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“燃え尽き”もブーイングも乗り越えて…中村敬斗「最後まで監督と、みんなと一緒にランスのために戦いたい!」

2026.05.02

Allez!ランスのライオン軍団 #27

2025-26シーズンは中村敬斗、関根大輝が牽引する若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする、大好評のスタッド・ランス取材レポート。

27回は、中村が2季連続の2桁得点を達成した4月、13分と“取りこぼし”がありながらも、リーグ1昇格に向けてチーム全員が心を一つにした、リーグ22932節(全34節)を振り返る。

「完全に自分のせい…あれは決めなきゃダメだった」

 3月の代表ウィークで、マン・オブ・ザ・マッチ級の活躍をした中村敬斗。しかし、ウェンブリー・スタジアムで日本代表の歴史的な勝利に貢献してから中3日、スタッド・ランスでのブローニュ戦(4月4日)を終えた中村からは、イングランド戦の後に見せたような充足感は消えていた。

 「ゴールが遠い……」

 実質、昇格プレーオフ進出(3〜5位)を目標としている現状で、1点でも勝ち点を積み上げたいこの時期、今季3部から14年ぶりにリーグ2に上がってきた格下のブローニュにホームで0-0というのは、ランスにとっては負けにも等しい結果であり、中村はそんな大事な試合で最大のチャンスを外していた。

 18分、ペナルティエリア内、右ポスト手前で受けたボールを、飛び出してきたGKの右側に流し込んだが、ボールは左ポストの外側へ。地元紙の記者が「許されない失態」と酷評した絶好機だった。

 「完全に自分のせいですね、外したのは。あれは決めなきゃダメだった」

 と潔く認めた中村。

 「決めていれば勝てたし、ビッグチャンスだったし、あれは絶対、チームどうこうじゃなくて自分のせい、自分の個人的な問題だから。当たり損ねたわけではないし、コース的には決めて当たり前みたいな角度だった……」

スタッド・ランス対ブローニュのハイライト動画。18分の絶好機は0:53〜
外したシュートを悔やんでいた試合後の中村(Photo: Yukiko Ogawa)

 勝ち点3を稼ぎたかった下位相手に手痛いドロー。しかし“取りこぼし”は、さらに翌週も続いた。

 3部降格の危機に瀕した17位ラバルとの第30節(4月10日)は2-2。ランスはまたしても、貴重な勝ち点3を手にし損ねた。

 しかも、開始16分にPKを与えて先制を許すという後手に回る展開。後半ランスもPKで1点を取り返し、その後ラバルに勝ち越されるも、前半にPKを献上したモリー・グバネがセットプレーから同点弾を決めて、なんとか敗戦は免れるという内容だった。

 先発した中村は、ハーフタイムにピッチを退いた。彼だけでなく、前半にイエローカードをもらっていたCBアブドゥル・コネ、そしてMFアンジュ・マルシャル・ティアを含めた一挙3枚替えだったが、代わって出場したティエモコ・ディアラがPKを誘発し、アダマ・ボジャンが同点弾をアシストしたから、交代策は成功した形となった。

 この日の中村は、“敬斗ゾーン”からシュートを放ったシーンもあったが、全体的には低空飛行な印象。それはサポーターも感じていたようで、前節のブローニュ戦で格好のチャンスを逃したのも相まって、中村はスッキリ勝てない状態を招いている原因の一人に挙げられることになってしまった。

 矛先が向けられたのは、すでに来季の所属先が決まっているパトリック・ザビ(パリFC)と、夏のメルカートでの移籍は確実と見られている中村。とりわけ中村は代表戦での活躍が華々しかっただけに、「ランス戦では身が入っていない」と感じるファンもいたようだ。

 続くホームでの第31節レッドスター戦(4月18日)では、試合前の選手紹介で中村にブーイングが鳴り響いた。いつもなら誰よりも大きなレスポンスが響き渡るのが「ケイト〜」「ナカムラ〜」である。こんなことは、彼がランスに入団して初めてだった。同様にザビに対してもブーイングが巻き起こった。

ラバル対スタッド・ランスのハイライト動画
翌週のレッドスター戦では中村のコール時にブーイングが……(Video: Yukiko Ogawa)

「今日は監督と心中する」「懸ける思いは今季一番」

 このレッドスター戦は、勝ち点51で4位につける相手と、同48で追うランスとの直接対決。勝てば相手の+3を阻止して自分たちが+3を手にする、いわゆる“6ポイントマッチ”だ。

 そんな超重要な一戦とあって、オーギュスト・ドゥローヌにはキックオフ前からいつもとは違う緊張感が漂っていたが、ここでしっかり仕事をしてみせたのがチームの主砲、中村だった。

 開始6分、ペナルティエリアのやや外側でボールを受けたディアラがテオ・レオーニにパス。これをレオーニがワンタッチで中村に出すと、GKの左側の空いたスペースに的確なコントロールで流し込んだ。

 第26節のダンケルク戦以来、ホームでは第16節のラバル戦以来およそ4カ月ぶりのゴール。そしてリーグ戦10点目と昨シーズンに続いて2桁に乗せたこの一撃に、中村は膝スラで喜びを爆発させた。スタジアムにも先ほどとは一転、ゴールゲッター「ナカムラ」の名前を呼ぶコールが鳴り響いた。

スタッド・ランス対レッドスターのハイライト動画。中村の得点シーンは0:22〜

……

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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