アモリム・ユナイテッドの最適解は[5-4-1]のローブロック?「サラー問題」に悩むリバプール撃破で見えたもの
新・戦術リストランテ VOL.89
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第89回は、リバプール対マンチェスター・ユナイテッド戦分析。アウェイでリバプールを撃破したアモリムのチームは上昇気流に乗れるのか、そして公式戦4連敗となったリバプールに何が起きているのかを考察する。
新戦力ムベウモが4バックの「ポケット」を攻略
プレミアリーグ第8節、リバプール対マンチェスター・ユナイテッドは1-2でアウェイのユナイテッドが勝利しました。
リバプールはこれで3連敗、CLのガラタサライ戦を合わせると4連敗という異常事態。一方、これまで公式戦8試合で3勝だったユナイテッドは初の連勝です。リバプールは3位に落ち、ユナイテッドは9位浮上となりました。
開始早々の2分にユナイテッドがムベウモのゴールで先制。[3-4-2-1]システムの右シャドー担当のムベウモの補強効果が出ていますね。右サイドでアマドがキープする間にコナテとファン・ダイクの間をすり抜けてニアゾーンに侵入、アマドからのパスを受けてゲットしています。
カメルーン代表のムベウモはまず走力があります。足下も非常に上手いのですが、それでいて裏抜けの動きも秀逸。球際も強く、献身的に動き、シュート力があってアシストもできる。昨季はブレントフォードで20ゴール7アシスト。新天地でも攻撃を牽引しています。
ユナイテッドは[5-4-1]のローブロックで守り、奪ったら縦に長いボールを蹴ってカウンターというシンプルな戦い方でした。
アモリム監督といえばスポルティングでのポジショナルプレーのイメージですが、たまにこういう戦い方もしています。[5-4-1]のローブロックを攻略するのは簡単ではなく、デ・リフト、マグワイア、ショーの中央3枚も固かった。ここからの攻撃はハイプレスされるので難しいのですが、ロングボールをムベウモ、クーニャに蹴って何とかしてもらうという形はそれなりに有効。
引く時はムベウモ、マウントのシャドーがサイドに戻って[5-4-1]になるわけですが、ときどきクーニャがムベウモやマウントに代わってMFのラインに入ります。人が入れ替わってもシステムは維持という方針が明確でした。
右のアマドとムベウモの関係が良いですね。27分にはムベウモからポケットに走り込んだクーニャにパスが通り、クーニャがクロスボールを送りますがGKがカット。フィニッシュまではいけませんでしたが、先制点と同じ形です。
リバプールは4バックなので、どうしてもここは空きやすくなります。5バックだとそんなに空きません。リバプールの左SBケルケズの裏を取れれば、ファン・ダイクを動かせるので、あとはそこへ走り込む選手とボールホルダーのタイミングしだいで侵入しやすかった。
ただ、全体的にはリバプールの攻撃によく耐えたという試合でしたね。
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
