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LVMH×レッドブルでリーグ1昇格、パリFCの“新スタジアム”が居心地最高だった!

2025.09.28

おいしいフランスフット #20

1992年に渡欧し、パリを拠点にして25年余り。現地で取材を続けてきた小川由紀子が、多民族・多文化が融合するフランスらしい、その味わい豊かなサッカーの風景を綴る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第20回(通算178回)は、2024年11月にLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)のグループ企業が52.4%、レッドブル・グループが10.6%の株式を取得すると、さっそくリーグ2(フランス2部)2位で1978-79シーズン以来のトップリーグ参戦を果たしたパリFCの現状を、その新たなホームから現地レポート。

パルク・デ・プランスすぐ隣の“ラグビー場”で大熱狂

 今シーズンのリーグ1で注目トピックスの一つが、昇格組のパリFCだ。

 元祖パリの地元クラブは、47季ぶりのトップリーグ参戦を機にどのように昇華しようとしているのか。それをチェックしに、ホームでの2戦目となった第5節のストラスブール戦(9月21日)に行ってきた。

 まず、今季使用するスタジアムだが、これまで本拠地としてきた陸上トラックのあるスタッド・シャルレッティではなく、「TOP14」に参戦するプロラグビークラブ、スタッド・フランセ・パリのホームスタジアムであるスタッド・ジャン・ブーアンを共有することになった。奇しくもパリ・サンジェルマンの本拠地パルク・デ・プランスのすぐお隣だ。

 昇格が決まった時からその話は出ていたが、芝のケアやスケジュールなど、共同使用についてはいろいろと問題があり、実現はしないかも?と言われていた。しかし、“パリ”とは謳いながらも歴史的にサンジェルマン市にルーツがあるパリSGとは対照的に、パリFCは純粋なパリのクラブ。ということで、パリ市の熱の入れようは桁違いなのである。そんな行政の力添えもあり、アーティスティックな外観も素敵なこのスタジアムを首尾よく本拠地にできることになった。

向こうにパルクを眺めつつ(Photo: Yukiko Ogawa)
パリFC対ストラスブールの入場シーン(Video: Yukiko Ogawa)

 そして実際、ここでの観戦体験は最高だった。

 シャルレティにも何度か見に行っていたけれど、そもそも満席にならない上に陸上トラックが周囲を囲んでいるので、ピッチが遠く閑散とした印象が否めなかった。この時からウルトラスは頑張っていて、懸命に場を盛り上げていたのだが、広いスタジアムのほんの一角に陣取る賑やかな集団、という感じだった。

 しかし、新たな居住地でウルトラスの定位置であるゴール裏に陣取った彼らは、スタジアムの風景にも見事にマッチ。このジャン・ブーアンはピッチとスタンドが近いことを売りにしているから、陸上競技場時代とは真逆の臨場感も抜群だった。

 そして集まってくる観客は、家族連れや地元のサッカーファンといった人たちが多く、首都クラブならではの観光地化しているパルク・デ・プランスとはまた別の雰囲気があった。たとえるなら、スタッド・ランスやル・アーブルなど、地方の小都市のスタジアムのアットホームな空気感に近い。

 日曜のデーゲームだったこの日の観客数は1万7912人と、約2万人収容のスタンドはアウェイ席を含めてほぼほぼ埋まっていた。

定位置を得たウルトラスのみなさん(Photo: Yukiko Ogawa)
平和的な試合前のスタッド・ジャン・ブーアン周辺(Photo: Yukiko Ogawa)

 ちなみに、この会場の主であるスタッド・フランセ・パリのテーマカラーは鮮やかなピンクで、スタジアムに足を踏み入れると、壁など目につくところはピンク色で飾られているのが特徴的だったのだけれど、ストラスブール戦ではパリFCの紺×白で統一されていた。共用するから白く塗り直したのかしら……と思って広報さんに聞いてみたら、なんと試合ごとにピンク、白と色を変えているのだそうだ。

 「まあ、かなり面倒な作業ではありますが。今のところはなんとかやっています……(苦笑)」

 8月31日に行われたホーム初戦の第3節メス戦(○3-2)には、クラブ経営に参画するレッドブル・グループからグローバル部門責任者のユルゲン・クロップ、元ドイツ代表FWでサッカー部門を統括するテクニカルディレクターのマリオ・ゴメスも来場。

 パリ市のアン・イダルゴ市長は所用で来られなかったらしいが、フランス文化省の大臣、パリのあるイル・ド・フランス地域圏の知事といった政治家やライー、ジェローム・ロテンら元選手(ともに元パリSG戦士!)、俳優などセレブリティがVIP席に陣取っていた。

 世界に名だたる大富豪であるオーナーのアルノー一家の交友関係は幅広いから、今後も様々なゲストがVIP席を彩りそうだ。

「今の我々にとってはすべてが学びだ」

……

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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