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ロースコアよ、さらば!“ゴール量産トレンド”のネーションズリーグに感じた「フィジカル化の先」

2025.06.11

新・戦術リストランテ VOL.70

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第70回は、UEFAネーションズリーグ決勝スペインvsポルトガルを題材に、欧州代表チームの“ゴール量産トレンド”について考察してみたい。

 欧州ネーションズリーグ(NL)の準決勝、3位決定戦、決勝がありましたが、いずれも面白い試合でした。特に準決勝のスペインvsフランス(5-4でスペイン勝利)は近年稀に見る凄いゲームだったのですが、あまりにも面白すぎて整理がついていないので、今回は決勝(ポルトガルvsスペイン)の分析にします。

守備者の「視野」を操るビティーニャ

 ポルトガルがPK戦で優勝。前半はスペイン優勢、後半にポルトガルが盛り返す流れでしたが、やっぱりビティーニャでしたね。マンオブザマッチはヌーノ・メンデスで異論ないのですが、ポルトガルにはビティーニャが不可欠なんだなと再認識しました。

 シーズン終わりの大一番、CL決勝とNL決勝の両方勝ったのはビティーニャとヌーノ・メンデスの2人。いちおうゴンサロ・ラモスもそうですけど。個人的にはバロンドールはビティーニャで決定です。たぶん獲れないと思いますけど……。1964年にチャンピオンズカップと欧州選手権に優勝したルイス・スアレスも受賞できませんでしたからね。

 ビティーニャの貢献度は絶大だったと思います。

 フィールドを支配する能力は別格。ボールを握る力が素晴らしく、とても俊敏で運動量が抜群。準決勝ではビルツ、決勝ではペドリを主にマークしていて守備面での貢献も大きかった。味方からボールを預かるポジショニングが優れています。

 相手の背中を取るのが上手い。ボール方向へ動く相手の背後に入っておいて、そこから前後に動いてパスを受けます。相手の背中を取るのはスタンダードな受け方ですが、ビティーニャは運動量が凄いので回数が多いです。相手の視野外を利用する受け方については後述しますが、今回のNLがどの試合も点が入って活発だった大きな要因だったと思います。

 ビティーニャの場合、これとは別に独特の受け方もしています。

……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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