ホーランド&エデゴーら黄金期到来のノルウェー代表。破壊的な攻撃力を有すが、ブラジルともスペインとも違う無機質な強さ
新・戦術リストランテ VOL.88
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第88回は、ホーランド、エデゴー、セルロート、ボブ、ヌサ……など才能豊かなアタッカーを擁し、W杯欧州予選で快進撃を見せているノルウェー代表。攻撃力が爆発しているが、サッカースタイルは伝統の堅守速攻。北欧の雄の無機質な強さを読み解く。
爆発的な攻撃力だが、伝統の堅守速攻は継承
W杯欧州予選、ノルウェー代表が絶好調です。6戦全勝でグループIの首位。得点29、失点3。得失点差26は参加国中ダントツ。ホームのエストニア戦、アウェイのイタリア戦が残っていますが、本大会出場が濃厚です。
W杯出場が決まると1998年フランス大会以来となります。この時はグループステージ最終戦でブラジルに2-1で勝ち、ベスト16進出を果たしています(ラウンド16でイタリアに敗退)。
当時はノルウェーの黄金時代で、エギル・オルセン監督が率いて94、98年とW杯連続出場でした。大柄な選手の高さを活かした攻撃、整然とした組織的な守備はいかにも北欧という感じでした。
現在のノルウェーにもその伝統は継承されています。
[4-5-1]ないしは[4-4-2]のコンパクトな守備ブロック、完全ゾーンの機能性はそのまま。ただ、現在のノルウェーは守備だけのチームではありません。ホーランド、セルロートの強力なストライカーがいて、プレーメイカーにエデゴー、サイドアタッカーにはボブ、ヌサという欧州屈指のタレントを擁しています。
イタリアに3-0、イスラエルに5-0と4-2、モルドバにはアウェイ5-0、そしてホームでは11-1! すさまじい得点力です。ただ、ノルウェーの基盤は相変わらず守備にあります。大量点を取っていますが、それもほとんどはカウンターアタック。ノルウェーがボールを保持しての攻撃的なサッカーをするようになったのではなく、プレースタイルは伝統の堅守速攻のまま得点力が爆発しています。
守備から逆算された選手配置
ノルウェーに馴染みのないファンも多いかと思いますので、イタリア戦の先発メンバーを出しておきましょう(下図)。

他の試合もほぼ同じメンバーです。フォーメーションも[4-3-3]([4-5-1])で変わらず。エデゴーを負傷で欠いていた10月のイスラエル戦は[4-4-2]でしたが、エデゴーが復帰すれば[4-3-3]に戻すのではないかと思います。
ちょっと面白いのがセルロートの使い方。典型的なCFでタイプとしてはホーランドと似ていますが、右ウイングに起用しています。
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
