インテル・マイアミは「メッシの理想郷」。寿命が延びたスーパースターの晩節を考える

新・戦術リストランテ VOL.72
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第72回は、クラブW杯でグループステージ突破の“快挙”を成し遂げたインテル・マイアミ。アメリカでも相変わらず輝き続ける38歳、リオネル・メッシという稀代のスーパースターの晩節について思いを巡らせてみたい。
インテル・マイアミ=元バルセロナO-35
インテル・マイアミがクラブW杯グループステージを突破しました。バルメイラスに次ぐ2位通過です。けっこうな快挙ではないでしょうか。
インテル・マイアミにCONCACAFのタイトルはなく、クラブランキングの上位でもありません(CONCACAF21位)。開催国枠での出場です。それもMLSサポーターズ・シールド(レギュラーシーズンでの最多勝点)というかなり微妙な理由ですから、今回の32チーム中では最も実績のないクラブと言えるでしょう。
グループステージの3試合中2試合はホームのマイアミで優遇されていたとはいえ、FCポルトに勝ち、パルメイラスと引き分けたのは大健闘。パルメイラス戦は80分まで2-0でしたからね。期待以上の結果ではないでしょうか。
インテル・マイアミといえばメッシです。38歳になりました。2トップを組むルイス・スアレスは38歳、ブスケッツとジョルディ・アルバが36歳。Jリーグが開幕した頃、ベテラン選手がちらほらいたので欧州から「年金リーグ」なんて揶揄されましたけど、インテル・マイアミはそれどころではありません。
昔は、30歳になればサッカー選手は引退するのが普通でした。ただ、いつの時代にも例外はあります。
スタンレー・マシューズがバロンドールを受賞したのは41歳でした。これが第1回で、多分に功労賞的な受賞ではありましたが、当時まだ現役バリバリで引退したのは50歳です。
スター選手の引退年齢は軒並み高く、アルフレッド・ディ・ステファノは40歳までプレーしていましたし、フェレンツ・プスカシュも引退は39歳。フランツ・ベッケンバウアー38歳、ヨハン・クライフとディエゴ・マラドーナ37歳、ペレ36歳。
GKは長くプレーできるポジションで、ピーター・シルトンは47歳までプレーしていました。ジャンルイジ・ブッフォンも45歳まで現役。ディノ・ゾフはイタリア代表としてW杯優勝が40歳、引退は41歳でした。
現在は医療やトレーニング理論の進歩なども相まって、40歳近くまでプレーする選手は多くなっています。クリスティアーノ・ロナウドは40歳でいまだ現役、先ごろレアル・マドリー退団を発表したルカ・モドリッチは39歳でした。
限定されるプレーエリアと仕事。でも輝きはそのまま
37歳のリオネル・メッシは、もうかつてのメッシではありません。これは多くの大ベテラン選手も同じです。体力的なピークはとっくに過ぎているので、プレースタイルをどう変えていくかは重要なテーマになります。
たぶんメッシはプスカシュに似ているのではないかと思います。
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。