REGULAR

ブレントフォードの新監督は元セットプレーコーチ。若手指導者の登竜門となりつつある「第5の局面」の専門家たち

2025.08.30

TACTICAL FRONTIER~進化型サッカー評論~#19

『ポジショナルプレーのすべて』の著者で、SNSでの独自ネットワークや英語文献を読み解くスキルでアカデミック化した欧州フットボールの進化を伝えてきた結城康平氏の雑誌連載が、WEBの月刊連載としてリニューアル。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つ“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代フットボールの新しい楽しみ方を提案する。

第19回は、「第5の局面」とも評されるセットプレーコーチの世界について考察してみたい。プレミアリーグの各チームに専門家として配置されるだけでなく、監督やアシスタントコーチに転身するという新たなキャリアパスも登場し、若手指導者の登竜門となりつつある新たな職業の最新トレンドに迫る。

 攻守の4局面をベースとした分析がフットボールの動的な性質を表す一方、セットプレーはそのようなプレーの流れから分断されている。厳密には分割することが難しいゲームを「攻撃」「守備」「ポジティブトランジション」「ネガティブトランジション」の4つに定義したことで、多くのコーチが攻撃と守備の中間に存在するトランジション局面に注目することになり、フットボール戦術は進化した。その中で、あらためて注目を浴びているのがセットプレーだ。

 バルセロナのサッカー指導者養成学校であるMBPコーチスクールは「セットプレーは第5の局面である」というタイトルの記事を寄稿しており、前述した4局面からは独立した局面として注目した。実際、90分のゲームには流れがある。しかし、それが途切れるという意味でセットプレーは特殊だ。明らかに主導権を握っていたチームが、1本のフリーキックやコーナーキックから崩れていくことも決して珍しくはない。だからこそ、多くのチームがセットプレーという局面に専任のコーチを指名するようになってきている。今回は、そんなセットプレーコーチという「若手指導者の登竜門」となりつつある役職について考察していきたい。

6種類のセットプレーのトレンド

 セットプレーには、次の6種類がある。

……

残り:3,560文字/全文:4,444文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

RANKING