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シェルキら新戦力を生かす両SB+9番の偽化。25-26開幕戦に表れるシティの「らしさ」

2025.08.20

新・戦術リストランテ VOL.80

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第80回は今夏、総額1億7690万ユーロを投じてアイト・ヌーリ、ティジャニ・ラインデルス、ラヤン・シェルキらを補強して再起を図るマンチェスター・シティに注目。2025-26シーズンのプレミアリーグ開幕戦でさっそく表れた「らしさ」とは?

左にA.ヌーリ加入で両サイドへ。偽SBが前進ルートを確保

 プレミアリーグ開幕戦はアウェイでウォルバーハンプトンに0-4大勝。まだ1試合だけなので何とも言えませんが、マンチェスター・シティの「2025-26シーズンらしさ」みたいなものは表れていた気がします。

 基本フォーメーションは[4-3-3]ですが、攻守で可変するのはいつものシティですね。攻撃での偽SBは以前からです。ただ、初戦では両方とも偽化していて、これは今季の特徴となるのではないでしょうか。

 ウルブス戦のSBは右にリコ・ルイス、左がアイト・ヌーリ。どちらもビルドアップ段階で内側に入ります。CB、アンカー(ニコ・ゴンサレス)と連係できる近い距離感。ここで引きつけてサイドへ展開、またはインサイドハーフのラインデルス、ベルナルド・シルバへという前進ルートでした。

 昨季は片側だけ偽化する形が多かったと思いますが、アイト・ヌーリが加入したので両方になったということなのでしょう。まだ3バック化もしていますし、ストーンズの偽CBもありますが、基本形は両SBが移動するようでした。

 どちらかと言えば、リコ・ルイスのほうが自由度が高い感じでしたが、アイト・ヌーリはかなりの技巧派ですから、時間の経過とともに左の攻撃頻度も増すのではないでしょうか。

 この試合では右インサイドハーフのラインデルスが1ゴール1アシストの大活躍。少ないタッチできびきびとさばけて、縦横無尽に駆け回りながらハーフスペースを抜けるランニングもスムーズ。チーム3点目のお膳立ては、ゴールキックを中盤で収めて右のボブへ展開し、ポケットへ飛び出してパスを受け、ホーランドへのプルバックという形でした。デ・ブルイネを彷彿させるプレーでしたね。

 ラインデルスがあまりにもはまっているので、シェルキをどう使うのかと思っていたら73分にホーランドとの交代で登場。81分に中央でワンツーのこぼれ球を拾いながら2人外してミドルシュートを楽々と流し込み、4点目をゲットしています。偽9番的なスタイルでした。

……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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