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現役引退を発表した小林悠のシュートはなぜ止められない?川崎Fの元同僚で現アシスタントGKコーチ・安藤駿介と解き明かす「足の振り」の秘密

2026.09.29

フロンターレ最前線#32

「どんな形でもタイトルを獲ることで、その時の空気感を選手に味わってほしい。次の世代にも伝えていってほしいと思っています」――過渡期を迎えながらも鬼木達前監督の下で粘り強く戦い、そのバトンを長谷部茂利監督に引き継いで再び優勝争いの常連を目指す川崎フロンターレ。その“最前線”に立つ青と黒の戦士たちの物語を、2009年から取材する番記者のいしかわごう氏が紡いでいく。

第32回は、川崎Fで公式戦通算531試合184ゴール。個人ではクラブ最多得点、J1途中出場最多得点などの数々の記録を更新し、JリーグベストイレブンやJリーグMVP&J1得点王にも輝きながら、チームに9つの栄冠をもたらしてきたストライカー、小林悠が惜しまれながらも発表した現役引退に寄せる。来年1月1日限りで川崎F一筋の17年間にわたるプロ生活に終止符を打つ11番の「足の振り」に宿る技術を、そのシュートを誰よりも浴びてきたであろう元同僚で現アシスタントGKコーチの安藤駿介の言葉とともに解き明かしてみよう。

 「本当に幸せな17年間でした」

 39歳の誕生日を迎えた2026年9月23日、川崎フロンターレの小林悠は2027年1月1日限りでの17年間に及んだプロ生活の幕引きを発表した。

 その記者会見の終盤、ある名前に触れてこう語っている。

 「先週、安藤に『自分で辞めるタイミングを決めることができるっていうのは本当に幸せなことですよ』と言ってもらって、本当にそうだなと。たくさんの人が続けたくても続けられない中で、自分でここで辞めると決断できたことをうれしく思います」

小林悠

 ここに出てくる「安藤」とは、昨年限りで現役を退いた安藤駿介アシスタントGKコーチである。2009年にアカデミーからトップ昇格した彼は、翌年に拓殖大学から加入した小林とはキャリアの大半が重なる長い付き合い。川崎Fが“シルバーコレクター”と呼ばれていた時代からタイトルを獲得し続けた黄金期まで、クラブの光と影を共有してきた関係でもあった。

 会見から2日後となる25日の練習後。

 あの時の小林の言葉を向けると、安藤コーチは照れくさそうに笑った。

 「なんか言ってくれてましたね。僕は別にそんなつもりもなくて、ちょっとした会話の中で『幸せだよね』って話をしただけですよ。でも、チームを勝たせてきた男だし、そういう意味での紛れもないレジェンド。(J1)初優勝はコバさんのゴールで優勝したと言っても過言ではないです」

安藤駿介アシスタントGKコーチ

「ボールがそんなに速くないのに、なんで取れないんだ?」

 小林が記録したJ1通算144得点は歴代7位。公式戦通算では現在までに184得点を数える。Jリーグ史にも名を残す偉大なストライカーだが、会見の場では「僕自身、体格に恵まれたわけでもスピードがあるわけでもない」という自己評価を口にしている。

 では、なぜ小林はあれだけシュートを決め続けることができたのか。

 それを安藤コーチにGKの視点で聞いてみたいと思った。

 彼は今年から指導者の道を歩み始めているが、昨年までは現役のGK。ともに過ごした年月を考えると、麻生グラウンドで小林のシュートと誰よりも多く対峙してきた元練習相手だからである。

 「シュートを受けると、本当に気持ちが悪い人でした(笑)」

 安藤コーチは思わず苦笑いを浮かべた。「気持ちが悪い」は一見すると不穏な響きを放つ表現だが、GKからすればFWに対する最大の賛辞でもある。

 「自分の感触が、ですよ。だって嫌なんですよ。ボールがそんなに速くないのに、なんで取れないんだって。そのモヤモヤが、最後まで取れなかったんです」

Photo: Takahiro Fujii

 実は長年、間近で受け続けた安藤コーチの胸には、小林のシュートに対してずっと解消されることのなかった疑問が残り続けていたという。その記憶を手繰り寄せるように言葉を紡ぎ始めた。

……

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Profile

いしかわごう

北海道出身。大学卒業後、スカパー!の番組スタッフを経て、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の担当記者として活動。現在はフリーランスとして川崎フロンターレを取材し、専門誌を中心に寄稿。著書に『将棋でサッカーが面白くなる本』(朝日新聞出版)、『川崎フロンターレあるある』(TOブックス)など。将棋はアマ三段(日本将棋連盟三段免状所有)。Twitterアカウント:@ishikawago

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