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FIFAがなぜ「平和賞」をトランプ大統領に?やはりサッカーと政治はズブズブだった、W杯抽選会の答え合わせ

2025.12.07

サッカーを笑え #56

今回のW杯の組み合わせ抽選会は「サッカーと政治はズブズブの関係だった」と公式に認める機会になった。これまでFIFAは、グラウンド上で選手が政治的なアピールした時などに「サッカーには政治の介入する余地がない」と言い続けてきた。もちろん、それは建前であって本音のところは政治と密接な関係にあることが、例えばW杯の開催国選定などの際にチラチラと見えてはいたけども、表面的にはFIFA憲章にある中立性を遵守してきた。

それが一昨夜の通りである。あれを見れば、FIFAUEFAが(アメリカの強力な後ろ盾がある)イスラエルを国際コンペティションから追放するなんて議論が無意味であることもわかった。

ノーベル平和賞を逃した「友だち」を慰めた会長

 インファンティーノ会長が抽選会に合わせて、FIFA平和賞という場違いに聞こえる賞を急遽作り上げたとは聞いていた(賞を作ったという発表は11月5日)。その第一回の受賞者はトランプ大統領になることも確実視されていた。というか、この賞自体が大統領のために作られた、という見方を『エル・パイス』紙をはじめとするスペインのメディアはしていた。同紙によると、会長と大統領は2018年のW杯開催国選出以来の大の仲良しで一緒にゴルフにも行くし、今年1月に大統領に再選された際にはミーティングで会長の名前を5回も出して感謝の意を表していたし、中東外交ではコネクションのある会長がガイド役として大統領に同行したりもしていた。その友情のお返しに、お手盛りの平和賞を作ってノーベル平和賞を逃した大統領を慰めた、という見立て通りになった。

 FIFAがなぜ平和賞なのか? サッカー人にも平和に貢献している人はいるはずなのに、なぜ政治家を選んだのか? 来年は誰に受賞させるつもりなのか?――なんてのは今となってはもはや愚問。答え合わせができた夜でもあった。ノーベル平和賞の授与式がちょうど来週(12月10日)というタイミングだった。抽選会を中継した国営放送TVEのコメンテーターはずばり「残念賞ですね」なんて言っていた(NHKに相当するメディアが全国放送でこういうことを言えるのは、この国の良いところだ)。

アメリカのドナルド・トランプ大統領(79歳)とFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長(55歳)

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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