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杉本蓮と竹内崇人。その名を覚えておくべきSC相模原の大卒ルーキー2人が乗り越えた試練

2025.05.30

相模原の流儀#16

2023シーズンにクラブ創設者の望月重良氏から株式会社ディー・エヌ・エーが運営を引き継ぎ、元日本代表MFで人気解説者の戸田和幸を指揮官に迎えたSC相模原。新たに築き上げた“エナジーフットボール”の礎を2024年6月より引き継ぐシュタルフ悠紀監督の下でJ2復帰を目指す中、“緑の軍団”が貫く流儀に2021年から番記者を務める舞野隼大氏が迫っていく。

第16回では、加入半年が経とうとしている杉本蓮と竹内崇人の大卒ルーキー2人が乗り越えた試練を振り返る。

交互にプロデビューを果たした大卒ルーキーコンビ

 この先、2人の名前を耳にする機会はきっと多くなるだろう。緑と黒のシャツを身に纏い、初めてのプロの舞台で確かな足跡を刻み始めている大卒ルーキー──杉本蓮と竹内崇人のことだ。

 京都橘高校、関西福祉大学を経て相模原に加入した杉本は、一瞬のスピードとドリブルを武器に果敢に突破を図るサイドアタッカー。そして、サンフレッチェ広島ユース、筑波大学でプレーしてきた竹内は、気の効いたポジショニングを取りながら攻守両面でチームを支えるセントラルハーフだ。タイプの異なる2人の新人が、紆余曲折を経て頭角を現してきた。

竹内と杉本

 先にプロデビューを果たしたのは、杉本の方。2月15日に開催されたJ3開幕節の栃木シティ戦で、1-1の同スコアで迎えた81分にピッチに立った。戦況と彼のプレースタイルを考えれば、求められていることは明白。得点に、そして勝利に繋がるようなパフォーマンスをいきなり必要とされた。プレッシャーがかかる大事な場面。緊張してしまっても不思議ではない状況だった。交代ゾーンでスタンバイしていた時、どんな心境だったかを尋ねると、意外な答えが返ってきた。

 「緊張することはそんなになく、ワクワクした気持ちの方が強かったですね」

 ただ、相模原は84分に勝ち越しの1点を許して敗戦。杉本自身も短い出場時間で自らの色を出せず、ほろ苦いデビュー戦になった。「個人として(積極的に仕掛けて監督に)いい印象を与えたり、結果にこだわることでスタメンにたどり着くと思う」。自分に必要なことをそう客観視し、さらなる努力と成長を心に決めた。

 そして、杉本の後を追うようにして初めてJリーグのピッチに立ったのが、竹内だ。栃木シティ戦の翌週、栃木SC戦で[3-5-2]の中盤の一角として先発に抜擢された。アンカーの島川俊郎、アタッカータイプの福井和樹と併用されると、自身に求められる役割をしっかりと理解しながら遂行した。

 ボール非保持時は島川と並んでダブルボランチのような立ち位置で守備を固め、ボール保持時は福井が前に出て行きやすいように、またはパスを後ろから引き出しやすい位置に顔を出すようにバランスを取りながらプレーした。時にはクサビも打ち込み、とてもデビュー戦とは思えない落ち着きぶりを見せて1-0の今季初白星に貢献する働きを見せた。

 「昨日もいつも通り寝て、今日もいつも通り試合に入れました。ピッチに立つ時はやっぱり、込み上げてくるものがありましたけど、いい緊張感をもてたので、慌てることはなくプレーできたと思います」

 プロ選手としての一歩目を踏み出した直後、竹内は地に足をつけた様子でデビューの心境を振り返った。杉本と同じように頼もしささえ感じさせるメンタリティを備えていた。

 だが、「デビュー戦にしては悪くはなかったと思いますけど、もっとボールを運んだり、攻撃に関わったりできたと思います。ゴールやアシストに絡んでいきたい」とプロの舞台でより自分の特徴を発揮したいと、課題感を口にしながらも充実感を滲ませるような表情をしていた。

竹内(Photo: Hayata Maino)

失点関与も切り替えて初得点。竹内を支える「恩返し」への想い

 その翌節、竹内は勝敗に直結してしまうほどのミスを犯してしまった。

……

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Profile

舞野 隼大

1995年12月15日生まれ。愛知県名古屋市出身。大学卒業後に地元の名古屋でフリーライターとして活動。名古屋グランパスや名古屋オーシャンズを中心に取材活動をする。2021年からは神奈川県へ移り住み、サッカー専門誌『エル・ゴラッソ』で湘南ベルマーレやSC相模原を担当している。(株)ウニベルサーレ所属。

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