葵」を囲む竜のようにJ1の舞台へたどり着いた今も、さらに高みを見据えている。困難な挑戦に立ち向かうピッチ内外の舞台裏を、クラブを愛する番記者・佐藤拓也が描き出す。

第16回は、J1初挑戦のシーズン途中で樹森大介監督の解任に踏み切った水戸ホーリーホックの決断を振り返る。J1仕様への進化を目指してハイプレスとポゼッションに取り組んだチームは、なぜ失速したのか。スタイルを貫くことと、勝ち点を手にすること。その両立が問われる中で、クラブが後任に選んだのは、J1昇格を成し遂げた森直樹監督だった。再びタクトを託された指揮官が掲げる「マンパワー」とは何か。水戸がJ1残留に向けて踏み出した、新たな一歩を追う。

 10月26日、樹森大介監督の解任が発表された。

 第12節終了時点で2勝3分7敗。第7節から連敗を喫し、悪い流れを断ち切れないまま第12節FC東京戦では0-6の大敗を喫すと、「チーム状況が苦しい中、この状況を打破するために何かを変えないといけなかった」(小島耕社長)とクラブは重い決断を下すこととなった。そして、後任には25年に水戸をJ1昇格に導いた森直樹監督の復帰が発表された。

J1仕様への進化を目指して。樹森体制が「全振り」したハイプレスとポゼッション

 樹森前監督は25年シーズン後に退任した森監督の後を継いで、クラブ初のJ1の舞台での指揮を託された。12年から22年まで水戸ユース監督を務めて、23年からトップチームのコーチに就任。そして、25年には当時J1だった新潟の監督を務めた。第20節終了後に解任されることとなったが、それでもJ1初挑戦の水戸にとって、樹森前監督のJ1での指揮経験は大きなものだった。その経験を還元しながらチーム作りは行われていった。

 百年構想リーグにおいて、樹森前監督が徹底したのは「ハイプレス」と「ポゼッション」。それこそ、J1で監督を務めて感じた、J2との大きな違いであった。J2では、自陣でブロックを組んで守備を固めれば、相手の質に助けられて守り切ることはできたが、J1では「受け身になったら自由にプレーされてしまう」という体験をした樹森前監督は積極的にボールを奪いに行く意識と高い強度を選手たちに求めた。

 また、「J1では守備に回る時間が長くなると厳しくなる。自分たちでボールを持つ時間も増やさないといけない」とポゼッションスタイルにも取り入れ、チームを「J1仕様」へと進化させるために、百年構想リーグではその2つのスタイルに「全振りをした」(樹森監督)戦いを繰り広げた。

 その結果、百年構想リーグ開幕戦では東京Vに1-3の完敗を喫したものの、それ以降のリーグ前半戦はどのチームが相手でも自分たちのスタイルを発揮することができ、第9節鹿島との茨城ダービーでPK戦勝利を収めると、その後、リーグ初の3連勝を挙げて自信をつかんでいった。しかし、リーグ後半戦に入ると、戦い方を研究されたことに加えて、5試合で退場者を出したことやケガ人が続出したこともあり、スタイルを出し切れない試合が続き、第15節鹿島戦から6連敗を喫して、最終的に18位という結果で終えた。

 「難しいシーズンになるということを前提条件としてスタートしているので、もちろん結果にもこだわりましたけど、積み上げということをすごく意識して戦ってきました。結果に反映できなかったことに関して反省はあります。ただ、自分たちのスタイルを築いていこうということを僕自身もそうですし、選手たちも1つのミスでやめるのではなく、ミスを繰り返しながらも自分たちのスタイルを築いて積み上げてきたつもりです」

 樹森監督は降格のない特別大会を活用して、新たなスタイルを浸透させていった。

 そして、J2を制した堅守と百年構想リーグで構築した「ハイプレス」を融合させ、さらにビルドアップという武器も加えて、初のJ1リーグに挑んだ。

研究された強みと相次ぐ離脱。百年構想リーグと同じ失速

 開幕戦こそ柏に1-3の敗戦を喫したが、ホームでG大阪と1-1のドローで終えた第2節以降調子を上げていき、第3節京都戦で初勝利を挙げると、第5節ではエース渡邉新太の4ゴールにより、4-2で鹿島を撃破。茨城ダービーを制した。

 だが、そこから百年構想リーグと同じ道をたどることとなる。

……

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Profile

佐藤 拓也

1977年生まれ。神奈川県出身茨城県在住のフリーライター。04年から水戸ホーリーホックを取材し続けている。『エル・ゴラッソ』で水戸を担当し、有料webサイト『デイリーホーリーホック』でメインライターを務める。

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