アトレティコに見る、成功例があるのに普及しなかった「クリスマスツリー」の謎
新・戦術リストランテ VOL.105
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第105回は、[4-3-2-1]=いわゆる「クリスマスツリー」を採用したアトレティコ・マドリーに見る、成功例があるのにこのシステムが普及しなかった謎に迫る。
バルセロナに歴史的な大勝の直後に…
コパ・デルレイ準決勝第1レグでバルセロナに4-0と歴史的大勝利を収めた3日後、リーガ第24節ラージョ戦は3-0の完敗。2月5日の コパ・デルレイ準々決勝ベティス戦もアウェイで0-5の完勝でしたが、3日後の第23節には同じ相手にホームで0-1の黒星。
アトレティコ・マドリー、本当に強いのかよくわかりません。少なくとも安定感はないですね。それでもコパ・デルレイのバルセロナ戦が素晴らしい内容だったのは事実です。
7分の先制点はエリック・ガルシアのバックパスがそのまま入ってしまうオウンゴールでしたが、14分にはグリーズマンが冷静なシュートで2点目。ルックマン、フリアン・アルバアレスが加点して前半で4-0のリードを奪いました。
52分にクバルシがFKからの混戦を押し込みましたがオフサイド。アトレティコはがっちり守り切って試合を終えています。85分にエリック・ガルシアが退場していますが、すでに前半で勝負はついていました。
この試合のアトレティコは[4-3-2-1]システム、いわゆる「クリスマスツリー(以下Xマスツリー)」でした。
Xマスツリーは現在ほぼ見かけなくなったシステムです。代表例は1998年W杯に優勝したフランス代表(図1)と2000年代のアンチェロッティのミラン(図2)。ミランは[4-3-2-1]専用ではないですが、CL2回、セリエA1回優勝しています。


ところが、成功例があるのに全くといっていいほど普及しなかった。今回、アトレティコで久々にこれを見たわけですが、どうもそのまま続きそうもない感じではあります。
ここであらためて、この特殊なシステムの機能性となぜ普及しないかを考えてみたいと思います。
バルセロナに「どんぴしゃ」だった嚙み合わせ
コパ・デルレイ第1レグ、バルセロナ戦のアトレティコ・マドリーの布陣です(図3)。

冬の市場でアタランタから獲得したルックマンが左シャドー。この補強は効きました。先制点はエリック・ガルシアのバックパスをGKジョアン・ガルシアがコントロールしそこなってそのまま入っているのですが、流れとしてはゴール内からかき出したボールをルックマンが決めています。3点目はきれいなワンタッチシュート。最初がオウンゴールでなければ2得点でした。
バリオスの負傷で左のボランチに入ったマルコス・ジョレンテ、今季は出番が少なくなっていたモリーナの起用が当たりました。ヤマルを抑え込んだルジェリ、右サイドの攻守で圧巻だったジュリアーノ・シメオネも大活躍。
バルセロナの攻撃を封じ、鋭いカウンターから次々とチャンスを作り、あれよというまの4ゴールでした。
アトレティコは適材適所の配置でした。しかし、それ以上に大きかったのはバルセロナの配置に対して極めて相性が良かったことです。
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
