REGULAR

焦らず、着実に――それが山口蛍の考え。主将のノエスタ帰還で示された長崎の新たな基準

2026.02.18

V・ファーレン長崎、西果ての野望#2

2018年に「長崎スタジアムシティプロジェクト」を立ち上げた時、遠い夢物語に過ぎなかった。それから6年でJリーグの1つのモデルケースになるような大型複合施設は完成し、チームは2度目のJ1昇格を果たした。しかし、まだ夢の途中。長崎という地方都市を舞台に、J1での躍進、そしてその先にあるACL出場を想い描く――番記者・藤原裕久が西の果ての野望を現在進行形で伝える。

第2回は、クリムゾンレッドではなく「V」をかたどった青とオレンジをまとい、「ノエビアスタジアム神戸」に帰還した山口蛍。35歳のキャプテンはJ1の舞台で苦戦するチームの現状を冷静に受け止め、胸を張って戦い続けている。

 6シーズン在籍し、数々の称賛を浴びてきた場所「ノエビアスタジアム神戸」へ、キャプテンは帰って来た。ただし、その身にまとう色はホームのクリムゾンレッドではない。自身のルーツとも言えるクラブのピンクでもない。その胸にあるエンブレムは「V」をかたどった青とオレンジ。

 2026年2月13日。8年ぶりにJ1での戦いに挑んでいるチームを率い、V・ファーレン長崎のキャプテン、山口蛍はJ1へ帰ってきた。

「最適なポジションではない」が、さすがの仕事ぶり

 長崎は[3-4-2-1]をベースシステムとするが、昨季のリーグ戦終盤から高い個を持つシャドーのマテウス・ジェズスの個人技を生かすため、FWに近い位置に入らせ、空いたシャドーにボランチの片方が上がり、山口が中盤中央でアンカー気味にプレーしてバランスを取る[3-5-2]で戦うシーンが多かった。

 今季はチアゴ・サンタナというアタッカーが加わったことで、シャドーのマテウスが前に上がり2トップ的になるシーンがさらに増え、山口はもう1人のボランチを前に押し上げ、シャドーの長谷川元希と1.5列目に2枚を並べて、自身が後ろ目でゲームをオーガナイズする役割がより強調された。そのため、この神戸戦でもやや後ろ目に位置取って戦っている。

 高木琢也監督は「本当を言うなら、僕は今のポジションが彼の最適なポジションとは言えない」と語る。確かに、山口の持ち味である前のスペースへ飛び出す動きはかなり制限される。しかし「今、ちょっとそこができる選手がいない」というチーム事情を考えれば、山口にやってもらうしかない。その制約の中でも「こぼれ球奪取数」はリーグ上位、走行距離ではチームトップレベルの数字を叩き出し、しっかりと攻め上がってシュートも放っているのだから、さすがの仕事ぶりと言う他ない。

Photo: Hirohisa Fujihara

古巣に完敗。それでも、次へ

 しかし、2戦目となった神戸戦は厳しい現実を突きつけられた。

 高木監督も「前半はかなり押し込まれた状態が続く中で、こぼれ球のところで我々の処理の仕方をワンランク改善していく必要がある」と語るように、神戸に一方的に押し込まれ、前半で2失点を喫した。試合後、選手たちは一様に「すべてにおいて差を感じた」「J1の現実を突きつけられている」と語るほどの差を見せつけられたのである。

 山口は古巣との対戦をこう振り返る。

……

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Profile

藤原 裕久

カテゴリーや年代を問わず、長崎県のサッカーを中心に取材、執筆し、各専門誌へ寄稿中。特に地元クラブのV・ファーレン長崎については、発足時から現在に至るまで全てのシーズンを知る唯一のライターとして、2012年にはJ2昇格記念誌を発行し、2015年にはクラブ創設10周年メモリアルOB戦の企画を務めた。

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