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「大学に行くならばサッカーを辞める」決意からJ2で主力CBになるまで。石田侑資がいわきで紡ぐ成長

2025.06.28

いわきグローイングストーリー第9回

Jリーグの新興クラブ、いわきFCの成長が目覚ましい。矜持とする“魂の息吹くフットボール”が選手やクラブを成長させ、情熱的に地域をも巻き込んでいくホットな今を、若きライター柿崎優成が体当たりで伝える。

第9回は、昨季から田村雄三監督率いるいわきのサッカーに欠かせない存在に成長した石田侑資を取り上げる。指揮官に「育てて一流にしたい」と言わしめる才能はいかに開花したのか。

 早いものでリーグ戦は前半戦を終え、後半戦に突入している。

 ここ最近のいわきFCは、石渡ネルソンのU-20日本代表選出や直近の試合での複数得点など、明るい話題が多い。

 一方で、守備面はシーズン前にDFの枚数を揃えたものの、怪我人が相次ぎ安定感を欠いている。また、第3節・徳島ヴォルティス戦から18試合連続失点が続き、低迷の一因となっている。勝利後の取材でも、選手が「失点」について語ることが多く、課題が明確だ。この課題を克服し、勝利を重ねれば、下位脱出の道も見えてくるだろう。

指揮官は「育てて一流にしたい」

 個人に目を向けると、プレーの安定感と高い貢献度で際立つのが石田侑資だ。

 いわき在籍3年目の石田は、第20節・カターレ富山戦までに19試合に出場。3バックの左ストッパーとして、昨シーズンから田村サッカーに欠かせない存在となっている。攻撃参加と対人の強さが求められるポジションで、昨年は自身の特徴を最大限に発揮しブレイク。プレーが目に見えて進化し、成長著しい選手となった。

 3年前、いわきがJ2昇格と同時にガイナーレ鳥取から石田を獲得した。当時GMだった田村雄三監督は、「試合の振り返りやスカウティングで、鳥取の石田は目立つ存在だった。プロ2年目で成長の余地があり、能力が高い選手なので、育てて一流にしたい」と語っていた。

 3バックの中央と右ストッパーは相手や状況に応じて変わるが、左ストッパーは石田が不動の地位を築いている。1年目には見られなかった判断の速さや優れた状況判断で、相手を早い段階で抑える。対人の強さは今年になってさらに磨かれ、個で打開力のある選手やスピードのある相手にも引かずに対応。その巧みさは、選手間でしか分からない駆け引きで優位に立ち、奪える状況を周囲と連動して作り出す。広い守備範囲、相手の選択肢を狭めるポジショニング、素早いスプリントでチャンスを摘む能力も備わっている。

 「常に準備して対応できる状況を作ることが目標です。例えば、大西悠介や柴田壮介のようにボールに強くアタックできる選手が味方にいるとやりやすい。こぼれ球を拾うだけでなく、相手の選択肢を絞り、奪いやすい状況を作って次の展開に繋げています」

Photo: ©IWAKI FC

 逆足での展開力も石田の特徴だ。右足と遜色ない左足のキックは、徳島ヴォルティスジュニアユース時代に培われた。当時監督だった大島康明氏(現・FC岐阜監督)の「サッカーを楽しむためにうまくなる」という理念に感銘を受け、サッカーに打ち込む時間を増やした。練習開始1時間半前から大島氏と左足の練習を重ねたことが、プロでの成功の礎となった。

「サッカーは仕事だが好きなこと。楽しくないと嫌」

 昨年のブレイクには、渡邉匠ヘッドコーチの存在が大きい。

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Profile

柿崎 優成

1996年11月29日生まれ。サッカーの出会いは2005年ドイツW杯最終予選ホーム北朝鮮戦。試合終了間際に得点した大黒将志に目を奪われて当時大阪在住だったことからガンバ大阪のサポーターになる。2022年からサッカー専門新聞エル・ゴラッソいわきFCの番記者になって未来の名プレーヤーの成長を見届けている。

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