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大分・吉岡SDが語る“助走”の先にあるもの。「湧き上がる」スタイル構築の現在地

2026.05.15

トリニータ流離譚 第36回

J3からJ2、そしてJ1へと昇格し、そこで課題を突きつけられ、漂泊しながら試練を克服して成長していく大分トリニータのリアルな姿を、ひぐらしひなつが綴る。第36回は、吉岡宗重SDにクラブの未来図を聞いた。一度きりの特別大会、百年構想リーグ。その中で大分トリニータは、結果だけでは測れない挑戦を続けている。四方田修平監督の下で掲げる新たなスタイル「湧き上がるフットボール」。若手起用、3バック同士の駆け引き、そして“流れに逆らう選手”の必要性――。試行錯誤の先に見据えるのは、次なるJ2本番への土台作りだ。

百年構想リーグは「挑戦の場」

 一度きりの特別大会、J2・J3百年構想リーグも残り2試合、プレーオフラウンドを含めて4試合となった。

 吉岡宗重SD体制が本格的に動き出したとも言えるこのシーズンは、新たに四方田修平監督に手綱を預け、クラブの掲げる新しい大分トリニータのスタイル「湧き上がるフットボール」の構築を目指してスタート。ここまで16試合を終えて6勝1PK勝1PK敗8敗の勝ち点21。現在は7位につけている。

 その戦績について吉岡SDは「結果というところで言うと、やはりもっと上の順位にいなくてはならない状況だとは思っています」と評しつつ、クラブを挙げての新たなチャレンジに関しては、迷いを見せない。

 「新体制発表会見でもお伝えしたように、こういうリーグだからこそチャレンジできることがある。思い切って若手を起用したり、戦い方も去年までの構える守備から攻守に前への矢印を強く出すところを意識させてやってきている中で、昨季には起こり得なかった失点シーンも増えるかもしれないという予想もして、実際にカウンターでの失点もありました。でも、むしろこういうリーグだからこそ、そういった課題をしっかり出した上で次のシーズンに準備できるよう、ある意味ここで課題が多く出るのは前向きなことだと考えています」

3バック戦国時代。WEST-Bで繰り広げられる駆け引き

 大分トリニータが属するWEST-Bグループでは、テゲバジャーロ宮崎が首位を独走。2位にはサガン鳥栖がつけ、J2のチームとJ3のチームが混在する中でJ2勢が上位に位置してはいるが、シーズン中にはしばしば、下馬評を覆すような試合も見受けられた。開幕直後から圧倒的なペースで勝ち点を積み上げた宮崎に初めて土をつけたのが今季Jリーグ入りを果たしたばかりのレイラック滋賀FCだったり、開幕当初の新たなチャレンジが上手く結果につながらなかった鳥栖も鹿児島ユナイテッドFCと順位を競っていたりと、一概にカテゴリーの差が勝敗を分けるとも限らず、多くのクラブの力量が拮抗していることがうかがえた。

 大分の採用する[3-4-2-1]のフォーメーションは、四方田監督が長年、得意としてきたシステムだ。今季は同じ基本フォーメーションを採るチームが多くなっている。4バックシステムでスタートしたサガン鳥栖やギラヴァンツ北九州も、シーズン途中で3バックシステムに変更。複数システムを併用するロアッソ熊本も3バックでのスタートが多く、シーズン終盤には4バックシステムを基本形としているのは宮崎、鹿児島、FC琉球の3チームのみとなった。

 3バックシステム同士のマッチアップとあり、各チームはそれぞれにミスマッチを作ろうと、可変したりファジーな立ち位置を取ったりと工夫を凝らしてくる。その駆け引きの妙やスタイル同士の相性が、勝負のあやとなっているようにも思われる。

“湧き上がる”ために必要な「流れに逆らう選手」

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Profile

ひぐらしひなつ

大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg

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