REGULAR

戦術的にはインテル優位、しかし結果は正反対。ミラノダービーの不思議

2025.11.26

新・戦術リストランテ VOL.94

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第94回は、伝統のミラノダービーを分析。戦術的にはインテル優位だったが、結果はミランの0-1勝利。そのカラクリを読み解いてみたい。

 セリエA第12節、インテルvsミランのダービーマッチは0-1でミランが勝利しました。ミランは首位ローマに2ポイント差の2位につけております。決勝点は54分のプリシッチのゴール。

 敗れて4位に転落したインテルですが、ミランとの差は1ポイントしかありません。この直接対決でもインテルの方が優勢でした。

 膠着していて、どちらが勝ってもおかしくなかったのですが、戦術的にはインテルが優位だったと思います。あえて敗因を挙げるとすれば、インテルは優勢なだけで圧倒するところまでいかなかったことでしょうか。

 内容と結果が一致しないのはサッカーでは常にあること。圧倒していても負けることはあります。ですから、やや優勢くらいだと大した保証にはなりません。ただ、リーグ戦ですから、力関係が上の方が最終的には上の順位になると思います。

GKメニャンの大活躍。「PKトリック」も見事

 立ち上がりはインテルが攻め込みます。ミランはローブロックで我慢。しかし15分あたりから形勢が逆転します。

 ミランの前からのプレッシングがはまり始めた。

 どちらもフォーメーションは[3-5-2]。ミランは右インサイドハーフのフォファナを前進させてインテルの3バック左のバストーニへプレスします。これでインテルのビルドアップを阻止してボール奪取、攻め込む展開になりました(下図)。

 ただし、それも15分程度で終了。インテルはマッチアップ上フリーになるチャルハノールへパスをつないでプレスを打開したからです(下図)。

……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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