REGULAR

共有されていた「即興」の消失。クラブW杯で感じたブラジルサッカーの変化について

2025.06.18

新・戦術リストランテ VOL.71

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第71回は、セレソンに初の外国人監督となるアンチェロッティが就任したように、ブラジルサッカーの「欧州化」は近年ずっと続いている現象だが、あらためてクラブW杯で複数のブラジルチームを見た西部氏が感じたのは「もうこうなっちゃってるんだ」。その心とは?

 クラブW杯が開幕しました。

 この原稿を書いている時点ではまだグループF以下の試合が行われていないのですが、今回出場しているブラジル勢4チームのうち、フルミネンセ以外は初戦を消化しております。パルメイラス、フラメンゴ、ボタフォゴの3チームですね。

 結果はパルメイラス0-0ポルト、フラメンゴ2-0エスペランセ・チュニジア、ボタフォゴ2-1シアトル・サウンダース。

 まだそれぞれ1試合しかしていない状態ですから、どうこう言うのもどうかとは思うんです。ですが、率直な感想として「あんまりブラジルらしくないな」というのがどうしてもあります。

もはやFCポルトと全く見分けがつかない

 何がブラジルらしさなのか、というのは難しいのですが、少なくとも日本のファンが抱くブラジルのイメージではなくなっているとは思います。

 日本人が持っているブラジルサッカー像は、かなりブラジル代表に影響されています。1970年W杯で優勝したセレソンは強烈な印象を残しました。テレビでW杯を見られたのは70年大会が最初でしたし、この時のセレソンの強さと華麗さは世界的にも非常に高い評価を得ています。ペレ、トスタン、リベリーノ、ジャイルジーニョ、ジェルソン、カルロス・アルベルトと名手がずらりと並んだW杯史上でも屈指のスーパーチームです。

……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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