「サッカーって難しい」「やれることはやった」最終節4発も6位終戦、中村敬斗は前を向く【ランス総括・前編】
Allez!ランスのライオン軍団 #28
2025-26シーズンは中村敬斗、関根大輝が牽引する若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする、大好評のスタッド・ランス取材レポート。
第28回は、リーグ2(2部)6位であっけない幕切れを迎えた今季総括の前編。圧巻の最終節4ゴール、しかしリーグ1復帰は叶わなかった3年目を終えて、ランスの主砲は何を語ったのか。
「よくわからないところでポイントを落として…」ほろ苦い結末
これぞ主砲の真骨頂。
リーグ2最終節のスタッド・ランス対ポー戦。リーグ1昇格への望みをつなぐプレーオフ進出が懸かったこの決戦で、中村敬斗は驚異の4ゴールをぶち込み、自軍を見事勝利へと導いた。
子供の頃は8点取った試合もあったという天性のゴールゲッターである中村。ハットトリックは過去に2回、ガンバ大阪時代の天皇杯と、オランダリーグ時代にトゥエンテのユースチームで経験していたが、さすがに1試合4得点はプロになって初の快挙。
「(2点を取った後もハットトリックは)全然意識していなくて。とりあえず3-2になったから、プレーオフに行きたかったから」

中村は、試合が終わるまで、ひたすらゴールを追い続けた。
試合は開始21分で相手に2点リードを許す苦しいスタート。しかしモハメド・ダラミーが25分に1点を返して反撃の狼煙(のろし)を上げると、中村が前半終了前の39分に得意の左サイドからのカットインで同点弾をマーク。振り出しに戻す。
さらにハーフタイム明け早々に1点を追加して逆転に成功すると、61分にハットトリックを完成。そして76分には、途中出場の関根大輝のアシストからダメ押しの4点目を叩き込んだ。
意外だったのは、いずれのゴール後も、トレードマークである“膝スラ”が発動しなかったこと。2度にわたってアシストをしたヤシン・ベンアタブを抱き上げたり、カレル・ゲラーツ監督のもとへ駆け寄って喜びを分かち合ってはいたが、試合中の彼は“喜び爆発!”な気分ではなかったのだという。
「他会場の結果もあったから、なかなか(喜んではいられなかった)……。(他会場の結果は)めちゃめちゃ気にしてました。ハーフタイムでアヌシーが0-2で負けてるのがわかってたし……」
この最終節に、ランスは昇格プレーオフ圏内の5位から勝ち点2差の6位で臨んでいた。
5位へランクアップするには勝利が最低条件。さらに5位のロデーズが、7位のアヌシーとの対戦で引き分け以下である必要があった。アヌシーにも勝てば5位浮上の可能性があったからガチンコ勝負が予想されたが、昨年11月の第15節から無敗を継続していたロデーズが1-2で勝ち切り、5位を死守。
中村の大活躍でポーを5-3で下したランスだったが、惜しくも昇格のチャンスは逃すという、俗に言う“ビタースウィート”な結果となった。
「今シーズン最後の試合になっちゃったし。本当はそうしたくなかったけど、最後の試合になっちゃった……考えるものがあります」
試合後に取材エリアに現れた中村は、4得点には充実感を覚えつつも、昇格の望みをつなげられなかったことへの無念さが入り混じった様子だった。
「他の試合で勝てた試合を落としたのもそうだし、引き分けられた試合もあった。ホームでロデーズに逆転された試合(●1-2/第27節)なんかを引き分けていれば、今日(プレーオフに)行けてたかもしれないのに、もったいないなって本当に思う……。(2位で1部昇格を決めたル・マンとは)全然、力の差があるとも思わないし、よくわからないところでポイントを落としてこういう形になってしまった」
そのル・マンとは1週前の第33節で対戦し、敵地で1-1という結果に終わっていた。
それにしても、一時は2位につけ、自動昇格の望みすらあり、最低でもプレーオフ圏の5位以上は確実と思われていたのに、まさかこんなにあっけなくシーズンが終わってしまうことになるとは……。
痛かったのは、2月の“4戦連続0-0”。しかも相手は、最下位にいたバスティアや降格圏内のアミアンら下位チームばかりだった。
「僕らの良くないところは、弱い相手に(勝ち点を)落とすっていう……。弱いところに勝ち切れない。0-0が4試合続いた時があったじゃないですか。それですね、(昇格を逃した)原因は……」
中村も、この“魔の2月”を敗因に挙げた。“弱いところ”は、ガッチリとラインを下げて強固な守備ゾーンを作って守ってくるから、連係やコンビネーションがそれほど良くないランスには崩しにくい。一方、上位陣との対決はオープンゲームになるから、自分たちの良さをより発揮しやすかった。
ここで貴重な勝ち点を取り逃して2位から陥落。そして最後に決定打となったのは、第32節のナンシー戦(△1-1)だった。
開始後まもない9分に先制と幸先のいいスタートを切り、65分には相手が退場者を出して数的有利になっていたにもかかわらず、途中出場のウインガー、ザカリア・フダウシュに自陣からワンマン突破を許し、そのまま同点ゴールを決められてしまった。
ペナルティエリアに入られる前に、ファウルしてでも止めるべき決定的な場面。ここで取り損ねた勝ち点2があれば4位で終われていたはずだったから、悔やんでも悔やみ切れない痛恨のドローである。
明暗を分けたのは「チームとして一つになれていたかどうか」
……
Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。
