ビルツとサラーの「眼は揃っている」。新生リバプールに起こりつつある“化学反応”とは?
新・戦術リストランテ VOL.78
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第78回は、ビルツやエキティケを獲得するなど積極的な補強に動いている新生リバプールの分析。スロット体制2年目を迎えたプレミア王者は、どう変わろうとしているのか?
求められるのは「サラーのパートナー候補」
リバプールは横浜FMとの試合後、アンフィールドにアスレティック・ビルバオを迎えてダブルヘッダーを行っています。結果は4-1、3-2。1本目はングモハとドークの両翼が活躍しています。ングモハは16歳、ドークは19歳。
2本目のメンバーは横浜FM戦の先発とほぼ同じで、こちらが現時点でのベストメンバーでしょう。この試合に出ていなかったGKアリソン、DFファン・ダイクを加えると予想される先発メンバーはこんな感じでしょうか(下図)。

今季の目玉は何と言ってもビルツです。1億1600万ポンド(約228億円)の移籍金を払ってレバークーゼンから獲得しています。
獲得選手が若いですね。ビルツ22歳、新鋭ストライカーのエキティケが23歳、フリンポン24歳、ケルケズ21歳。いずれも実績十分なので若手という感じはしませんが、体力的にこれからピークを迎えていく年齢の主力選手を獲得できる財力は、さすがにプレミアリーグのトップクラブです。
完全ターンオーバーも可能な陣容になっていますが、それでも不可欠な選手は何人かいます。まずGKアリソン。横浜FM戦、アスレティック戦の直近2試合は欠場でしたが、レギュラーは確実でしょう。ちなみにGKを2人獲得していて、その1人のペクシは20歳。ハンガリーのプスカシュAFCから来ています。ハンガリーのレジェンドであるプスカシュの名を冠したアカデミーということで育成型のクラブとして注目されているようです。
キャプテンのファン・ダイクも別格。そして何と言ってもサラーですね。
サラーはやはり特別です。得点力だけでなく、右サイドから差し入れていくラストパスが絶品。左足キックのコントロールも素晴らしいですが、スペースを見つける眼が違います。アスレティック戦の13分にガクポへ通したラストパスは典型でした(下図)。

サラーのラストパスは非常に重要な攻め手になっていて、これを得点に変える確率を上げるのは必須課題でしょう。サラーと眼を合わせられるかどうかです。
ビルツは「見えているものが違う選手」
新加入のビルツは横浜FM戦ではまだ周囲と合っていないというか、互いに探り合っているような感じでしたが、アスレティック戦では随所に持ち味を発揮していました。
ビルツはちょっと感覚が違うといいますか、見えているものが違う選手です。
……
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
