セリエA開幕3連勝の新生ナポリ、「デ・ブルイネありき」のパッチワーク戦術とは?
新・戦術リストランテ VOL.84
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第84回は、デ・ブルイネを活かすためにオーダーメイドのチーム戦術を用意してきた昨季セリエA王者のナポリ。コンテ体制2年目のチームは開幕3連勝と好スタートを切っており、CLでも面白い存在になるかもしれない。
主力はマンチェスターからやって来た3人
セリエA王者として新シーズンを迎えたナポリ、開幕から3戦全勝と好調です。今季はCLもあり、勝負を懸けてきた感がありますね。
昨季の得点、アシストともにチームトップのルカクを擁しながら、マンチェスター・ユナイテッドからホイルンドを獲得しています。さらにマンチェスター・シティからデ・ブルイネが来ました。昨季のMVPマクトミネイもユナイテッドでしたから、マンチェスターにいた選手が3人になっております。

基本システムは[4-1-4-1]。ただ、第3節のフィオレンティーナ戦ではデ・ブルイネとマクトミネイのところが少し違っていました。
フィオレンティーナの[3-5-2]に対応しています。デ・ブルイネは左のハーフスペースにいて、その後方にマクトミネイ。基本的にマンマークだからです。相手の3バックにはポリターノ、ホイルンド、デ・ブルイネが対応。中央のMF3人にもマークが決まっていて、マクトミネイはマンドラゴーラ、ロボツカがファジョーリ、アンギサがジモンをマーク。ディ・ロレンツォ、スピナッツォーラのSBは相手のウイングバックを捕まえます。

流れの中で多少の受け渡しはありますが、相手が前進してくる限りは受け渡さずにつき切ります。マンマークでのプレスは昨季CL優勝のパリ・サンジェルマンなど、欧州ではけっこう主流になりつつありますが、ナポリもその1つなのでしょう。
攻撃はポリターノが右サイドに張って、そこからゴリゴリとカットインを仕掛けます。左はSBスピナッツォーラが幅を取り、デ・ブルイネはハーフスペース起点に動く。マクトミネイはかなり広範囲に自由な動き方でした。右側は固定的、左側が流動的、遊軍マクトミネイ。
左SBのスピナッツォーラは右利きで、プレースタイルはMF的です。タッチライン際を上下動するというより、左サイドからデ・ブルイネやホイルンドへ斜めのパスを供給する。技術があって判断も良く、プレーメイカー的なスタイルです。
フィオレンティーナ戦は6分にデ・ブルイネがPKを決めて早々に先制すると、14分にはボールを奪ったスピナッツォーラからのスルーパスでホイルンドが抜け出しゲット。後半にもCKの折り返しをCBベウケマが押し込んで3-0。この51分の得点で勝負ありでした。78分にCKのこぼれ球を決められますが3-1で勝利しております。
デ・ブルイネがいるか否かでシステム全体が変化
攻撃はパッチワークですね。適材適所というより選手の特徴に合わせてバランスを取っています。
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
