ブンデス初年度で11得点。日本代表FW町野修斗はいかにしてトンネルを抜けて成長を掴んだのか?

遣欧のフライベリューフリッヒ#14
「欧州へ行ってきます」。Jリーグの番記者としてキャリアをスタートさせ、日本代表を追いかけて世界を転戦してきた林遼平記者(※林陵平さんとは別人)はカタールW杯を経て一念発起。「百聞は一見にしかず」とドイツへの移住を志した。この連載ではそんな林記者の現地からの情報満載でお届けする。
今季のブンデスリーガでまばゆいばかりの成長を見せたのが、日本代表FW町野修斗だった。昇格チームにあって出場機会が激減した時期もあったが、そうしたネガティブな体験も成長の材料へと置換し、残した数字は11得点3アシスト。来季に向けて多くのオファーが舞い込むこととなった。そんな町野のシーズンを林記者が総括する。
11ゴール3アシストの“有言実行”
5月17日、2024-25シーズンのブンデスリーガが閉幕した。
新たにバンサン・コンパニ監督を招聘したバイエルンが2年ぶりのリーグ制覇を成し遂げ、フランクフルトが3年ぶりにチャンピオンズリーグ出場権を獲得。マインツが6位と躍進してカンファレンスリーグの出場権を手にすれば、ボーフムは5年ぶりの降格という憂き目にあった。
笑ったチームもいれば、泣いたチームもいる。喜怒哀楽に溢れた激動のシーズンが終わったのだ。
今季のブンデスリーガを語る上で、日本人選手たちの躍動も外せない。堂安律がキャリア初となる二桁得点を達成してフライブルクの5位フィニッシュに貢献すれば、移籍初年度となった佐野海舟はマインツの中軸として大きく評価を上げるパフォーマンスを披露。ボルシアMGの板倉滉は、最終ラインの要としてケガなく試合に出続けて確かな力を証明した。
オフシーズンに入り、ドイツメディアから出てくる日本人選手の移籍情報が増えていることからも、彼らが見せたパフォーマンスに価値があったことは明らかだ。
前述した3人に加え、日本人選手の評価を高めた存在がもう一人いる。ホルシュタイン・キールでプレーした町野修斗だ。昨季、当時2部リーグに在籍していたキールに加入し、初のブンデスリーガ昇格に貢献した男は、シーズンが始まる前に今季の目標をこう口にしていた。
「個人的には練習から得点を去年より重ねられている。周りからの信頼も徐々に掴めてきている感覚がある。チームも僕自身もまずはイージーミスをなくすこと。あとは継続して点を取り続けるというのはこだわってやっていきたい。今年は日本代表を目指したいですし、クラブでは7ゴール7アシスト以上を狙っていきたいです」
町野は最終的に11ゴール、3アシストを記録した。アシスト数こそ届かなかったが、ゴール関与数で言えば、目標に掲げた14点という数字を叩き出している。そう考えれば、まさに有言実行のシーズンだったと言えるだろう。
ただ、シーズンを振り返った時、順風満帆な1年だったと言い切ってしまうのは語弊がある。確かに目に見える数字としては立派なものを残したが、先の見えないトンネルに迷い込んでしまった時期もあった。決して平坦な道ではなかったからこそ、それを経て築き上げた数字に価値があるのだ。
順調な幕開け、迷い込んだトンネル
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Profile
林 遼平
1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。