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勇将ハリル、不可欠だった南野&瀬古、元ランスの獅子軍団…王者パリSGとともに、今季リーグ1を沸かせた男たち

2026.05.24

おいしいフランスフット #28

1992年に渡欧し、パリを拠点にして25年余り。現地で取材を続けてきた小川由紀子が、多民族・多文化が融合するフランスらしい、その味わい豊かなサッカーの風景を綴る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第28通算186は、2025-26シーズン全日程を終えたリーグ1主要トピックスを総ざらい!

 5月17日に行われた最終節をもって、リーグ1の2025-26シーズンが閉幕した。長かったような短かったような、と毎年感じるこの季節。そして今年も、優勝したのはパリ・サンジェルマンだった。

 今回は、そんなパリSGのシーズンを振り返りつつ、その他の注目トピックスをまとめてお届けしようと思う。

パリSG、国内最多14回目の優勝

 出足は悪かったが、終わってみたらまた彼らだった、という今季の5連覇は、2位のマルセイユに勝ち点19差をつけた昨季のようにぶっちぎりではなかった。

 第22節でレンヌに敗れて一度2位に落ちてからは、代わって首位に立ったRCランスとの競り合いが続き、最終的にはCLの都合で延期になっていた、そのRCランスとの直接対決に勝利した5月13日に優勝が決まった。

優勝決定後の最終節パリFC戦がアウェイだったため、その試合前に相手方のスタジアムでトロフィー贈呈式が催された(Video: Yukiko Ogawa)

 とはいえ、滑り出しが鈍かったのは十分理解できる。昨季のCLで優勝した彼らは、5月31日まで過酷なシーズンを戦った後、休む間もなく6月15日からアメリカで開催されたクラブW杯に参戦。こちらも決勝に到達し(チェルシーに3-0で敗戦)、7月13日まで7試合をこなした。

 そのちょうど1カ月後にはUEFAスーパーカップに挑み(対トッテナム、PK戦の末に勝利)、直後の8月17日にリーグ1が開幕。他のクラブが休暇に入ったクリスマス時期には、カタールでFIFAインターコンチネンタルカップ決勝(対フラメンゴ、PK戦の末に勝利)。そして年明けにはフランスの国内スーパーカップのために、わざわざクウェートへ移動(対マルセイユ、PK戦の末に勝利)。

 選手層が厚いとはいえ、見ている側すら疲れてくるようなスケジュールだ。身体的だけでなく、精神的にも相当きつかっただろうと思う。

本拠地パルク・デ・プランスは欧州チャンピオンをアピール(Photo: Yukiko Ogawa)

 そのツケが出たのか、前半戦は主力選手たちのコンディションも整っていなかった。例えば昨年のバロンドール、ウスマン・デンベレは開幕早々にハムストリングを痛め、今季はもっぱらCL要員だった。

 それでもリーグ戦22試合に出場して10得点7アシスト。CLでは12試合で7得点2アシスト。特にリバプールとの準々決勝、バイエルンとの準決勝と、終盤のヤマ場に来て連続得点はさすがチームの主砲だ。

 そんなローテーション重視のシーズンだったゆえ、今季のリーグ1得点ランキングでTOP10に入ったのはブラッドリー・バルコラ(11)のみだった。

 ちなみに、今季のパリSGの選手の平均年齢「23歳362日」はクラブ史で最年少だった。今や不動のイレブンであるヌーノ・メンデスやデジレ・ドゥエ、ジョアン・ネベス、ワレン・ザイール・エムリ、バルコラなどはみな23歳以下。それでCL2年連続決勝進出なのだから、末恐ろしいチームだ。

 アクラフ・ハキミやデンベレら負傷気味の選手が多いのは気になるが、アーセナルと対戦する5月30日の決勝戦では、どんな結果を引き出すのか。

最高に盛り上がっていたCL準決勝バイエルン戦、第1レグ(○5-4)のキックオフ前(Video: Yukiko Ogawa)

パリFC、昇格1年目で躍動

 今季は36年ぶりに首都パリから2クラブがトップリーグに参戦した(前回は1989-90シーズンでパリSGとレッドスター)。

 厳密には、パリSGはお隣サンジェルマン市が地元だし、レッドスターもサントゥアン市のクラブだから、パリFCが昇格したことで、46年ぶりにパリ市を拠点とする純粋なパリのクラブがリーグ1に所属することになった。

 2月には降格の気配も感じる15位にいたのだが、同月末に監督を交代。パリSGやRCランス、ナントなど、リーグ1指導歴豊富なアントワン・コンブアレを招聘したところ、成績は急上昇。そこから11試合で6勝3分2敗と、シーズン総勝ち点44のほぼ半数である21をむしり取り、11位で初年度を終えた。

 パリSGとの“パリダービー”となった最終節は、ホームで2-1の大勝利。敵地では2-1で敗れたものの、0-1で制したフランスカップと合わせて、今季3度の対戦を2勝1敗で勝ち越す結果となった。

最終節では王者パリSGをパリFCの選手が花道で迎える粋な演出(Video: Yukiko Ogawa)

 コンブアレ監督は、驚異的なV字回復の理由を次のように語っている。

 「着任した時の印象は、良い選手がそろっているな、というものだった。だからあとは、自信を与えてやるだけだと。その意味では、最初のニース戦に勝利したのは大きかった。それから、冬のメルカートで獲得した選手たちには前のクラブで出番が少なかった選手もいたから、彼らのフィジカル向上に意識的に取り組んだ。勝利を重ねて自信をつけていったこと、そしてフィジカル状態が向上したこと、それらの要素が総合して、このような結果を出すことができた」

 前にもご紹介したように、パリFCはルイ・ヴィトンなど数々のラグジュアリーブランドを傘下に持つLVMHグループの会長一家がオーナーで、予算は潤沢だ。スポーツ面では、レッドブル・グループも参画している。彼らはカタール資本がパリSGに参入した時のような、「まずはスター選手を集めてクラブのブランド価値を上げる」という手法は取らないことを最初から明言していて、その言葉通り、実力はあるのに出場機会に恵まれていないような、なかなか良い選手を集めている。

 元パリSGのGKケビン・トラップもその一人。かつてのセリエA得点王、チーロ・インモービレのような36歳のベテランを招き入れた一方で、オセールから獲得した18歳の新星、ルディ・マトンドをスタメンで起用する大胆さもある。また、スタッド・ランスのファンにはお馴染みのマーシャル・ムネツィも、冬のメルカートでウォルバーハンプトンからレンタルで加入し、大活躍だった。

 最終節の試合後には、今季でクラブを離れる選手たちの盛大な退団セレモニーもあったりして、なんだか温かいクラブだ。現在トレーニング施設も拡張工事中で、2、3年後には欧州カップ戦出場を狙える強豪になる予感がする。ひそかに日本人選手も加わったらいいのにな、と期待している。

最終節を終えたスタッド・ジャン・ブーアンで、家族も一緒に行われた退団選手を労うセレモニー(Photo: Yukiko Ogawa)

ハリルホジッチのナント、無念の降格

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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